第2章 長期休暇のお出かけ
第七話 アイドルになった理由 ②
「あ、亜美……どうして僕の名前が?」
「さぁ中に入ろう!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!まだ事情が……」
よく分からないうちに、僕は亜美に引きずられるように控え室の中に入る。
そして、抵抗するまもなく、僕は中に入ることとなってしまった。
「……うわぁ」
控え室の中って、こんな感じになってるんだ。
テーブルの上に食事が置かれていたり、衣装が入っていると思われる衣装ケースとかが並んでいる。
片側の壁には鏡が埋め込まれていて、恐らくここで化粧等をチェックするのだろう。
「どうかな?初めて控え室に入った感想は」
「うん……結構広いよね」
本当に、広い。
何せ二人入ったとしてもまだ広々と使える空間なのだ。
いつも芸能人はこんな控え室に入っていると思うと……ちょっと羨ましい。
「それじゃあちゃっちゃと衣装に着替えちゃおうかな。あ、明久君のもあるよ?」
「僕の衣装も?というか何に出る予定なのさ?」
「んっとね……『アイドルの間』っていう番組だよ。明久君はその中の企画で、『アイドルのお友達を紹介』ってコーナーに出てもらう予定になってるよ」
「いつの間にテレビに出演することになっていたなんて……一体いつ話をつけてきたの?」
「ちょっと前だよ。スタッフの人に聞いてみたら、あっさりOK貰ったよ?」
本当にこのテレビ局は……。
僕と亜美が登場したら、スキャンダルだなんて騒がれるのではないだろうか?
「大丈夫だと思うよ。友達紹介のコーナーに出るわけだし」
「それはそうだけど……」
「それに、衣装はこれだしね?」
「……はい?」
亜美が笑顔で僕に見せてきた物。
それは間違いなく僕の学校の制服だ……ただし女子の物だけど。
「それは……亜美が着るんだよね?」
「もちろんだよ。これは私の制服だしね……もし着たければ、明久君が着てもいいよ?」
「いや、その言葉はおかしいよね!?」
まったくもって、僕には女装趣味はない。
だから、制服を持ち出されたとしても着るわけではない。
「そっか……私の制服じゃ物足りないってことなの?」
「そうじゃないよ!僕に女装趣味はないってことだよ!」
天然なのか?
亜美のこの反応は天然なのだろうか?
「冗談だよ、明久君。明久君にそんな趣味はないってことは知ってるから」
「な、何だ……なら良かった……」
た、助かった……。
あの制服を着て全国区に流れた日には、明日からみんなに会わせる顔がない。
それだけはなんとしても全力で避けなければならないと思ってただけに、これは嬉しい報告だ。
「それじゃあ明久君はこれに着替えて?」
「これって……うちの学校の男子用の制服?」
亜美がカバンの中から取り出したのは、間違いなくうちの学校の男子用の制服だ。
けど、何で亜美がそんなものを持っているのだろうか?
「学園長にこのことを言ったら、喜んで貸してくれたよ?後、今日は先生も一緒に来るんだって」
「先生?それって誰先生か知ってる?」
「確か……田中先生だったと思うよ?」
よかった……ここに鉄人が来てたら、理不尽な理由で僕がどこかに連れてかれる所だったよ。
危ない危ない……って、
「何で田中先生まで?」
「学園長の意向で、私がテレビに出る代わりに、この学園のことをアピールしとけって言われて……」
「なる程……テレビの前で模擬戦闘をするわけか」
田中先生ということは、科目は確か……世界史か。
恥じずに済む点数だから、まぁよしとしよう。
「それじゃあそろそろ始まるから。この番組は生放送だから、油断は出来ないよ明久君!」
「ええ!?ちょっとそんなこと聞いてないよ!?」
驚きの連続だよ、亜美……。
果たして僕は、今日一日を乗り越えることが出来るのだろうか?
そんな思いを胸に秘めながら、僕は制服に着替え、亜美と一緒に控え室を出たのだった。
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