第1章 アイドルとの出会い
第一問 転入生はアイドル!? ⑤
「「「「「……え?」」」」」
今、この子は僕の名前を言ったのか?
いやいや、まさかそんなことはないだろう。
僕にこんな可愛いアイドルの知り合いはいないはず……。
それに、少し余計なことだけど、どうしてさっきから僕の背後から殺気が感じられるのだろうか?
「……落ち着くのじゃ、二人とも。今のはきっと聞き間違いじゃ。だからどこから持ってきたのか知らぬが、江戸時代の拷問用具を手際よく用意するでない」
後ろから秀吉の声が聞こえる。
というか二人とも、そんなことしてたの!?
え、何?
僕を殺す気!?
「……えっと、君が転入生の」
「『MARNO』……牧野亜美だよ……覚えてない?」
やっぱりこの子が、転入生としてAクラスに転入してきた子か。
……にしても、牧野亜美?
何処かで聞いたことあるような名前なんだけど……何処で聞いたんだろう?
思い出せそうで、思い出せない。
聞き覚えはあるのに……。
「お知り合い……ですか?」
「まさか。人違いでしょ。もし本当に知り合いだったら……殺すわ」
「何で!?」
僕の命というのは、そこまで理不尽な理由で失われてしまうほど儚い命だということなのか!?
ていうか、何故に僕はそんな理由で殺されなければならないの!?
「えっと……ごめん、思い出せないや、牧野さん」
「そっか……忘れちゃったんだね、あの約束も」
「約束?……!!」
ゾクッ!!
二人からだけじゃない。
周りにいる男子からも、謎の殺気を感じる。
や、ヤバい……このままではこの場にいる全員を敵に回しかねない!
唯一僕の味方になってくれそうな秀吉がいたとしても、この状況を収めることは出来ないだろう。
「話が長くなるようなら……屋上で話してみればどうじゃ?」
「ナイスアイデア秀吉!それでこそ僕の嫁!!」
「ワシの場合は婿じゃろ!!」
「ですから……どっちも違うと思います」
赤くなって抗議する秀吉と、ノリノリの状態である僕に、困り果てた表情を見せながら、姫路さんがそう告げた。
「ま、何だかややこしくなりそうだし、屋上行って、真相を確かめるのもいいんじゃないか?」
「それもそうだね……って、雄二。いつの間に帰って来たの?」
ふと横を見ると、何故か汗まみれの雄二の姿があった。
……何があったんだ、一体。
「翔子のやつ、弁当の中に何かよく分からない薬を混ぜてたんだ……目が覚めたら、目の前には顔を赤くした翔子がいて、『責任……とって』って言ってきたんだ。俺はあの後、Aクラスの教室で何をしたんだ!?」
「……いい具合に壊れてるね、雄二」
雄二が、何故か自分の両手をゆっくりと首に近づけている。
もしかして……自分で自分の首を締める気なのかな?
……うん、このままだと自分の世界にのめり込んだまま、人生を終えてしまいそうだね。
本当ならもう少し見たいところだけど、流石に牧野さんを待たせているところだし、そろそろ引き戻すか。
「目を覚ませ……雄二!」
「アガッ!」
斜め45度からのチョップ。
これをすれば、大抵の人は元の世界に帰ってくる。
最近雄二をコッチの世界に引き戻す際に発明したことだ。
「はっ!俺は何を……」
「自分の手で首を締めようとしていたところまでいってたわよ?」
「俺、知らない内にそんなことしてたのか?」
無自覚のため、そんなことを呟いている雄二。
いつか雄二は、発作にも似たこの症状を引き起こして死んでしまうのではないだろうか?
「…………早くしないと、昼休みが終わる」
「おっと!もうそこまで時間が迫ってたのか……早くしないと授業も始まっちゃうし、話をするためにも屋上に行こうよ」
僕のその提案に対して、反対する人はいなかった。
なので僕達は、少し急ぎ足の状態で、屋上へと向かった。
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