第2章 長期休暇のお出かけ
第九問 昼休み逃走記 ④
「テメェは……明久!」
「そういうお前は雄二だな!」
逃げている途中で、僕は廊下で合流した。
よりによってこんな時に……何てついてないんだ。
「…………逃がさない」
「逃げるな!」
「生きて捕らえられなくても構わない!とにかくアイツらをやれ!」
「観念しろ!そして吉井は死ね!!」
「ちょっと待って!なんで僕だけなのさ!」
クラスメイト達の理不尽過ぎる言葉が、僕の心を容赦なく突き刺す。
一方で、雄二はざまぁみろと言わんばかりの笑顔を見せていた。
……くそっ、さすがは僕の悪友だ。
他人の不幸は蜜の味というわけか。
「明久、ところで姫路に対するケアはいいのか?」
「姫路さんに?」
まさかとは思うけど、この中に姫路さんがいるわけ……、
「……明久君?どうして私から逃げるのですか?大人しく私のところに謝りに来てくれれば……せめて天国に行けるようにしてあげますよ?」
……いた。
しかもどこから出して来たのか分からないような、金属バットを手に握って。
「亜美様との甘い時間を潰す下衆な男は、この私が成敗してやる!!」
「ヒィイイ!ある意味見つかってはいけない人にまで見つかっちゃったよ!」
「……明久、あれはなんだ?」
綾瀬さんのことを見ながら、雄二が僕にそう尋ねてくる。
そりゃあ聞きたくもなるだろう……手に無数の辞書を抱えて、凄い形相を浮かべながら追いかけてくる女の子を見かけたら。
「また新しい奴を連れて来たな……どうやらお前にベタ惚れの様子だぜ?」
「いやいや……さすがに僕だって女の子は選ぶよ?贅沢言ってられないのは分かるけど」
少なくとも僕は、綾瀬さんには決して好かれたくはない。
亜美の大変そうな表情を見たら……なんか、ねぇ?
「うおっ!?なんか今、辞書が投げられて来たぞ!」
「……いよいよ本格的にヤバくなってきたよ」
どうやら敵は、本格的に動き出したようだ。
これは僕達も本気にならないと……やばいな。
このままだと殺される……主に僕が。
「雄二。ここは一つ、協力するって手はないかな?」
「ないな。こんなことになったのもお前の仕業だし、俺はお前を置いていってでも逃げ切ってやる」
「くっ!……この薄情者め!」
「何とでも言え!そもそも最初にこんな状況を作ったのはお前なんだからな!!」
僕の何がいけなかったって言うんだ!?
僕はただ、亜美達と休日に出かけただけだというのに―――!!
「雄二!お願いだ!!」
「嫌だ!全力でおこ……」
「……雄二、明久と浮気って、本当?」
「……全力で協力してやる!!」
凄く黒いオーラを纏った霧島さんを見た瞬間。
雄二の意見はすぐに変化した。
「そうこなくっちゃ!」
「けどどうする?このまま二手に分かれるか?」
「そうするしかないね……後はうまく人が別れるのを期待するしかないと思うよ」
残念だけど、僕達にいいアイデアはそう簡単には思い浮かばない。
雄二も、Fクラスのみんなだけならまだしも、霧島さんが相手側に加わった状態ではかなりやりづらい。
というより、下手に考えると、霧島さんに読まれて試合終了ということになりかねない。
「よし!明久は上を、俺は下に逃げる!!」
「分かった!」
階段に差し掛かったとき、僕は階段を駆け上がり、雄二は階段を下がって行った。
ほとんどの人達は、雄二を追って下へ。
残りの人達は、僕を追って上にやってくる。
……というか、見たことある人達ばかりなのは気のせいだろうか。
「明久君……?待ってください」
「待ちやがれ!!」
「ひぃ!もの凄く怖いよ!!」
捕まったら、即死亡確定というこの状況。
どう考えても、覆せる条件が見当たらない。
「どうすれば……どうすればいいんだ?」
考えていると、
ガラッ。
「……え?」
どこかの教室の扉が開く音がして。
「……吉井。覚悟は出来てるんだろうな?」
「え?……へ?」
僕の目の前には、何故か鉄人が立っていた。
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