第2章 長期休暇のお出かけ
第六問 二人きりのお出かけ ③
中に入って、僕達は店員に案内されるように窓際の席に座る。
確かその向かい側の席って……。
「木下達がいたテーブルね……まだ本人達は帰って来てないみたいね」
「そうだね……本当にどうしたんだろうね?秀吉」
少し秀吉の心配をしつつ、僕はメニューの方を見る。
うわっ……どれもやっぱり値段張るなぁ。
やっぱりここは、無難に安いメニューを頼んで我慢するしかないか……三日間お金を使うことになるわけだし、少し節約しないとね。
「じゃあここはアキのおごりで」
「……うん、分かってるよ」
これは一応罰ゲーム的要素も組み込まれているのだ。
むしろおごりで済んでるだけありがたい……。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」
「季節フルーツ盛り合わせパフェを一つと……」
値段、1500円。
……高い、一気に英世が一人と500円玉一枚消える。
それに僕のコーヒーを合わせると……合計で英世が約二人消えることになる。
多少小銭として帰ってくるも、これじゃあ虚しすぎる。
「み、美波……他のにしない?さすがに僕の財政が……」
「何でも言うこと聞いてくれるとて約束だったじゃない?」
「……それと、コーヒーを下さい」
この瞬間、僕の英世が二人消えることが決定事項となったのだった。
「畏まりました。しばらくお待ち下さい」
店員は僕らにそう告げると、注文を書いた紙を持って、奥に引っ込んでいく。
……さらば、僕の英世。
「あ、帰って来たわね」
「え?……でも、優子さんの方だけみたいだけど……」
僕達が店員とやり取りをしている合間に、優子さんがトイレから帰って来た。
どうやらこっちには気付いていない様子だ……それに秀吉が帰って来ていない。
「木下の奴、どうしたのかしら……?」
「さぁ……けど優子さんの表情、何処か清々してるよね……手にはトマトケチャップが……」
……まさか、優子さんの手についているトマトケチャップって……。
……いやいやまさか、あの時も関節技で留まっていたじゃないか。
それじゃあ、関節技を決められた時に吐いた秀吉の血とか……?
「あら、Fクラスの二人じゃない?」
なにくわぬ顔で、僕達に話しかけてくる優子さん。
……手についているトマトケチャップさえなければ、微笑ましい光景になるかもしれないのに……。
「木下の……お姉さんの方よね?」
「そうよ。木下優子。いつも秀吉が迷惑かけてごめんなさいね」
「いいんだよ、優子さん。秀吉は僕達Fクラスの男子にとって癒しの存在なんだから足の骨が悲鳴をあげている!!」
僕の足が、美波の両足によってとんでもない方向に捻られている。
……やってしまった。
発言には気を付けようと、あれほど気を使ったつもりだったのに……心なしか優子さんのオーラも凄い。
「ウフフフフ……後でお仕置き追加ね」
さらば、僕らの癒しの存在秀吉。
君のことは、死ぬまで忘れないよ。
「ところで二人はどうしてここにいるのかしら?もしかしてデートとか?」
「なっ……そんなんじゃないわよ!!」
「……なるほとね。しっかりエスコートしてあげなさいよ、明久君」
「へ?……あ、うん」
優子さんの言っていることの意味が少し分からないけど、とりあえず美波に迷惑かけないようには頑張ろう。
「お待たせしました。コーヒーと季節フルーツ盛り合わせパフェです」
その時、ちょうど店員がトレイにコーヒーとパフェを乗せてやってきた。
……うわ、デカイ。
「……それじゃあ私はこれで退散するわね。邪魔をするのも悪いし」
「あ、うん。また今度学校で会おうね」
「ええ、会えたらね」
そう言うと優子さんは、自分の席に戻って荷物をまとめた後、潔く店から出ていった。
……秀吉を置いて。
「それにしても美波……このパフェデカイよね。食べきれるの?」
「……ちょっと無理そうね。流石にウチも、ここまで大きいとは考えていなかったわ」
食べながら、美波が言う。
そりゃそうだろう。
誰が自分の身長の三分の一はありそうなくらいの大きさのパフェがやってくるなんて想像をすることが出来ると言うのだろうか?
「それじゃあアキ……味見、してみる?」
「へ?いいの?」
スプーンの上にパフェを掬ってのせて、僕の方に寄せてくる美波。
なんて優しいんだ……さっきは足を捻られたけど。
僕はそのパフェを、若干戸惑いながらもそのまま食べる。
……そして気付いた。
「……美波、これってもしかして、間接キスじゃあ……」
「!?……は、恥ずかしいこと言わないでよ……」
「う……ごめん」
自然と顔が赤くなる僕達。
何だか気まずくなってしまい、美波がパフェを食べ終えるまで、僕達は何も話すことが出来なかった。
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