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ただいま 検品中  作者: 黒田 容子
4/14

逆ギレも たまには許して

どんなに忙しくても、大事にしていることがある。

会話の最後で「ありがとうね」「よろしくね」ということ。

一日に100人を超える人間と話していると、いつしか、相手のために「ありがとうね」「よろしくね」と笑って別れる方が、自分のためにつながる事に気がついた。

もしかしたら、相手は、「なんで自分がありがとうって言われたんだろう。」分かってないかもしれない。

でもいいの。

言い切った自分の気持ちが引き締まるから、私は、いつも必ず言うようにしている。



夕方の出荷がようやく終わった頃、鳴った電話をとりあえず出たら、電話の相手が柏木だった。

げ。とりあえず出たのが運の尽き。

口に出せない心の悲鳴を何とか抑えつつ、「先ほどは、お構いも出来ませんで~」と勤めて軽く言う。

用件は分かってます。分かってますが、やりたくない…!!

案の定「忙しい中悪かったな」そっけない、分かりやすいぐらい心が籠もってない返事が返ってくる。はいはい、どうせ建前でしょ。


「今なら空いてる時間帯なのか?」

「空いていると言えば空いてますけど…。空ける気にならないと、空かない時間帯ですね」

どっちかって言うと、暇な確率が高いけど、確実ではないっていう意味。

「これから何が残っているんだ?」

電話の向こうで、あからさまに機嫌が悪いため息が聞こえた。

「いつ出す気だ。」さぁ?「あと2日だ。あと2日で、経過報告でいいから出せ。」

「はぁ。そうは言ってもねぇ」

アタシは、忙しいのだ。やりたくないという自分の気持ちを宥めることが先決で笑

っていうのは、2割冗談で、ぶっ飛ばされるかもしれないけど、ホントに勘弁してほしい。

「ふざけるな」

やっぱり明らかに、怒りはじめようとした声が聞こえて、しょうがなく此方も事情を話し始めた。

…といえば、聞こえが良い。

逆ギレに近い事情説明。もう、この際言っちゃうもんね。

「大体ね、その手の『報告書』を書いたことの無い人間を捕まえて、2~3日で出せって言う方が無茶なんじゃないかしら? それは、この前、申し上げましたよね?」

まぁ、確かに申し上げたんだが、その時確かに「赤線引きはこちらでやる」とも言われている。

でもね、そもそもね、アタシ自体が、この手の仕事をやったことが無いのだ。

その手の書類関係があったとしても、本社の物流部が適当に代筆して出してくれた。

そんな、今までなんだから、経費関係の改善報告書なんて、書いたことが無い。

やったことは、無いものは、無い。分からんものは、分からん。言い切って何が悪い。


「それに、目上目線で物を言いに来る前に、礼儀ってものがあるでしょう?

私は『分かんない』『やったことが無い』って相談と質問してるのよ?

 急かすなら、さっさと手伝いに来なさいよ。」

どっちが目上目線だというツッコミは、この際、無視の方向で。

これでも、語気に気をつけて、お上品に話をしているつもり!なのよ~


「お前、入社何年目だ? 一から十まで、なんで此方がやらなきゃいけないんだ」

何を言われようが、もはや開き直ったアタシ。反論される全てが頭にくる。

こっちが、下手にでて(どこがだ)正直に話しているってのに、なんともムカつく言い方だわ。

くどいようだけど、此方だって分からないものは分からないのだ。


「現場を回すのが、私の仕事です。その辺の社会人よりも得意なことはあるけれど、苦手なこともあるって事よ。」

心の片隅で謝った方がいい気もしたけど、ね。

ただでさえ、むかつくこの男。売り言葉に買い言葉が続いているので、謝る気もうせた。


早く電話切ってくれないかなぁ~

夜の外階段は、風が冷たくて寒い。暗くて、気持ちも滅入ってくる。

相手をするのも疲れてきた。

数回のやり取りのあとついに「じゃあね、呼ばれたから切るわよ。」切り上げさせてもらった。



あ。

会話の終わりに、「ありがとう」って言い忘れたわ。

ま、人間、間違うこともあるのよ。人間だもの

…ってダメかしら?

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