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第1章 アイドルとの出会い
第二問 少女との出会い ④
「いった……」

うん、落ちるわけないよね。
これだけ太い幹の木なんだもの。
小学生の僕が体当たりしたところでびくともしないのは当然のことじゃないか。

「……明久君、せめて木を登るとかの考えは思い浮かばなかったの?」
「……あ」

そうか、その手があったか。
この木なら、登るのは割りと簡単そうだしな……どうして最初から考えなかったんだろう?

「……明久君ってさ、普段みんなから『バカ』とか言われてない?」
「え?亜美ってエスパーだったの!?」
「……やっぱり」

呆れたような表情を見せる亜美。
……あれ、セリフの選択を間違えた?

「と、とにかく、今度は登って取りに行くよ」
「……うん、けど、気を付けてね?」

心配そうな表情をして、僕にそう言ってくる亜美。
……ここは男として、キチンと言っておくべきところだろう。
ここで僕が言うべきセリフ、それは……。

「任せてよ、亜美!僕の想いを木にぶつけるように登ってみせるよ!」
「……え?」
「……あれ?」

何だろう。
僕は今、猛烈に言葉の選択を間違えた気がする。
気にしてると、何だか心が折れてしまいそうだ……だから、そんな考えを払拭するかのように、僕は素早い動きで木を登った。
程なくして、僕は鈴がある位置まで辿り着くことが出来た。
……僕にかかればこのくらい、大したことがない……ようにも見えるけど。

「明久君、気を付けてくださいね……」
「大丈夫だって。このくらいなら……よっと」

よしっ、何とか髪飾りを取り返すことは出来た。
後はこれを持って下まで降りれば……って、

「おわっ!?」
「!?」

あ、危ない……危うく落ちちゃうところだったよ。

「……ふんぬ!」
「だ、大丈夫……?」
「うん、この程度なら……よっと」

腕に力を込めて、懸垂をするように体を元の位置まで戻す。

「ふぅ……危なかった」
「よ、良かった……」

傍目では、ほぅっと溜め息をつく亜美の姿があった。
……流石に今回はヤバかった。
もう少し判断が遅かったら、落ちていたかもしれない……。
そのまま鈴を右手で持ち、スルスルと木を降りて、

「……はい、これ」
「……ありがとう」

そっと、亜美の手に髪飾りを置く。
すると、チリンと音を鳴らして、手のひらの上に置かれた。

「これで解決。良かったね……亜美」
「うん……けど、どうして?」
「え?」
「どうして……見ず知らずの私の悩みを、聞いてくれたの?」

亜美は、不思議そうな表情を浮かべて、僕の方を見る。
……ふむ、どうしてなのかは僕にもよく分からない。
けど、亜美が困ってる所を見たら、泣いている所を見たら……。

「何となく、助けたくなっただけだよ。亜美が困ってる所を見たらね」
「……たったそれだけの理由で、私のことを助けてくれたの?」
「うん、そうだけど」

すると、今度は意外そうな表情をされた。
……そんなに変だったかな、今の僕の返事は。

「なんというか……明久君らしいね」
「え?そうかな?」
「うん……どこまでもお人好しと言うか……」

最後の方に何を言っていたのかよく分からなかったが、僕は敢えて聞かないことにした。
なんとなく、聞かない方がいいと思ったからだ。

「……ねぇ明久君。一つ、約束をしようよ」
「約束?」
「うん……とっても大切な、約束」

顔を赤くして、亜美はそう言ってくる。
……今思えば、この約束こそが、今後の僕の生活を大変なものにしてしまったのかもしれない。

「大きくなって……もしももう一回会うことが出来たら……結婚しよう!」
「……うん、いいよ!」

亜美が笑顔で言ったものだから、僕も笑顔でそう答えた。
……そう、これこそが僕と亜美が交わした約束。
そして、今後の大騒動を、引き起こす引き金となった言葉。
この年になって思う……どうしてあの時の僕は、何も考えずにあんな言葉を言ってしまったのだろうか?













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