第1章 アイドルとの出会い
第五問 その男、かなり危険 ③
……さて、朝のあんな騒ぎがあって、そして午前中の授業も終わり、今は昼休みだ。
さて、今日はちゃんと弁当も持ってきたし、今日はその弁当を食べることにしよう。
「あ、明久君も今日はお弁当なのですか?」
「え?うん、そうだけど」
僕がちゃぶ台の上に弁当箱を出すと、姫路さんが横から覗いてきた。
いつの間にか美波や雄二達の姿も見受けられた。
「どうせなら教室で食べるより屋上で食べた方がいいんじゃない?その方がみんなで一緒に食べられるし」
「なにより、外はいい天気じゃしのう」
美波や秀吉の言う通りだ。
今日はこんなにも晴れているんだから、教室の中で食べるよりも外とかで食べた方が美味しいに決まってる。
「それじゃあ……今日は屋上で昼食を食べることにしよう……」
弁当箱が包まれている風呂敷を持ち、みんなで屋上に行こうとした。
その時だった。
「再び失礼。吉井君は……あ、いたね」
「あ、久保君……またこの教室に来てどうしたの?」
何だか今日は久保君のことをよく見るような気がする。
心なしか、久保君が教室に来た時の姫路さん達の表情が結構怖いものになっていたけど、ツッコンだら負けなんだろうな、うん。
「その……もしよかったら一緒に昼食でも食べないか?」
「……」
どうしよう。
僕達は一応みんなで昼食をとることになっているわけだから、久保君も一緒に食事に誘った方がいいのかな?
この場合の選択肢は以下の三つだ。
『一緒に食事でもどう?(死亡ルート突入)』
『何なら二人で(久保利光ルート突入)』
『いや、食べる人がもういるから(面白くないから選ぶな)』
いや、最後の選択肢の括弧の中の文章は何さ!?
さては僕の中の悪魔が勝手に発言してるな……。
『ここは二番目の選択肢を選ぶべきだよ』
お前は出てくるな、天使!
大体悪魔曰く、久保君ルート突入って書いてあるじゃないか!
僕は普通に女の子が好きだからね!
『大丈夫だ。お前なら行ける、吉井明久!』
いけねぇよ!
むしろ逝ってしまうよ!
「どうしたんだい?吉井君」
「あ、いや……折角誘ってもらって悪いんだけど、もう一緒に食べる人はいるから……」
「……そうか、それは済まなかった」
眼鏡をクイッと上げて、久保君は言う。
そしてそのまま、僕の方を振り向かずに教室から出て行った。
「……ふぅ。何とかなった」
「アキ……今のはハラハラさせてくれたわね」
「何で!?」
美波の言ってることの意味がよく分からない。
と言うか、時々みんなが変な方向に暴走してしまう時があるから困るんだよな……。
「お主も大変よのう」
「…………モテる男は、辛い」
「ちょっと待ってムッツリーニ。それじゃあまるで久保君が僕に好意があるように聞こえるじゃないか。冗談はよしてよね……って、どうして目線を逸らすのさ、みんな」
誰一人として、僕に目を合わせてくれようっはしない。
たまに目が合うと、憐れみの感情を込めて僕のことを見てくる。
……え、これ、どういう状況?
「……明久。頑張れよ」
「この期に及んで何を頑張ればいいのさ!」
雄二に右肩を叩かれて、何かよく分からない励ましを受けた。
僕は一体、どう言葉を返すべきなのだろうか?
「明久君……やっぱり、男の子だけじゃなくて、女の子にも興味を持つべきです」
「姫路さん、そんな勘違いは決してしないでよね。それに秀吉、なんでそんな悲しそうな表情を浮かべているのさ!」
もうこの教室内の状況を把握しきることが出来ない。
早く屋上に行って、昼食の時間としてしまおう。
「お前ら、早く食べないと昼休みの時間もなくなっちまうし、さっさと昼飯にするぞ」
「そ、そうですね」
「じゃな。では屋上へ参るとしよう」
雄二の言葉もあってか、僕達はようやっと教室から出て、屋上へ向かったのだった。
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