第1章 アイドルとの出会い
第二問 少女との出会い ②
数年前。
僕達がまだ小学生だった頃の話だ。
日曜日という休日。
僕は、一人で街に繰り出したのだった。
理由は特になかったけど、強いて言うなら、退屈だったからだ。
別に僕の両親が死んでいなかってしまったわけでもないし、姉弟がいないわけでもない。
この日は偶然、両親は親戚の家に出掛けてしまって、家を留守にしていた。
そして姉は、勉強中。
……たまにコッチに顔を出して捕まるのもなんか嫌だった。
だから僕は、書き置きをしておいて、コッソリと家を出たのであった。
「……ふぅ。これで危険は回避出来た」
捕まったら最後。
僕はひょっとしたら、生きて帰ってくることが出来ないかもしれない……無論、精神面で。
「やっぱり、見に行くとしたらゲームショップかな。いや、本屋に行って漫画を見るのもいいかもな」
と、街を歩きながら、今日の計画をたてていた。
その時だった。
「……グスン、グスン」
道端で、一人で泣いている女の子を見つけた。
周りに人はいない……お母さんとはぐれちゃったとかかな?
年は多分僕と同じくらいだと思う。
白いワンピースを着た、小さな女の子がそこにいた。
「……どうしたの?どうして、泣いているの?」
思わず僕は声をかけていた。
すると女の子は、涙を流した顔のままで、こっちを向いてきた。
そして、僕にこう言ったのだ。
「お母さんからもらった大切な髪飾り……何処かに落としちゃって」
成る程、状況は掴めた。
するとこの子は、お母さんからのプレゼントを大切に持っていたけど、ふとした瞬間に何処かに落としてしまったということか。
……言い直しているだけじゃないかって?
気にしないで欲しい。
「もしよければ……僕が一緒に探してあげるよ」
「……え?」
思わぬ言葉だったらしい。
女の子は、驚いたように目を見開き、そして不安そうな表情をして、
「……本当に、いいの?」
と、聞いてきた。
僕は、曇りのない顔をして(僕の後付け設定だが)答えた。
「いいっていいって。このくらいどうってことないさ」
僕がそう言うと、女の子の表情が和らぎ、ちょっとだけ笑顔になる。
……いつの間にか涙も止まっている様子であった。
「……ありがとう」
「どう致しまして。ところで君、名前は?」
いきなりそんなことを聞くのは少し失礼だと思ったけれど、僕はそう尋ねてみた。
すると、女の子は少し戸惑いながらも、
「……牧野亜美」
と、答えてくれた。
答えてくれたからには、僕の方も自分の名前を言わなければならない。
だから僕は、
「僕の名前は吉井明久。よろしくね」
そう言って、僕は右手を差し出す。
女の子―――亜美は、その手を躊躇いながらも握ってくれた。
これで僕達は、一緒に髪飾りを探すこととなったのだ。
「それで、どの辺りに落としたとかは分かるの?」
「……それが、何処に落としちゃったのか分からなくて」
う~ん、困ったなぁ。
何処で落としたのか分からないんじゃあ、探しようがないじゃないか。
「困ったな……とりあえず、どういう髪飾りなの?」
形を聞かないことには、探しようがない。
そんなわけで、僕はその髪飾りの形を尋ねたのだ。
亜美は答える。
「鈴の、髪飾り……」
さっきも言った通り、涙は流していない。
けれど、少しだけ笑顔だったのが、不安そうな顔になっていた。
「鈴の髪飾りか……よしっ。君の家は何処だい?」
「え?」
今度はキョトンとされた。
……まぁ、無理もないよね。
髪飾りとは関係のない質問のようにも聞こえるし……実際に関係はあまりないんだけど。
「……コッチの方だけど……そっか!来た道を戻れば、何処かに落ちてるかもしれないもんね!」
「へ?……あ、うん、その通りだよ」
今でも思う。
僕はとてつもなくバカな男だ……自分に言うのもなんだか嫌だけど。
「それじゃあ、行こっか?」
「……うん!」
そう答えた亜美の顔は、さっきと違って笑顔だった。
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