第2章 長期休暇のお出かけ
第八問 映画館は危険な予感? ②
「いらっしゃいませ」
「『愛の逃避行』を二枚お願いします」
「学生ですか?」
「はい、そうですけど……」
「それでは、学生証はお持ちでしょうか?」
学生証?
持ってたかな……確かカバンの中に入れていたと思うけど……。
「あ、はい」
姫路さんは、ポケットの中から生徒手帳を取り出す。
僕も少し遅れて、生徒手帳を取り出し、
「これで、いいでしょうか?」
店員に見せる。
すると店員は、
「拝見いたしました……それでは、学生カップル割で、おひとり様八百円となります♪」
「「か、カップル!?」」
店員が満面の笑みでそんなことを言ってくるから、僕達は思わずそう叫んでしまった。
うわぁ……カップルか。
姫路さんとカップルになれたら嬉しいけど……。
「お二人はカップルではないのですか?」
「え、えっと……」
「そ、それは……」
思わず言葉に迷ってしまう僕達。
こういう場合はどうしたらいいのだろうか……カップルではないと素直に言うべきか?
『安くなるんだぞ?カップルだって嘘ついちまえよ』
ハッ!
貴様は僕の中に住む悪魔!!
最近また姿を隠していると思ったら……このタイミングで出てきたな!
『世の中やっぱり金だよ、金。人の気持ちなんて二の次だ』
で、でもやっぱり姫路さんの気持ちを考えないと……。
『それに、彼女、満更でもなさそうな顔してるぞ?』
「え?」
思わず僕は、姫路さんの顔を見る。
確かに……少なくとも不満そうな顔はしていない。
どころか、どこか嬉しそうにも見える。
店員の言葉がそこまで嬉しかったのかな……?
「あ、あの……」
「はい、なんでしょうか♪」
そんなことを考えている内に、姫路さんが店員に声をかけていた。
相変わらず店員は、笑顔のままだ。
「わ、私達は……その……カップル、なんです」
「やっぱりそうでしたか!それでは、お二人様で1600円になります♪」
「……はい?」
ひ、姫路さん?
君は一体……何をおっしゃっているのですか?
僕と姫路さんが……カップル?
こんな不釣り合いなカップルなんて、今まで生きてきた中で見たことないよ。
「ひ、姫路さん……それでいいの?店員の人に変な誤解されちゃうよ?」
店員の人に聞こえないよう、僕は姫路さんにこっそりと耳打ちする。
すると姫路さんが、
「だ、大丈夫です……むしろ、そっちの方が嬉しいくらいですから」
「へ?」
「では、こちらのお席になります」
僕達の会話を遮って、店員の人がチケットと共に、座席が書かれている紙を僕達に見せながら、恐らくは僕達が座るであろう席を指さす。
……ど真ん中の列の、本当にど真ん中。
絶好の場所だなぁ、本当に。
「あの……ここですか?」
「はい。Hの10,11番の席です。絶好のスポットなんですよ♪」
何でだろう……姫路さんがあんなことを言った後だと、確実に店員の対応が違う気がする。
何と言うか……全力でアシストしようと、そんな感じがひしひしと伝わってくる。
「あ、ありがとうございます……」
一応僕はお礼を言う。
姫路さんも若干遅れて、お辞儀をした。
すると店員が、
「きっといい雰囲気になれるわよ?……彼氏として、頑張りなさいよ?」
「ふぇ!?……は、はい」
な、何だか大変なことになりそうだな……。
僕は劇場へと続く道を姫路さんと一緒に歩きながら、そんなことを考えていた。
『のぅ、坂本』
『何だ?木下』
『何でさっき女性客ですよね?って尋ねられたのかのぅ』
『…………自然の摂理』
『それはどういう意味じゃムッツリーニ!?』
『そのまんまの意味だろうな……諦めろ、木下』
『ワシは男じゃ!これだけはどうしても譲れぬ!!』
『あー……行くぞ、二人とも』
『…………了解』
『待つのじゃ二人とも!ワシの話も聞いてはくれぬか!!』
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