第2章 長期休暇のお出かけ
第九問 昼休み逃走記 ②
「くっそぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」
僕は全力で廊下を駆け抜ける。
ムッツリーニ相手だから……それでも勝てるかどうかわからないけど、とにかく逃げるしかない。
買収すればなんとかなるかもしれないけど……何だか今のムッツリーニにはそれすらも効かないような気がしてならない。
「とにかく、どこかに逃げないと……!!」
都合のいい場所があった。
空き教室が目の前にある。
あそこでしばらく身を隠せば……。
「よしっ!」
僕は急いで扉の開いている空き教室の中に入る。
そしてすかさず、身を隠した。
「…………明久、必ず俺が、捕まえる」
「……ふぅ」
ムッツリーニは、どうやらそのまま何処かへ走り去って行ったようだ。
……これでまず第一の危機は回避した。
後はこのまま、昼休みまで逃げ切ることが出来れば……僕の勝ちだ。
それにしてもお腹空いたな……弁当は教室にあるけど、食べる前に出て来ちゃったからなぁ。
「……え?」
「ん?……あ」
突然誰かの声が聞こえてくる。
この教室は空き教室だったはずだけど……中に誰かいたのかな?
とりあえず僕は、声のした方を振り向いてみる。
「……明久、君」
「お前は……この前決闘で私を破った、吉井明久!」
「……え?あれ?」
ここは……教室だよね。
何で二人は……こんな空き教室で二人きりになってるんだ?
そして心なしか……制服が若干乱れているように見える。
……そこには、何でか教室の床で寝ている、亜美と綾瀬さんの姿があった。
「……あの、何というか、これは……お邪魔しました」
即刻立ち去った方がよいのだろう。
きっとこれは夢なんだ……うん、きっとそうだ。
だから、僕が今この教室で見たことは、すべて記憶から消し去ろう。
そして……また新しい明日が待っているはずなんだ、きっと。
「ちょっと!?逃げないで!お願いだから逃げないで私を助けて!」
「何を言ってるんですか亜美様♪私達の二人だけの時間だというのに……あんな男をここに留めておくつもりですか?」
「留めておくんじゃなくて、助けてもらうの!」
「助けなんて必要ないですよ。だって亜美様はこれから私と二人で……さぁ!桃源郷はすぐそばにありますよ!」
……何だか二人だけの世界に入り込んでいるようにも見えるけど、実際にトリップしてるのは綾瀬さんだけか。
つまり、亜美は一刻も早くこの状況をなんとかしたいと思っているわけだ。
「えっと……綾瀬さん。女の子同士で、その……それはまずいんじゃないかな?」
とりあえず僕はそう言ってみる。
すると、
「何言ってるのよ!女同士だからって悪いってことはないじゃない!Dクラスの清水さんだって、Aクラスの久保君だって同性愛者じゃない!」
「いや、そうかもしれないけど……」
久保君はともかく、清水さんは確かに綾瀬さんと同類だ。
けど……いくら清水さんでも、空き教室に美波を連れ込んで、こんなことをしているわけがないだろう。
いくらなんでも……これはやりすぎだと思う。
というか、先生に見つかった時の言い訳は考えているのだろうか。
「とりあえずどいてあげたら?その……亜美が凄く困った表情浮かべてるし」
「……何よ。私と亜美様の優雅なひと時を邪魔するつもり?」
人はこの光景を、不純同性交遊と呼び、絶対に優雅なひと時ではない。
背景にユリの花か何かが咲いていたら、もう完璧に危険な領域だろう。
「邪魔する愚か者には天罰を……」
「……え、まさかこの状況って……」
嫌な予感がビシバシする。
ただでさえ僕は今、Fクラスのみんなに追われている所なのだ。
それに加えて綾瀬さんまで追加されたら……もうとんでもないことになる気がしてならない。
「今すぐこの場で天罰を下す!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!やっぱりそういう展開になるんだねえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
手に数個の辞書を持ち、綾瀬さんが全力で僕のことを追いかけてきた。
やめて、辞書はそんな風に投げて使うものではないから!!
当たると本気で痛いから!!
「待てぇえええええええええええええええええええ!!」
「いやぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
……こうして僕は、さらに多くの人から追われることとなったのだった。
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