第2章 長期休暇のお出かけ
第九問 昼休み逃走記 ⑤
「ひ、ひどい目にあった……」
あの後鉄人からの鉄拳制裁を喰らった挙句に、放課後残って補習という過酷な一日を強いられた。
雄二は鉄人には見つからなかったため、その補習を免れた……くそっ、なんてやつだ。
その代わり、霧島さんに捕まって、放課後どこかに連れ去られて行ったけど。
「ああ……全身が痛い。早く家に帰って眠りたい……」
家に帰ったらそのまま眠ってしまおうかな……。
僕はそんなことを考えながら、教室の中へと入って行った。
「あ、明久君。帰ってきたんですね」
「え?姫路さんに……美波に亜美まで?三人共、Fクラスにまだ残ってたんだ……ってか、亜美はFクラスでずっと待っててくれてたんだ」
「うん。ちょっと明久君に用があってね」
「僕に?」
何だろう……僕に用事って。
「アキさ……今度の日曜日に、美少女コンテストをやることは知ってるでしょ?」
「美少女コンテスト?……うん、知ってるけど……」
屋上に僕が行った時に、チラシでみたっけ。
……なんだか凄くいやな予感がする。
逃げないと……今すぐこの場から脱出しないと……。
「そのコンテストだけどさ……どういうわけか、男子女装の部なんていう部門もあるのよねぇ~?」
「面白そうじゃないですか?明久君」
「……そうだね。ムッツリーニでも誘ってみたらどうかな?ほら、なんとなく似合いそうじゃないか」
うん、本当に似合うかどうかは置いといて。
ごめん、ムッツリーニ……君の犠牲は無駄にはしない。
僕だって、嫌なんだ。
不本意にこんな行事に引っ張り出されるのは、ごめんなんだ……。
「ああ、土屋君ならさっき、工藤さんに連れてかれてたよ。何でも……一緒に大会に参加してみないかって」
「……」
遅かった。
しかもよりによって工藤さんか……ムッツリーニ、南無。
「それじゃあ……雄二なんかを……」
「坂本は霧島さんと一緒にいるわよ。けど、霧島さんは坂本をコンテストに参加させる気はまったくないらしいけど」
「くっ……」
逃げ道が完璧に塞がれた。
駄目か……僕は自らに迫っている危機を回避する方法を持っていない。
「もちろん……参加しますよね?明久君♪」
とどめの姫路さんの笑顔交じりのこのセリフ。
もはや反論なんて出来るわけがない。
「……はい。分かりました」
結局僕は、素直に折れるしか方法がなかったのだった。
「けど、三人はどうするの?もちろん大会には参加するんでしょ?」
「「え!?」」
何故か姫路さんと美波が驚きの声をあげる。
……まぁ、二人ともこういう行事は興味なさそうだからなぁ。
「うん。私は参加するつもりだよ。それで……優勝したら、明久君と一日デートしてもらうんだ♪」
「あれ?そんな約束したっけ?」
「うん。今したよ」
「勝手すぎない!?」
随分と簡単に僕の休日の予定というのは消されていくんだな……。
「なっ!あ、亜美……抜け駆けなんて酷いわよ!」
「そうです!亜美ちゃん、それは卑怯です!」
「卑怯でも何でもないよ。だって私は……明久君に私の気持ちを理解してもらおうとしてるだけだもん」
「あ、アハハ……」
もうどう反応したらいいのか分からない。
僕には、亜美の真意というのがまったく分からない……。
「な、ならウチも参加するわよ!」
「私だって参加します!そして、優勝して明久君とデートするんです!」
「何故僕が賞品扱いに!?」
というか、僕にとってはあまりにも不利益なことしかないじゃないか。
そもそも……みんな勝手すぎない?
「そんなわけだから……アキ、覚悟しておきなさいよ?」
「明久君、私頑張るからね♪」
「わ、私も負けません……!」
「……どうしよう、僕」
もはや僕は、どうしたらいいのだろうか。
……とにかく僕は、その日が来るまで待つしかないのだった。
結局僕は、美少女コンテストの女装の部に参加する羽目にもなってしまった。
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