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クレマチス・オンライン~親製世界の旅路録~ 作者:グリティア

4章:新たな居場所とⅡ色俊走

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episode19

「だぁぁぁぁぁ!! 」

ラクはお腹から声を出しながら、回廊の出口を潜った。
薄暗かった回廊から、日の差し込む空間に入った。
湿気の多かった回廊内とは一変し、新鮮で、さわやかな空気が充満したその空間で、ラクは数歩歩いたのち、ハリュの座っている岩にもたれかかった。

「おつかれさまです。ラクさん」
「はぁ……はぁ……あ、ありがと」
「よかったら飲みますか?冷たくておいしいですよ」

ハリュは手に持っていた金属製のシンプルなカップをラクに差し出した。
クリュたちが使うことを前提に作られているような印象を持つやや小さめで、装飾等は一切されていない、持ち手だけが付いている銀色のカップだ。
ラクは「ありがとう」といってそのカップを両手で受け取った。
手にはひんやりとした感覚が伝わった。
中を覗きこむと、そこには透明で、きらきらと光を反射している液体が入っていた。
ラクはカップを口元まで運び、中に入っている液体をちょびっと流し込んだ。

特に匂いはしないが、わずかに甘みがあり、それでもさわやかな飲み物だった。
のどを通過していくと同時に液体の冷気が、火照った体を冷やしていく。

ラクはそのまま一気に飲み干すと、口から垂れた液体をぬぐい取った。

「なにこれ。すごくおいしい……水なのかな? 」
「そうですよ。その水はこの回廊内を流れる水で、熱くなった身体をすぅっと冷やしてくれるんですよ」
「へぇ。そうなんだ。――ところでクリュちゃんは? 」
「クリュですか?それならあそこに……」

そういってハリュが示した方向、回廊の出口をみると、そこには地面にぺたんと座り込んでいるクリュがいた。
両手で自分の腰回りの服を強く握り、うつむいているものの、髪の隙間からは頬を上から下に流れる水滴がかろうじで見えた。

ラクはハリュにカップを返し、ゆっくりと、静かにクリュに近づいて行った。
それから目の前でしゃがみこみ、優しい口調で話しかけた。

「お疲れ様。大丈夫? 」
「……」

返事はない。
けど涙をこらえているような声がかすかに聞こえる。

「どうしたの? 」
「……ねぇ。どう……して? 」
「え? 」
「どうして……あきらめない……の?どうして?どうして!? 」
「え、ちょ、クリュちゃん?どうしたの? 」
「なんでうまくいくの!?なんで勝てたの!?なんで!? 」

クリュはガッっとラクにもたれかかった。
不意打ちに近いので、ラクは対応することができずに後ろに倒れてしまい、クリュはラクのおなかの上に乗っている状態になった。
両手でラクの黒シャツの胸元を掴み、目線はラクへとまっすぐ向いていた。

「クリュ……ちゃん? 」
「どうして……どうして? 」
「――一度落ち着こっか」

そういうと、ラクはそっとクリュの頭を両手で包み、自身の胸元へと押し付けた。
それからクリュの背中をポンポンっと優しくたたき、落ち着かせようとした。

とりあえずクリュの言ったことについてハリュに聞くと首を動かすが、さっきまでいた場所にハリュはいない。
恐らくクリュと二人で話せるように、一時的にどこかへ移動したのだろう。
首を元に戻し、ラクはクリュが落ち着くまでそのままの体勢でいた。


〇――〇
あれから5分程度たっただろうか。
クリュはすっかり落ち着きをとり戻し、いまはラクと一緒にハリュが座っていた岩に座っていた。
クリュの目元は泣いていたせいで赤くなっている。
ごしごしと服の裾で濡れた頬をぬぐい、口を開いた。

「――ごめんなさい。ボクおかしかったよね……」

クリュの声は泣いていたせいで少し枯れている。
それからクリュは続けて言った。

「ボクね。ラクさんに聞きたいことがあったんだ」
「さっき言っていたよね。どうしてあきらめないかって」
「はは……覚えてたんだ。――どうしてあきらめなかったの?なんどやってもボクに勝てないって思わなかったの? 」

ラクはそっと目を閉じた。
それから自身の考えをまとめると、目を開け、ゆっくりと口を開いた。
今回はすこし重い話になりかけてしまいましたね。
ですが次回またいつものお気楽?な雰囲気に戻るのでご安心を。
さていよいよ4章も折り返し地点。
これからも応援よろしくお願いします!
それではまた次回!画面上部よりブックマーク,最新話下部より評価をお願いします!
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