第2章 長期休暇のお出かけ
第七問 アイドルになった理由 ⑤
「はぁ……疲れた」
「ご苦労様、明久君」
テレビ局での生中継を無事に終えて、僕達は外に出ていた。
亜美も僕も元の姿に戻り、こうして街の中を歩いている。
しかし……どうにも話しかけずらいんだよな。
まさかあんなことを知ることになるとは思っていなかったし。
「……ねぇ、明久君」
「何?亜美」
「……驚いた?」
「へ?」
いきなり亜美にそう尋ねられて、僕は思わず黙り込んでしまう。
驚いたって、何にだろう……まさか、亜美がアイドルを目指すようになったことの理由に、だろうか?
「その……私がアイドルになった理由を聞いて」
「……うん、正直驚いた」
まさか僕が絡んでいたことだったとは……。
それに……。
「亜美の親と……関係があったこととか、ね」
「私の両親が死んじゃったことは……これまで誰にも話してなかったから。親戚の人しか知らない話だったから……」
「でも……それを生放送の場で言っちゃってもよかったの?」
そんなに大事なことなら、あんな場で言いたくはなかったはず。
僕が同じ立場だったら……絶対に言わないだろう。
というか、言いたくない。
そんな事実を知ってもらったところで、得られるのは同情の眼差ししかないから。
「……もうそろそろ打ち明けるころだと思ったんだ。いつまでも現実から目を逸らさないで、ちゃんと見つめなおさないといけないなって……そう思ったから」
「亜美……」
「それに……こうして踏み切ることが出来たのは、明久君がいてくれたおかげなんだよ?」
「え?僕?」
思わぬ亜美からの言葉に、僕は目を丸くしてしまう。
どうして僕が、亜美にそのようなことを言わせるまでに至ったのだろうか?
「明久君がいてくれたら……明久君が勇気をくれたんだよ。いてくれるだけで、私にとっては凄く頼もしかった」
「……」
答えることが、出来ない。
いや、答えてはいけない。
僕は何となく、そんな感情に襲われていた。
「明久君が何か特別なことをしてくれたとか、そんなんじゃないの……ただいてくれるだけで、安心感がある。ただ隣にいてくれるだけで、私に勇気をくれる。明久君は、そういう人なんだよ」
「そう……なのかな?」
「気づいていないのは、いつも明久君だけだよ。周りの人からも好かれているのに、気づいていないのは明久君ただ一人」
「……それって、どういう」
「もっと周りのことも見てあげなよ。美波ちゃんとか、瑞希ちゃんとか……明久君のことを好きな人なんて、探せば他にもいっぱいいると思うよ」
……亜美の口から、結構予想外の言葉が出てくる。
僕のことが好きな人?
それって友達としてなら分かるけど……。
「……明久君がみんなの感情に気づくのは相当後のことになりそうだね」
「??」
何のことなのだろうか?
亜美の言っていることがさっぱり理解できないような気がするんだけど……。
「さてと。それじゃあ今から行動開始だね、明久君」
「……あ、そっか。まだどこにも出かけていないものね」
そういえばそうだった。
長かった一日を過ごした感覚に陥っていたけど、時間はまだ午後12時を回ったばかりだった。
「これからどこに行こうか?明久君」
「そうだねぇ……お昼でも食べに行こうよ。結局午前中で終わったからお弁当も出なかったわけだし」
「それがいいね♪なら、どこか雰囲気のいい喫茶店に入ろうよ!」
「うん、それがいいね!」
さて、今日は亜美と思いっきり遊ぶとしようかな。
こうして二人で出かけるのも、初めてのことだし。
何より、亜美とこうして二人で出かけるのも……何だか楽しいし。
「ほらほら、速くしないと追いてっちゃうよ~!」
「分かってるよ!今行くって!」
僕は亜美の言葉に応えるように、走って追いつく。
そして僕達は、短いながらの二人きりの一日を過ごしたのだった。
『……アイツら、何気にお似合いだよな』
『…………羨ましい』
『うむ……さすがは明久と言う所じゃろうか』
『……秀吉、もう平気なのか?』
『まだ肩に違和感があるが……何とか』
『……今日は無理しないで、帰れ。昨日Aクラスにいる姉さんにいろいろやられたばかりだろうに』
『……了解した。今日は帰らせてもらうぞ』
『…………また明日』
『うむ。また明日じゃ、坂本、ムッツリーニ』
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