第1章 アイドルとの出会い
第二問 少女との出会い ③
そうして僕達は亜美が来た道を辿って行ったわけだけど……。
「……ないね、髪飾り」
「……うん」
至る所を探し回った。
塀の上、溝の中、草の中……けれど、それらの中から、髪飾りが出てくることはなかった。
「……家に置いてあるとかは?」
「それはない……家の中にいるときは、いつも髪飾りしてるもん」
「じゃあ、今だけは髪飾りを外していたってこと?」
「……今日は習い事があったから、鈴を鳴らさないようにって外してたんだ」
「習い事って?」
「ピアノだよ。大好きだったから、お母さんにお願いして、ピアノ教室に通わせてもらってるんだ」
成る程……確かに演奏中に鈴の髪飾りをつけていて、その鈴が鳴っちゃったら、ちょっと邪魔だよね。
ピアノの音に書き消されて他の人達には聞こえないかもしれないけど、何より自分の耳に届いてしまうのが一番の欠点とも言えるだろう。
「それでポケットの中に入れてたら、何処かに落としちゃって……」
「で、今に至ると……」
「……うん」
再び泣きそうな顔になる亜美。
困ったなぁ……見つけてあげたいけど、時間だけが過ぎていく。
特徴も分かってて、こうして亜美の家までの道のりを歩いてみても、見つからなかった。
「そうだ!そのピアノ教室まで行ってみれば……」
「それはさっき探したよ……結局見つからなかった」
「……」
もう他に手はないのだろうか。
このまま、亜美の大切な髪飾りが見つからないまま、終わってしまうのだろうか?
「……お母さんにもらった大切な髪飾りなのに。なのに、私は落としちゃったりして……」
「亜美……」
亜美の涙を止める方法は、僕にはなかった。
そして、僕達が途方に暮れていた時だった。
「うわっ!」
「キャッ!」
突然強い風が吹いた。
思わず僕と亜美は、目を閉じてしまったくらいだ。
そして、僕達は聞いた。
チリン。
「……今のは、鈴の音?」
「多分、そうだと思う……いや、そうだよ!」
はっきりと僕の耳にも聞こえた、鈴の音。
それは、周りの音なんか気にせずに、音を発していた。
まるで僕達を誘い込むように……自らの居場所を伝えるように。
「……けど、何処に」
肝心の場所が、分からない。
音だけでは、どうしようもなかったのだ。
せめて、もう一回鳴ってくれるとか、ないかな……そう思っていた時だった。
ピカッ。
今度は光が反射したようなものを感じた。
……慌てて辺りを見回す……あった!
「あの木の上だ、亜美!!」
「……あっ!」
そして僕達はようやっと見つけた。
鈴の髪飾りは……木の上に引っ掛かっていたのだ。
「けれど、どうしてあんなところに……」
「……カラスが、持って行っちゃってたのかな?」
「……カラス?」
亜美の口から発せられたのは、聞き慣れた単語でありながら、この場において意味を成すのかどうか判別出来ないものだった。
鈴の髪飾りとカラスに、どういう関連性が……まさか。
「そのカラスが、鈴の髪飾りを偉く気に入っていて、自分につけようとした……?」
「……それは違うよ、明久君」
あれ、若干僕のことを生暖かい目で見てない?
まさか亜美に限ってそんなことはないよね……。
「カラスって言うのは、光るものが好みなんだって。だから、そういうものを見ると、自分の巣に持って帰ってしまう傾向があるんだって」
「へぇ……詳しいんだね」
「お父さんが教えてくれたんだ。お父さんは何でも知ってるんだよ!」
笑顔で僕にそう言った亜美。
……本当に、楽しそうだな。
「けど、あんな上に引っ掛かってるんじゃ、取りにいけないよ……どうしよう」
そうして、僕達はもう一度木を見る。
……太い幹の木の上には、生い茂った葉がたくさんついているのが見える。
その木の上の方に……鈴の髪飾りがあった。
「僕に任せてよ……多分登れると思うから」
「え?……危ないよ?」
「大丈夫だよ、このくらいなら。それに、亜美の大切な髪飾りなんでしょ?」
「……うん」
……よし、少し痛いかもしれないけど、この方法でいこう。
僕は少し後ろに下がり、
「うらぁ!」
勢いよく木に体当たりした。
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