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第2章 長期休暇のお出かけ
第六問 二人きりのお出かけ ⑤
あの後僕達は、洋服屋に行き美波の服を買って、しばらくいろんな場所を見て周り、そうしている内に夜になった。
月の光が、まるで僕と美波のことを包み込んでいるかのような錯覚に陥る。
僕と美波は、やはりしばらくの間無言の状態が続いてしまっていた。
これでこんな状況になるのは何度目だろうか?
今日は美波に迷惑をかけっぱなしだったような気がする。
優子さんに言われた、『ちゃんとエスコートしなさいよ』という言葉は、ほとんど守られていないようにも思えた。

「あの……美波。今日はゴメンね」
「いきなりどうしたのよアキ?突然謝ったりして……」
「その……今日の僕、美波に迷惑かけてばかりだったよね」
「……」

黙りこんでしまう美波。
……この様子だと、美波は怒っているのだろうか?
だとしたら……僕は一体、どうすればいいのだろうか?
謝るにしろ、どうやって謝ったらいいのだろうか?

「……アキ、別にウチは、迷惑かけられたなんて思ってないわよ」
「……え?」
「むしろ……楽しかったくらいよ。こうしてアキと二人きりで……その……買い物出来て、アキに、助けてもらって……」
「あ……その……」

自然と顔が赤くなる。
これも今日何回目だろうか?
美波のこの表情も、僕の顔が赤くなるのも、なんだか繰り返しているような気がしてならないのだ。

「……ねぇ、アキ」
「な、何?美波……」

ヤバい。
今の美波はとてつもなく可愛い。
肝試し大会の時の美波と同じ位に、可愛い……。

「……その、今日は、本当にありがとうね」
「あ、こちらこそ。その……凄く楽しかったよ」
「そ、そう?ならいいんだけど……」

そしてしばらくの間、無言の状態が続く。

「今日は本当にいろんなことがあったよね」
「……そうね。あの後木下はどうなったのかしら」
「……ああ、そういえば秀吉が」

忘れていた。
秀吉はあの時、喫茶店のトイレに、お姉さんに連れてかれて……帰って来たのは、手にトマトケチャップがついたお姉さんの方だけだったんだよね。
あれは正直言って……危険な香りしかしない。

「今度木下に聞いてみましょ。一体何があったのかを」
「……聞ける状態ならね」

もしかしたら秀吉は、この日のことだけ記憶から抹消されているかもしれない。
自己防衛の為に……思い出したくない過去は、心の奥底に大事にしまってしまうのだろう。

「それじゃあ美波。そろそろ僕達もこれで……」

僕が美波にそう言いかけた。
その時だった。


シュッ←何かが投げられる音

シャッ←その何かが僕の頬を通り過ぎる音

ザクッ←その何かが地面に突き刺さる音

「「……え?」」

まさかと思って恐る恐る地面を見てみる。
……それは元はシャープペンシルだったと思われるものだった。
こんなのを投げてくる人は、僕は一人しか知らない。

「そこのブタ野郎!お姉様と一緒にデートをするなんて……何て無礼な真似を!」

ロール巻きにした髪の毛が揺れる。
彼女こそ、女性なのに美波のことを愛してやまない人物……清水美春さんだった。

「み、美春!どうしてここに?」
「さっき洋服屋で服を選んでいたら、ちょうどお姉様の姿を見かけたので、慌てて尾行を続けていたというわけです!」

清水さん。
ストーカーは立派な犯罪だよ。

「そんなわけで……お姉様をあんなにも危険な目に遭わせたブタ野郎を、私の手で引導を渡してあげます!」
「ちょっと待って!それは僕の責任じゃ……うわっ!いきなりコンパスを投げないでよ!」

手当たり次第に文房具を僕に向かって投げてくる清水さん。
ヤバい……このままだと僕の命は潰えてしまう。

「待ちなさいブタ野郎!!」
「こんな状況で待てるわけないじゃないか!」

結局、清水さんからの攻撃は、夜通しで続く羽目になったのだった。
やれやれ……今日のオチがこんな形になるとは思わなかったよ……。













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