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とある貴族の人形遣い (仮)  作者: 涼坂 九羅
3章 焔とともに幕が開く
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32話 夢の中で…

 新章突入です♪

 日恵野の部下(この世界の警察)に案内された宿で、俺達は数時、静かに過ごしていた。

 疲れていたのもあるし、サヤカが医者に運ばれて行ったのと、アリサが常に赤城を警戒していて、なんとなく雰囲気が悪かったのが理由だ。


 現在部屋には、疲れの影響で睡魔さんのお迎えが来た俺と、縫いぐるみなのにイビキをかいて寝ていやがるポチ、何故か俺達と一緒の部屋に案内され部屋で静かに読書中の赤城、赤城が居るからか警戒態勢を崩さないアリサさん…


 全く、あの『日恵野』とかいう男は何をしているんだ。

 この部屋で待機していて下さい、って言うから待っているのに、一向に姿を見せない。

 アイツはふざけているのか? いい子は寝る時間を、とっくに過ぎてんだよ、育たなくなったらどうやって責任とる気だ!!


 俺の『眠い』という感情が通じたのか、アリサさんは俺に、


「寝ていても大丈夫ですよ

 マスターの安眠は私が守ります」


 と、言ってくれた…マジ、助かる。

 何故か、敵意は赤城に向いていたが…まぁ、いい、お言葉に甘えるとしよう…


 睡魔さんが迎えに来てんだ、俺は睡魔さんと一緒に夢の国に行くんだ…

 俺はゆっくりと眠りに落ちた。



 いきなりだが、どうして人は寝ているとき夢を見るのだろうか?

 まぁ、前世なら『ググれ』ば一発で解ったのだが…

 今は、昔観たアニメで、主人公が言っていたおぼろげな知識しか無い。

 

 非常に残念だ…異世界転生を果たしたにも関わらず、繊維関係の専門知識しか持ち合わせていない俺は、前世の知識でヤリタイ放題が出来ないのだ。

 唯一の専門知識も行き詰まったし…

 こんなことなら、何時転生してもいい様に知識を溜め込むんだったぜ…どうでもいい話だったな…


 さて、夢の話だ。


 人間の睡眠には二種類ある、『レム睡眠』と『ノンレム睡眠』だ。

 人は『レム睡眠』、つまり、身体は休息中なのに脳が活発に動いている時に、夢を見るらしい。


 夢とは『記憶の整理』だ…とか、言う人もいるが。

 アレは本当なのだろうか?


 だとしたら、今の俺の状況は夢では無さそうだ。


 何故なら、こんな状況初体験で、前世にも現世にも全く記憶のないことが起きているからだ。


 真夜中、沈没しかけた豪華な船の一室…

 肌に触れる海水は確かに冷たく、その水位は増すことも無いが引くことも無い。

 時折、船は揺れるが、沈むことは無い…永遠に沈没しかけた状態。


 そんな場所で、俺はその少女に出会った。

 まったく面識の無い、その少女に…



 夢にしてはリアリティーが凄いな…

 最初、俺は、漠然とそう思った。

 不思議を感じだしたのは、それから数分後のことだ。


 夢の世界にも関わらず、何故、こんなにも意識がハッキリしているのか?

 後、なんで、寝た筈なのに眠いんだ!?


 俺の意識は、夢にあるまじき程に、ハッキリしている。

 海水の冷たさも感じるし、水浸しの床に立つ疲労感も感じる…

 俺はゆっくりと歩き出した…なんか、呼ばれてる気がしたからだ…そこに行けば寝れるカモしれんし…


 水位は、俺の腰まで迫っており、転ければ最悪溺れてしまう。

 この世界に転生してから、泳ぎなど一度も経験が無いため、この身体が何処まで泳げるのかは知らん。

 息継ぎの仕方、忘れてないよな…俺?


 歩き出してはみたが、この広い船内を三歳児が歩くのはシンドイ。

 

 もう、眠い…寝ちまうか?


 海水の届かない所まで上がり、

 夢の中で寝る…と、いう、高等技術に挑戦してみた…

 何故だ、眠いのに寝れない…なんだ、この拷問は!?


 駄目だ、

 直にギブアップして、呆然と立ち尽くした。

 心身ともに疲れていた、

 改めて、夢の中で『疲れ』を感じる事実に…少し恐ろしくなった…


「お初にお目にかかります、月村様」


 この空間に居るのは俺だけでは無い様だ。

 よくよく考えるに、この空間はただの夢ではない。

 夢にしたらリアリティー凄いしな…


 魔法的、ファンタジー的な空間に閉じ込められているのかもしれない。

 精神世界とか、そんな名前付いてたりな…


 そして、この人物は、俺をこの空間に招いた張本人ではないか?

 だとしたら、俺の命は空前の灯火なんだが…なんか、危機感とか感じないんだよな…


 振り返るとソコには、水面に立つ青いドレスを身に纏った美しい少女が居た。

 アンニュイ雰囲気を感じさせる、独特な空気を身に纏った美少女だ。

 歳は、サヤカと一緒くらいか…こちらの方が発育が良いな…何、考えてんだ俺…


「お前は何者だ、なんで俺をこんな所に呼び出した」


 ビックリする程、スラスラと自分の口から単語が紡がれる。

 俺は今、この少女が、俺をココに招いた『犯人』だと確信していた…何故だろう?


 少女はニッコリ笑うと、口を開いた…


「私は、七大貴族、『水無瀬家』の者です、

 気軽に『水無瀬』…と、呼んで下さい。

 その内、現実世界でもお会いすることもあるでしょうから、下の名前はその時に…

 本日は、少々強引ですが、ご挨拶に伺いました」


 俺を呼び出したことに否定が無い、確信してはいたが、この『水無瀬』と名乗る少女が、俺をココに招いたのは間違いなさそうだ…

 なら、執る対応は1つだな。


「挨拶、ありがとう

 俺を元の世界に戻せ…さぁ、早く!!」


 こんな得体の知れない人間が作り出した空間に長居は無用だ。

 速攻、脱出しなければ何をされるか解らない…

 それに、何より眠い!!!


 水無瀬はニッコリ笑うと、俺をマジマジと見て来た、そして口を開く。


「おやおや、セッカチな人ですね…

 世間話の1つでも如何です?

 貴族の嗜みですよ?」


 俺は少し苛ついて来ていた…俺は、眠いのだ、ココに来ても相変わらず眠いのだ…この空間で過ごしていては寝たことになっていない…凄い、迷惑だ。


 それに、見た目5歳で、なにが『貴族の嗜み』…だ!!!

 普通の子供なら、大人しく玩具で遊んでろ!!!


 俺は返事に怒気を含ませる、なにぶん機嫌が悪いのでな…


「眠いんだ…さっさと出してくれ!!」


 水無瀬は、嫌みを感じさせない含み笑いをすると、不承不承とばかりに首を振った。

 あからさまに、残念そうな顔をする…


「私と仲良くするのは、好い事ですよ、『月村様』」


 ……今更だが、コイツ、なんで俺の名前が月村だと知っているのだ?

 頭が少しずつ、眠気から醒めて行く…今更だが、この空間はなんだ?

 水無瀬…七大貴族か…なんで、このタイミングで接触して来る?

 夜守の一件で、俺は身元を他人に明かしている…その前に、荒崎が知っているか…それで、俺の名前を知ったのか?


 解らん、謎だ…

 とはいえ、この状況を『夢』と断じることは不可能だ。

 何故だか知らんが、『夢』では無いのだからな…


 俺は水無瀬に訪ねた。


「解った、世間話ししてやる…

 ここはどういう空間だ?」


 水無瀬は、あからさまに嬉しそうな表情を作り、俺の問いに答えてくれた。


「精神世界…と、言えば分かり易いかな?

 正式名称は『夢幻廻廊』って言う、『水無瀬の家伝』だよ」


 水無瀬の家伝?…

 そういえば、自分の使える意外の魔法については全く知識が無いな。

 同じ『人形遣い』である筈の夜守も、俺の知らない『黒い魔糸』を使っていたし…

 その夜守を一撃で倒した日恵野も、何かしら魔法を使った様だった。


 そして、今更だが、他家にも『家伝魔法』があるのか…


 夢幻廻廊…

 この空間は、夢や幻か何かで構成されているのだろうか?


 こうやって他人を引き込めるなら、凄く便利な魔法だな…

 聞いてみるか…


「俺みたいに、他人を引き込めるなら凄く便利だな、この魔法」


 俺が言うと、水無瀬は困った様に眉を寄せた。


「普通、君みたいに招くのは無理かな…

 

 第一、今回、君を招けたのは奇跡みたいなもんだしね。

 通常なら、もっと手間の掛かることなんだよね、他人を招くのって…

 試しに、適当にやってみたら、出来ちゃった感じかな?」


 なんだよ…出来ちゃったって…

 俺の安眠を返せ!!

 

「つーか、なんで、俺をここに呼んだ!!

 それに、なんで、俺の名前を知っている?」


 少女は不敵に笑うと、唇に人差し指を当てた。


「…それは、内緒かな?

 ただ、敵ではないつもりだよ。

 今の所、君だけに肩入れするつもりも無いけどね…

 ただ、挨拶はしとかないとなぁ〜…って、思ってたんだよね


 いや、仲良くしてくれると嬉しいよ?

 お姉さん、最近、暇だしね

 仲良くしてくれたら、好感度UPだよ」


 なんだ、この、年不相応な感じは?

 見た目に反して、中身が合ってない感じ…

 コイツ、まさか…


 俺の顔を見て、水無瀬はニヤニヤと笑った。


「解った感じだね、多分、それで合ってるよ

 さて、長いし過ぎたね、話す時間短くてゴメンね


 最後に年上からのアドバイス…コレからは、君、大変だよ?

 まぁ、頑張ってね」


 水無瀬の身体は泡となって崩れて行き、完全に泡と消えた…なんだ、どうなっている?

 

ゴゴゴゴゴゴ…………


 なんだ?!

 この嫌な音は?

 この効果音の時は大体碌なことが起きない…


 徐々に水位が増して来る…

 沈没が始まった様だな…


 さて、現世ではどれくらい泳げるかな?



 俺は、暗い海の底に引き込まれた…



 目が覚めた、悪夢だ。

 気づけば、もう外は明るい。

 寝た気がしない…悪夢だよ本当に…


 アリサが俺の隣に座っていた。

 俺が起きたのを気付くと、少し困った様な顔を向けて来る。

 なんだ、その表情は?


 俺は少しずつ、自分の仕出かしたことに気がついて行った…


 ふぅ…少し落ち着こうか?

 普通の三歳児と比べてくれ、大丈夫、俺は三歳児としては変ではない。

 逆に、ハイハイが出来る様になって数日でマスターした俺が以上だったんだ…


 だけど…おねしょはマジで…悪夢だわ。


 代えの服…持って来てない…


 


 

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