次の日。
ついに一日が経過してしまった。
僕は今、教室の前で一人立っているわけなのだが、中に入る程の勇気を持ち合わせていなかったりする。
何故なら……。
「結局、何もいい言葉が思い浮かばなかった……」
一日悩んだ結果、結局いい案は思い浮かばず仕舞い。
夜遅くまで考えこんでたせいか、今日は少し寝坊してしまい、弁当を作る余裕どころか、朝食すら食べてきていない始末。
ああ……せめて塩と水くらいとってくればよかったかな……。
「中からは強烈な殺気が漂ってくるし……」
隠す気のない殺気が、僕の体にまとわりつく。
きっと、須川君を代表とするFクラス男子生徒全員のものだろう(雄二は除く)。
それにプラスされるかのように、
「アキ……早く入って来なさいよ……!!」
「!!」
美波の怒りのこもったら声が、僕の耳に入ってくる。
……マズイ、これは絶体絶命の大ピンチだ。
このままだと、僕の命は天に召されてしまう―――!!
「……やっぱり、今日は学校、サボろうかな?」
駄目だ。
こんな教室に入ってしまったが最後。
僕は生きてこの文月学園から出られなくなってしまうだろう。
そうなると、僕は……僕は……!!
「……うん、脱走の準備は出来た」
覚悟は決めた。
走る準備もした。
後は下駄箱に向かって走り去って行くだけだ。
大丈夫……今の僕なら、行ける!!
『そうだよ。早く逃げないとお前の命はなくなるぜ?とっとと逃げちまうのが得策だぜ?』
出た!
ちょっと遅かった気がするけど僕の中の悪魔!
けど、今回ばかりはその策、もらった!
「……みんな、また明日!」
とりあえず、聞こえてはいないだろうけど、僕はFクラスのみんなにそう挨拶の言葉だけは残しておく。
じゃあね、みんな。
また明日―――!
(ガシッ ←誰かが僕の襟を掴む音)
(ズッ ←そのまま地面に引きずり下ろす音)
(ドシャッ ←僕が地面に叩きつけられた音)
「なっ……誰だ!?」
頭を打った為に、少し視界がチカチカする。
時間が少し経ったところで、僕はその人物を確認することに成功した。
「……美波?」
「アキ……おはよう♪」
鬼のような笑顔を浮かべている、美波の姿があった。
その横では、姫路さんも立っていた……謎の金属バットを握りしめて。
心なしか……少し赤黒く変色しているようにも見えた。
「姫路さん……その金属バットは、廊下でなんとなく素振りがしたかったから持ってる……わけじゃないよ、ね」
「……内緒です♪」
笑顔なのに、目が笑っていない。
どうしよう……地面に倒れている今、僕に勝ち目なんかない。
このままだと、三途の川までの旅~三往復目~を迎え入れてしまう。
もう生死をさ迷うのだけはごめんだ!
「美波、姫路さん……一応聞くけど、許してくれる気とかは……」
「「なんのこと(でしょうか)?」」
「……いえ、何でもないです」
どうやら僕の死刑判決は、既に決定事項らしい。
「……全員、私達がいいというまで待ちなさい」
「「「「「はっ!!!」」」」」
「美波と姫路さんの下に、男子達が全員ついている!?」
ま、マズイ……状況は更に悪化している。
二人ならまだしも、殺気だっているクラスメイト全員が相手になると言ったら、最早僕に勝ち目はない。
「……万策尽きたな、明久」
「……雄二まで敵に」
「なんか楽しそうだったからな。それに、明久にお灸を据えるいいチャンスだしな」
根っからのサディストだ!!
「…………裏切り者には、死を」
「……くっ。ここまでか」
「それでアキ、言い残すことはない?」
「……せめて優しくしてください」
僕のささやかなる願いは、叶えられることはなかった。
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