第2章 長期休暇のお出かけ
第七問 アイドルになった理由 ③
『アイドルの友達のコーナー!!』
控え室から出た僕と亜美だったが、亜美の方が出番が早かった為に、亜美の方が先に出ていた。
僕は舞台裏で待っていたわけだけど……ついに僕の出番がやってきたようだ。
『今回のゲストの「MARNO」こと牧野亜美さんの自慢の友達を紹介するこのコーナーですが、貴女の自慢の友達はどなたでしょうか?』
『えっとですね……』
自慢の友達って……そんなこと言われると何だか照れるな。
けど、赤い顔をして登場したら、司会者の人に何言われるか分からないし……。
あ、制服が着崩れしていないかも確認しないと……。
『私の自慢の友達はですね……私が転入してきた文月学園の同級生なんです』
『同級生ですか?……それって男の子だったりします?』
『へ!?あ、はい、そうですけど……』
『まさか……彼氏とか?』
『そ、そんなんじゃないですよ!』
確かに僕と亜美は彼氏彼女の間柄なんかではない。
親友であることには間違いないと思うけど……さすがに付き合っているとは言えないだろう。
むしろ、亜美と付き合うことになってしまったら、何かいろんな人にボコボコにされそうな気がする。
主にFクラスのメンバーを中心に。
『けど、男の子なんですよね?』
『確かにそうですけど、私の幼馴染なんです!』
『もっと怪しいですね……』
何を言っているのだろう、この司会者は。
実はこの人、この手の話が凄く好きだったりするのだろう。
『それでは、本日のゲスト、MARNOちゃんのお友達は……MARNOちゃんからどうぞ!』
『は、はい!私の自慢の友達は……吉井明久君です!!』
亜美がそう言ったのと同時。
入り口辺りから凄い勢いで煙が噴き出してくる。
しばらくして、その煙は収まったので、僕は歩いてステージの前まで歩いてきた。
そして同時に、
「うわぁ……」
凄い光景だな、と僕は思った。
目の前にはたくさんの人。
カメラマンの人や、恐らくはADだと思われる人、さらにカンペ何かを持った人の姿も見えた。
こんな舞台に、いつも亜美は立っているのか……何だかちょっぴり感心しちゃうな。
「本日はよく来てくれましたね」
「あ、はい……僕も今日、亜美に初めて聞いたもので」
「あれ?私言ってなかったっけ?」
「聞いてなかったよ!」
少なくとも、テレビ出演の話しはこれまで一度も話題にすら上がってなかったよ!
「あらあら、MARNOちゃんも悪い子ですね……吉井君にちゃんと言わなきゃ駄目じゃないですか」
「えへへ……サプライズをしたかったので、何も言わずに来てもらっちゃいました♪」
可愛いけど……その笑顔が少し怖い。
「それではまずは、吉井明久君について簡単に語ってもらいましょう」
司会者のそんな言葉が聞こえる。
……え、僕のことについて?
「明久君は昔、私が髪飾りを落としちゃった時に出会ったんです」
「ほぅ……それで?」
「道端で泣いていた私に、『どうして泣いてるの?』って聞いてくれて……私嬉しかったんです。そうやって聞いてくれる人が、私の周りにはいなかっただけに」
「……え?」
何か引っかかるような物言いだけど、それはどういうことだろうか?
そんな僕の疑問をよそに、亜美の話は続く。
「……明久君と私の出会いは、アイドルになるという私の夢の基礎を作ってくれた出来事でもありました」
「それはどうしてですか?」
「それは……小さい時、その一回切りしか私は明久君と会っていなかったんです」
「何と!」
確かにそれはその通りだ。
僕と亜美は、小さい時に……小学生の時に一回だけ会ったきりだった。
それ以降、僕と亜美は出会う機会がなかった。
何でかは分からないけど……。
「私、実は一回おばあちゃんの家に引き取ってもらったんです……両親が、交通事故で死んでしまって」
「……え?」
両親が、交通事故で死んだ?
……知らなかった。
亜美にそんな過去があったなんて。
「誕生日プレゼントの鈴の髪飾りは……お母さんの形見になってしまいました。お母さんとお父さんが死んでしまったのは、私が明久君に鈴の髪飾りをみつけてもらってから、数日後の話だったんです……」
「そうだったんだ……つらかった?」
司会者は、心配そうな声でそう尋ねる。
亜美は、何も話さずただ首を縦に頷かせただけだった。
「けど、今は寂しくありません。私の心の支えとなってくれる、明久君がいますから……だから、私にとっての自慢の友達は、明久君なんです!」
「友達という輪を超えそうな勢いのお二人ですね」
「そ、それってどういうことでしょう?」
言葉の意味が分からなかった僕は、司会者に思わずそう尋ねる。
だけど、司会者の人は笑顔を見せてきただけだった。
「それで、アイドルになった理由が吉井君とのことだったのですが……それはどういうことなんでしょうか?」
「アイドルとしてテレビに出ていれば……いつかもう一度、明久君と再会出来るのではないか。そう思ったのが最初のきっかけです。それに……お母さんとお父さんと、約束したから……その約束を果たす為に、私はアイドルになったんです」
そう言った時の亜美の表情は、寂しそうだったけど、しかし笑顔だった。
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