第2章 長期休暇のお出かけ
第八問 映画館は危険な予感? ④
「な……雄二、なんで」
自分の目を疑った。
まさか雄二がここにいるなんて考えもつかなかったからだ。
……と言うことは、さっきの僕の不安が現実に―――!!
「……おう明久。奇遇だなぁ。お前も同じ映画館にいたとはな」
「この期に及んで偶然を装うか貴様は!!」
「なんだよ。本当に偶然かもしれないだろ?」
「じゃあ聞くけど……今日雄二達は何を見に来たの?」
この質問の答えによっては、僕も意見を帰るかもしれない。
例えば戦隊物だったりとか、意外にもミステリー物という可能性もあるかもしれないな……。
「『愛の逃避行』って映画だな」
「思い切り僕らの後を着けてるじゃないか!!」
偶然なんかで、雄二達がそんな映画を見に来るわけがない。
つまり……僕は雄二に尾行されていたと言うことにもなる。
「……まさかとは思うけど、雄二、昨日も一昨日も僕の後を……?」
「さてな。それはどうだろうな」
不敵な笑みを浮かべる雄二。
……さては本当に、この三日間後を着けてきていたな。
雄二め……少しばかり痛い目を見せてやることにしよう。
「……ん?どうしたんだよ明久。急にポケットの中から携帯なんか取り出したりして」
「まぁ見てなよ雄二」
不思議そうな表情をする雄二。
……まだ気付いていない様子だ、今の内に……。
ピッ。
「送信完了っと……」
「誰かにメールでも送ってたのか?」
未だに理解していないらしい雄二は、僕にそう尋ねてくる。
今に痛い目を見ることになるのだ……別に言う必要もないだろう。
「それじゃあ雄二、また劇場内で会おうね……会えたら、だけど」
「は?どういうことだよ……」
僕は困惑する雄二を置いて、先にトイレを出ていく。
……すると男子トイレの入り口のすぐ側に、負のオーラを纏った一人の少女が立っていた。
心なしか、髪が逆撫でしているようにも見える。
「短い付き合いだったね……雄二」
手向けの花を添えるような感じで、僕は雄二に捨て台詞を残す。
ただ、僕が雄二に添えたのは花ではなくて、地獄行きのパスポートだった。
『何だったんだろうな明久の奴……って、翔子!なんでこんな所に居やがるんだよ?!』
『……雄二、木下とデートって、どういうこと?』
『は?なんのことだよ?俺達はただ明久を観察しに……』
『……しかも、この三日間、ずっと木下と二人きり……どういうことか、説明して』
『二人きりなんかじゃねえよ!ムッツリーニだって一緒に……さては明久!謀りやがったな!!』
『……雄二、遺言はある?』
『決して俺達は何もやましいことはなああああああああああ!!目が!目がああああああああああああ!』
……さらば、悪友。
「どうしたんですか明久君?何だか凄く嬉しそうでしたけど」
「ちょっとね……いいことをした後は気分がいいよ」
「……?」
理解出来ていないようで、姫路さんが首を傾げているのが見て分かる。
……とりあえず雄二に関してはあのくらいで許すことにしよう。
後はこの劇場の何処かにいるだろうと思われる、ムッツリーニと秀吉の二人だ。
秀吉は可愛いから許すとしても……ムッツリーニは許すわけにはいかない。
然るべき罰を受けてもらわないと……僕の気が済まない。
「あ、明久君?」
「うん?どうしたの姫路さん」
「その……言葉では説明しにくいのですが、明久君の顔が物凄く怖いものになっていましたよ。……?」
どうやら考えていることが顔にまで出ていたようだ。
少し抑えないと……。
「ところで姫路さん……もうそろそろ映画が始まる時間かな?」
「あ、はい。そろそろですね」
時計を見てみると、もうちょうどよい頃合いだった。
後数分もしない内に、映画が始まるような……。
「あ、始まりますね」
劇場内が暗くなり、スクリーンに映像が映し出される。
そして映画は、始まった。
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