第1章 アイドルとの出会い
第五問 その男、かなり危険 ⑤
「あ、アキ……まさか、本当にやるなんて思ってなかったわ」
「本当です……明久君のこと、信じてたのに……」
……あれ、何で美波と姫路さんの二人は悲しい顔をしてるのだろう?
雄二は一瞬こっちの方を見てにやけていたけど、すぐに霧島さんに捕獲された。
一方でムッツリーニと秀吉の二人は……こっちの方を見て面白そうににやけていた。
このやり取りのどこが面白いのだろうか……。
「仲がいいのう、お主達は」
「秀吉、それはきっと違うと思うよ」
何故この状況を見てそんな発言が出来るのだろうか。
可愛い顔して、秀吉って実は天然が入っているのではないだろうか?
それはそれで……いい。
「アキ?起きなさいアキ!」
「あががががが!背骨の関節に激しい痛みがあああああああ!!」
いつの間にか美波に体をロックされていた。
って、痛いってば美波!
人間の背骨はそんな風に曲がるようには出来てないから!!
「だ、大丈夫?明久君?」
やられている僕の顔を見て、亜美は心配そうな表情と共にそう尋ねてくる。
……亜美だけだよ、そうやって心配してくれるのは。
「う、うん。何とか大丈夫だよ……これ、日常茶飯事だから」
「明久君……この何年間の間に一体どんな生活をしてきたの?」
とても短時間で説明しきれないような生活をしてきたんだよ。
もちろん亜美にそう言っても意味がないことは分かっている。
そして何より、まだ僕は美波の攻撃からは解放されていないのもある。
「痛いってば美波!これ以上曲げられると、僕の背中があり得ない方向に曲がってるぅうううううううううううううううう!!」
僕の寿命は、今日という日だけで三日は縮まったと思う。
……うん、絶対そうだ。
「……まぁ、そろそろ許してあげてもいいかもね」
そう美波が呟くのと同時に、僕はようやっと解放された。
……うう、背中がまだ痛い。
「本当に大丈夫?明久君」
「う、うん……背中に亀裂が入った気がするけど、何とかまだ生きてるから」
ひどい時には生死をさまようことだってある。
だから今回に限って言えば、比較的ましな方とも言えるだろう。
「た、大変なんだね……明久君」
「……まぁね。けど、もう慣れたから」
「慣れる前に、明久君が気をつければいいことだと思うけど……」
元凶が何を言う。
まさか亜美にそんなことを言えるわけもなく、僕は心の中にその言葉をそっとしまっておいた。
「何だかいつも以上に騒がしい昼食だな……って翔子。その玉子焼きを無理やり俺の口の中に放り込もうとするな」
「……ア~ン」
「いや、そうやって箸を使って俺の口の中に入れようとしても駄目だ……だから翔子、早くその玉子焼きを弁当箱に戻し……ぎゃあああああああああああああ!目が、目がああああああああああああ!!」
あ、雄二が霧島さんに眼つぶしされた。
かなり痛いようで、床をごろごろと転がっている。
……霧島さん、さすがに箸で眼つぶしは痛いと思うよ。
「…………いつもより、騒がしい」
「そうじゃのう……けれど、何だかワシらが取り残されてる気がするのじゃが……」
「き、気のせいだよ秀吉。秀吉はそこにいるだけで、僕の心を癒す存在に……」
「「「……アキ(明久君)???」」」
「……何でもないよ、秀吉」
三人分の殺気が、僕に突き刺さる。
……よかった、ここで発言を止めといて。
もしそのまま最後まで言ってしまってたら、僕の命は間違いなくなかっただろうな。
「……そろそろ昼休みも終わる。教室に戻るぞ」
「え?もうそんな時間なんですか?」
どうやら昼休みも終わる時間らしい。
僕としてはもう少し亜美達と話をしたかったけど、時間が来てしまったのでは仕方がない。
「明久君」
「何?亜美」
弁当箱を片づけ、僕達が屋上から立ち去ろうとした時、亜美に呼ばれる。
「ん、何?」
「休日は……楽しみにしてるから!」
「う、ウチも楽しみにしてるからね!」
「わ、私もです!」
「う、うん……」
僕の食費は大丈夫だろうか。
そんな心配をさせられた、一日だった。
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