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第1章 アイドルとの出会い
第三問 少女の妹 ⑤
「亜美……ちょうどよかった。君に話があるんだ」
「話?話って何?」

首を傾げる亜美。
その仕草は、何とも可愛らしい……って、違う違う!
今はそんなことを思っている場合じゃなかった!

「……亜美、あの約束のことなんだけどさ」
「約束って、あの結婚の約束?嬉しいなぁ~明久君と結婚出来るなんて」
「……なかったことにしてもらうことは、出来ないかな?」
「……え?」

驚くのも無理はないと思う。
勿体無いと思うけど、これが僕に出来る最大限のこと。
本当に亜美のことを想っているなら……今はこの約束はなかったことにしてもらう方がいい。
その方が、亜美にとっても幸せだと思うから。

「な……何で?」
「……僕なんかに好意を抱くなんて、間違ってるよ」
「違うよ!私は明久君だからこそ好意を持ったんだよ!」

あくまでもそう言い張る亜美。
……いや、そんなはずはないんだ。
亜美に似合いそうな条件の内、何一つ合うものがないのに。
どうして亜美は僕に好意を持っているのだろう?

「もしそうであったとしても、この約束だけは、なかったことにして欲しいんだ」
「そんな……私、ずっと待ってたのに。明久君に会える日を、心から待ってたのに……」

酷く悲しい表情を見せる亜美。
……どうして泣くのだろう?
どうして僕に会える日を、心から待っていてくれていたのだろう?
分からないことが多すぎて、頭が混乱してしまう。
……考えれば考えるだけ、分からなくなっていく。

「……亜美がどれだけ僕のことを待っていてくれていたのかは、僕には分からない。けど、それだけ誰かのことを待っていられるのなら、僕以外の誰かが来るのを、きっと待っていられるから」
「……明久君は、私のことが嫌いなの?」
「え?」

そんなわけない。
むしろ可愛い子だなと思っている。
……けど、だからこそ、僕はこの好意を受けとるわけにはいかない。

「……嫌いじゃない。むしろ可愛い子だなって思ってるくらいだよ」
「だったら……!」
「けど、だからこそなんだ。何も僕とはこれで縁を切ろって言ってるわけじゃない。ただ……僕の気持ちが、整理出来ていないだけなんだ」
「気持ちの整理?」
「……うん。僕は今、正直言ってかなり戸惑ってる。亜美がこの学校に転入して、こうして約束を果たそうとしている……けど、僕の方はと言えば、その約束すら忘れていたような、バカな男だ。亜美のことも、亜美と交わした約束のことも忘れていた、バカなんだ」
「……」

自分でも、よくそんなことが言えるなと思った。
自分勝手な意見だとも、言いながら思った。
けど、これは亜美と僕の二人の為でもあるのだ。
亜美が……真剣に僕のことをどこまで想ってくれているのかは分からないけど、だからこそ僕は、こんな中途半端な気持ちで、亜美と接するわけにはいかないんだ。

「……小さい時にあんな約束を、しかも後先考えずに交わした僕がいけなかったんだ。そのせいで、亜美の心をこんなにも傷つけることに……」
「……本当に、明久君は優しすぎるよ」
「え?」

僕が……優しい?
そんなに僕はお人好しなんかじゃないと思うんだけどな……。

「私の為を思って……そんなことを言い出してくるんだもん。断れるわけ、ないじゃない」
「……え?」
「……いいよ。出会ったら結婚するって小さい時の約束は、なかったことにしてあげる」

言いながら、亜美は僕の方へと近付いてくる。
そして……。

「……んん!?」

唇に感じる、柔らかな感触。
そして、かなり至近距離にある、亜美の顔。
これってもしかして……キス?

「……私のファーストキスだよ。約束をなかったことにする変わりに……私のことを好きになってくれるまで、諦めずにアピールするから。いつか、明久君に私の気持ちが完全に伝わるまで……私は諦めないから!」

そう言うと、亜美は顔を赤くして、そのまま走り去ってしまった。
……僕は、声も出せず、体を動かすことも出来ず、しばらくその場に立ち尽くしていた。













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