挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
死神を食べた少女 作者:七沢またり
7/37

第七話 林檎は赤い方が美味しく見える

 執拗な追撃を受ける王国軍第3軍は、アンティグア支城を目指して、必死で撤退を続けていた。誰もが何らかの傷を負い、装備は痛み、疲労困憊の様相。本隊に取り残された兵は、各個撃破されるか、剣を捨て降伏していった。

「ハアッ、ハアッ、こ、このままおめおめと戻れるか。屈辱を受けるくらいならば、戦って死んだ方がマシだ!陣を築いて、再度決戦を挑むッ!!」

 呼吸を荒げたヤルダーが、顔を紅潮させながら怒鳴り散らす。
 出世街道を歩き続けてきた彼にとって、齢50を目前に控え、初めて味わった挫折である。
 重装師団を率いていたキルス、ダヌシュの両少将の姿は見えない。先程の平原における会戦で、彼らは爆発時の混乱に巻き込まれて戦死した。
 解放軍はアルツーラ姫を先陣に立てるという餌を撒き、重装師団だけではなく、王国軍全軍を死地へと誘い入れることに成功したのだ。
 シダモは罠だと看破していたが、意気込む武官達を止める術はなかった。そして敵と合間見える寸前まで近づいたとき、地面が爆音と共に炸裂した。それは連鎖的に王国兵を巻き込み、多くの命を粉砕していった。
 ヤルダーが誇る重装師団は、ただの一合も交えることなく壊滅した。大混乱に陥った王国軍に、解放軍は矢のような陣形を組み直し、声を張り上げながら突撃を開始し始めた。
 指揮官であるヤルダーの一喝で、それぞれが態勢を立て直そうと試みるが、次の一手で完全に勝敗がついた。

 小高い丘から、帝国の軍旗が幾重にも上がり、空が割れんばかりの、張り裂けそうな程の勢いで戦鼓を打ち鳴らしたのだ。全く予期していなかった帝国軍の本格的参戦。
帝国の鎧を着た騎兵隊が突撃を開始した瞬間、王国軍兵士に残されていた僅かな戦意は弾けとんだ。所詮寄せ集めの烏合の衆である王国軍。命を捨てて戦おうなどという兵士は1割にも満たないだろう。士気の高い解放軍に敵う訳もなく、数で圧倒的に上回りながら潰走するという失態を演じることになる。
 最早ヤルダーの命令を聞こうとする兵は、あの時はいなかったのだ。孤立していたキルス、ダヌシュの両名は、『獅子の旗』を掲げる精鋭部隊の猛攻を喰らい、その首を敢え無く討ち取られた。

 後から分かったことだが、この時現れた帝国兵は偽兵であり、キーランド帝国が本格的に参戦したわけではなかった。帝国旗を立てたのはただの民間人であり、騎兵に乗っていたのは帝国の鎧を身に着けた傭兵である。非戦闘員を用いただけのありふれた偽装作戦だったが、地雷で混乱状態だった王国軍はまんまと嵌ってしまった。冷静さを失ったとき、人は判断を見誤る。


「閣下。アンティグアで態勢を立て直し、汚名を晴らす機会を待ちましょう。この状況で決戦を挑んだ所で、勝敗は明らかです。残念ですが、我々には戦う力は残されてはおりません」

 シダモの諫言に、ヤルダーは周りの兵士を見渡す。

「こ、これが、これが我が栄光の第3軍だというのか。なぜこんなことに。なぜだッ! 理解できん! そもそも、帝国が参戦してくるなど、聞いてはおらんッ! 本国の連中は何をしておったのだッ!!」

「閣下、その事ですが――」

 屈辱に拳を握り締める指揮官の耳に、更に悲報を告げる伝令が2騎飛び込んでくる。

「ヤルダー大将閣下ッ!!」

「今度は何だ!! ついでに諸国連合でも参戦してきたか!? あの恩知らずのクズどもがッ!」

 ムンドノーヴォ大陸北方面を支配するのが、ユーズ王国。西から支配圏を拡大しているのがキーランド帝国。
 そして南東を纏め上げているのが、ドールバックス諸国連合だ。元々大陸南東部は王国の支配下だったが、かつて魔物が出現した混乱に乗じて、各領主が独立。連合を組んで国家を形成したという因縁がある。肥沃な大地を抱え、海に面しており、大量の資源が眠る鉱山を抱えており、強力な財政力を持つ。近年富国強兵を続け、急速に勢力を拡大している。
 王国が衰退した最大の原因は、この豊かな領地を失った事である。当然取り戻そうと躍起になり、何度も遠征を繰り返した。
 が、連合は資金と資源を帝国に提供する事で軍事同盟を締結。共同で二方面から王国に対抗していったのだ。
 やがて戦闘が長期化すると、王国の攻撃を受け続けた連合も音を上げ、少なくない金を賠償して停戦した。各国との間に、名ばかりの不戦協定が結ばれたのだ。
 この一連の出来事が、200年もの昔に勃発した、ムンドノーヴォ大戦である。


「か、閣下、連合とは不戦協定を結んで――」

 文官の一人が発言するのを一喝する。

「黙れ! 反乱に乗じて経済封鎖をしておきながら、何が協定かッ!! 我らが疲弊するのを、ほくそ笑んでいるに違いないわッ!」

「も、申し訳ございません」

「――伝令、報告を続けろ!」

 シダモが先を促すと、耳を疑う情報が伝令の口から発せられる。

「はっ! アンティグア支城に敵の旗を確認! 反乱軍の旗が掲げられております!! アンティグアは陥落致しました!!」

 一瞬、時間が止まる。

「な、なんだとッ! そんな馬鹿なはずがあるか!! あそこには1万の兵を残してきたのだ!! 易々と落ちるはずがないッ!!」

 激昂し、伝令の胸元を掴み上げるヤルダー。シダモも予期しない情報に動揺を隠せない。
 もう一人の伝令が、更に報告を続ける。

「城より脱出した兵の話によると、多数の内通者が煽動し、押し寄せた敵兵に城門を開いた模様。守将のロスタム少将は、奮戦するも反乱軍に討たれたとの事です! アンティグアは完全に敵の手中に落ちました!」

 敵主力を平原に誘い出し、その間隙を突いて別働隊がアンティグアを攻撃。予め通じておいた内通兵に城を開けさせたのだ。まんまと第3軍は敵の策に引っかかり、重要な拠点を奪われてしまった。
 守備の要であったアンティグア支城は、今後王都解放軍だけではなく、帝国軍増援部隊の橋頭堡となることだろう。


「お、おおおッ」

「……閣下。このままアンティグアに向かう訳にはいかなくなりました。今すぐに、ここから東のベルタへ撤退しましょう。あそこには糧食の蓄えがあります。急がなければ、反乱軍に抑えられてしまいます」

 アンティグアから東部にあるベルタ地帯。兵力はアンティグアに集中させた為に、守兵は少ない。急がなければ、この国境線周辺地帯の全てを失いかねないのだ。

「……否、私は、私はアンティグアを取り返すぞ。必ず取り返さねばならぬ。陛下から直々に守備を命じられたのだぞ? それに、第3軍は敗れたとはいえ、まだ3万程は健在ではないか。昼夜を問わず攻勢を続ければ――」

「なりません、閣下!我らは後方の反乱軍だけでなく、アンティグア方面からも挟撃を受けるのです! 直ちに進路を変更しなければなりません! アンティグアを攻めている余裕などありませぬ!! なにとぞ、なにとぞ東進の指示をお出しくださいッ」

 魂を失った表情でぼそぼそと呟く、ヤルダー大将の身体を強く揺する。攻城など冗談ではない。確実に全滅する。筆頭参謀のシダモは、なんとしてでも阻止しなくてはならなかった。信を失うことになろうとも、それだけは翻意させなければならない。

「――くッ!」

「閣下ッ!」

「……分かった。お前の言に従おう。第3軍は、東へ転進しベルタの守備に就く。態勢を建て直し、再び決戦を挑もう。これで、これで良いか?」

「――はっ、了解いたしました。ベルタへ向け進路を変更するぞ! 全軍転進開始ッ!!」




――この後、執拗だった解放軍の追撃は何故か止まり、第3軍は3万の兵力を維持したまま、ベルタへ撤退することに成功する。
 国境地域周辺の制圧を目論んだ解放軍であったが、ベルタの守りが想定より堅いと判断し、占領したアンティグアで軍備の増強を図ることにした。

 解放軍が更なる追撃と、ベルタ制圧が出来なかった理由は一つ。食糧貯蔵庫が焼き討ちされた事、食料がなければ、兵士は戦えない。
 会戦で勝利したとはいえ、不測の事態により傭兵隊3000を失ったのは大きい。解放軍も態勢を整える時間が必要だったのだ。





 シェラ率いる2500の騎兵隊は、敵本拠地であるサルバドル城塞周辺を堂々と横切り、東部ベルタ地帯へと抜けるべく、アルシア川を渡ろうとしていた。
 何故敵支配圏を潜り抜けることに成功したのか。その理由は、騎兵隊の姿を見れば分かる。彼女が掲げる旗は王都解放軍のものであり、装備も解放軍兵士の物に偽装していたのだ。食糧貯蔵庫に保管されていたそれである。

「こ、こんなに上手くいくとは思いませんでした」

「反乱軍だって脱走兵やら、帝国兵、傭兵を抱えた大所帯でしょう? 一々顔なんて覚えてる訳ないと思ってね。コソコソ隠れるより、堂々としていた方が怪しまれないのよ」

「シェラ副将が豪胆すぎるのです。我々には真似できませんよ。あんなに平然と敵兵と渡り合うなんて信じられません。いつ斬り付けられるか、ヒヤヒヤしておりました」

「案外間抜けな敵将で助かっちゃったわね。まぁ、慌てる気持ちも分からないでもないけれど。私だって、お腹が空いたらイライラしてくるし」

「副将、よければこれを」

 隣で馬を走らせていた騎兵の一人が、荷袋から青い果実を取り出し、シェラへと手渡した。ちょっと虫に食われているが、腐ってはいない。

「あら、何それ」

「貯蔵庫で見つけた、青林檎です。ここらでは珍しいので、何個か頂戴しておいたのです。熟れてて美味しそうですよ」

「丁度喉が渇いていたの。ありがとう。でも青い林檎なんてあるのね」

「王国では確かに珍しいですね。林檎といえば、やはり赤ですから」

「赤い方が食欲が湧くものね」

 シェラが齧り付くと、果汁が口から滴り落ちる。シャリシャリと夢中で咀嚼するシェラを、騎兵は嬉しそうに見つめた。
 騎兵隊員は、臨時で指揮を執っているだけのシェラを、既に上官と認めている。ここまでの戦いで、その武力、勇猛ぶりが本物だと実感したからだ。王国軍のどの将校よりも強いのではないか。大鎌を軽々と振り回す女指揮官を見ると、そんな錯覚すら覚えた。
 強い者に従えば生き残れる。それが兵士たちには良く分かっている。特に先程の一件で心を掴んだといっても良い。

 解放軍本拠地から意気揚々と追撃に来た将校に、素知らぬ顔で応対しはじめたときには、隊員一同心の臓が冷え切った。戦死した元上官である騎兵隊隊長の首を渡し、指揮官は討ち取ったが、残党が森林地帯に逃れたと平然と語ったのだ。傭兵隊の装備は正規兵と違い元々バラバラであったので、偽装も容易かった。在庫の新品、死体から剥がした物を適当に着込めば生き残りの傭兵の完成だ。
 最初は何者かと怪しんでいた敵将校も、話を聞いている内に、急がねば逃げられると功を焦り出し、手勢を率いて森の中へと入っていった。
 当然だが、彼らの先には何も無い。その先にあるのは既に解放軍の手に落ちた、アンティグア支城だけだ。

「……シェラ副将。まずいです。敵兵が川の周辺をうろついています。どうやらこちらに気付いたみたいです」

「あら。それは面倒くさいわね」

「どうしますか? あの数なら蹴散らせますが」

 シェラの耳元に、顔を近づけ隊員の一人が話しかける。怪しまれぬようにそちらへと視線を向けると、騎兵隊の様子を確認したらしき、100名程の部隊が向かってきている。

「仕方がない。一応挨拶しましょう。私が合図したら殺しなさい。上手く回避できるのが一番良いんだけど。こんな所で無意味に目立つのは嫌だしね」

「了解!」

 シェラ達が馬の向きを変え、小隊へと近づいていく。
 ただ一人馬に乗った、指揮官らしき右頬に傷のある男がシェラをジッと睨みつけている。
小隊員達は槍をこちらにむけ、戦闘態勢をとっている。
 警戒されていると、シェラは感づく。むしろ、バレているかもしれない。先手を打ってシェラは語りかける。

「任務ご苦労ッ! 我々は王都解放軍騎兵隊だ! 王国の敗残兵を掃討する為に行軍中である!」

「貴官の正確な所属、姓名を答えて頂きたいッ!我々にも任務がありますので、どうかご容赦を!」

 シェラの大声に対し、負けじと声を張り上げる。一筋縄ではいかないようだとシェラは感じた。先程までの間抜けたちとは一味違うらしい。

「王都解放軍、第一師団所属、第13騎兵隊を率いているシェラ少尉だ。そちらも同様に答えて頂きたい!」

「……了解した。我々は王都解放軍、第一師団所属の予備兵だ。私はカルス少尉。臨時に組織されたこの部隊を指揮している」

「了解した。それでは、我々は先を急いでいるのでそろそろ宜しいか。このままでは敵をむざむざ逃がしてしまう」

「……騎兵隊が追撃に当るという連絡は受けていないが」

「行き違いだろう。戦場では良くある事だ」

「我々は先程まで食料貯蔵庫の守備に当っていた。今の任務は、貯蔵庫を襲撃した『騎兵隊』を探しているところだ。どうやら、この周辺に潜んでいるようなのでな」

 カルスが剣の柄に手を掛ける。
 シェラは平然とした様子で、その様子を眺めている。鎌は背中に背負ったままだ。

「なるほど。で、それがどうかしたのか。まさか、我々が、その騎兵隊とでも?」

 シェラは口元を歪める。大鎌を握る力を、強めた。

「……もう一つだけ確認する。貴官の身分証を見せて貰いたい。解放軍将兵には、末端に至るまで配布されているのは知っている筈。それを、今すぐに見せて欲しい。――今すぐにだッ!」

 カルスは手で合図を送ると、部隊員が槍を構えて騎兵達に切っ先を向ける。

「……ああ、あれね。ちょっと待ってくれる?確かこの袋の中に――」

 馬に括りつけた袋に手を伸ばす仕草をとりつつ、背負った大鎌を取って、カルスに斬り付けた。
 警戒していたカルスは、紙一重でそれを避ける。

「やはり貴様らが焼き討ちを行った騎兵隊か!! 我ら解放軍に扮するなど、汚い真似をッ!」

「結構勘が良いのね。でも馬鹿なのかしら。たったそれだけの数で私達を足止めしようなんて。自殺願望でもあるの?」

「黙れッ! 今すぐ下馬し、剣を捨てて降伏しろ! 直ぐに増援が駆けつける! 貴様らは袋の鼠だっ!」

「断るわ。だって、貴方死んじゃうもの」

「――ッ!!」

 シェラが鎌で更に切りかかる。
 カルスは半月型をした太刀で受け止めるが、重い一撃を受け反撃をすることが出来ない。普段ならば受け流すのだが、勢いを殺しきれないのだ。

「ほらほら。しっかり受けないと、その首叩き落すわよ!!」

「こ、こいつ、強いっ!」

 必死に剣を振るうが、カルスの攻撃は軽く捌かれてしまう。それでいて、シェラの一撃は両手が痺れるほどの力強さ。徐々に腕を動かす速さ、受け止める力が落ちていく。体力、気力を削ぎ取られていく。
 それをシェラが見逃すわけはない。

「死ねっ!」

「くっ――」

 数回フェイントの突きを交えた後、本命の刃を首筋へ、横方向からの薙ぎを入れる。
 カルスは完全に翻弄された後、直撃を受けて馬から崩れ落ちた。
――即死である。

「騎兵隊、一人残らず討ち取れ!! 決して逃がすな!」

「おうッ!!」

「反乱軍を殺せッ!!」

 元々数で勝る騎兵隊だ。数分も経たないうちに、その全てを殺しつくすことに成功した。
中でもシェラは率先して大鎌を振るい、解放軍歩兵を存分に殺戮した。騎兵隊の犠牲者は数名。近づいてくる増援部隊も見当たらない。
 渡るなら、今だ。

「――よし、渡河を開始する。その後は全力で駆け抜ける。良いわね?」

「はっ! シェラ隊長に最後までついていきます!」

「帰ったら、ご飯を一緒に食べましょう。私が奢ってあげるから。その代わり、美味しい食べ物教えてね」

「はっ! お任せください!!」

「もうバレちゃったから、演技は必要ないでしょう。血で汚れちゃったし」

 額の汗を拭った後、返り血で染まった鎧を指差す。

「はい。解放軍のフリはここまでかと」

「栄えある王国兵に戻りますか?」

「よし、王国軍の旗を掲げろ! 反乱軍の旗は破り捨てておけ!! 目障りだから、しっかりと踏みつけておきなさい!」

「はっ!」

「――シェラ騎兵隊、帰還を開始する!」

「おう!!」





 アルシア川を渡河後、シェラの騎兵隊は数回襲撃を受ける。先程の戦闘を斥候に発見されていたらしく、騎兵を主軸とした追撃部隊が現れたのだ。
 だが、その全てをシェラが先頭に立って叩き潰し、指揮官の首級を挙げることに成功する。
潰走させた解放軍追撃部隊の総数4000。そのうちの1000を戦死させるという、敗走中の部隊とは思えない、凄まじい戦果を挙げた。

 シェラ騎兵隊がベルタ城に辿りついた時、その数は2000まで減っていた。だが、兵士たちの顔は戦意に満ち溢れ、敗走してきたとは思えないものであった。当初は解放軍の鎧を着けていた為、当然の事だが警戒されてしまった。
 が、揚々と王国軍の旗を掲げていたので、襲撃を受けるような事は無かった。門を解き放ち彼らを迎え入れると、守備兵は諸手を挙げて歓迎した。士気が底まで下がっていたベルタ城は盛り上がり、多少だが戦意を取り戻すことに成功した。
 全滅したと思われていた騎兵隊の帰還を、最も喜んだのはヤルダー大将だろう。報告を受けたヤルダーは奇声を上げて椅子から立ち上がり、体を震わせて歓喜した。直ぐに騎兵隊の元へ向かうと、顔を紅潮させ涙を流して彼らの手を取った。
 短気だが情に厚いヤルダーは、降伏せずに帰還した若きシェラの姿に心を打たれたのだ。
 第3軍の英雄としてシェラを遇すると、懸念の声を一蹴し過分とも言える褒賞を与えた。




――王国軍第3軍、ベルタ城に転進し国境周辺支配圏の維持に務める。
帰還した騎兵隊、守兵を合わせ、その総数は4万程。

 ヤルダー大将は、敗戦の責を感じ自害しようとしたが、近臣の手により阻止される。王都からは、次回に恥を雪げと叱咤の勅令が届いた為、ヤルダーは引き続き第3軍を率いる事になる。解任しても、その任を継ぐ人材がいないという事情もあった。

 シェラ少尉。戦死した上官から指揮を引き継ぎ、敵食料貯蔵庫の焼き討ちに成功。勢い付く解放軍の足止めに大きく貢献。更に敵包囲を打ち破り、多数の敵将兵を討ち取るという奮戦。最後には、2000の騎兵を無事にベルタまで帰還させたのだ。文句の付け様がない手柄である。これらの功と、先のボルール討ち取り、更にヤルダー大将の後押しも加わった事で、異例の速さで昇進が行われる。

 大尉に昇進した3ヶ月後に、少佐の地位が与えられたのだ。同時に、指揮官が戦死した騎兵隊の指揮を、正式に任せられる事になる。
――王国の歴史でも類を見ない、18歳での佐官昇進である。


 本人も心ゆくまでご馳走を堪能し、幸せそうであった。残念なことに満腹感を味わうことだけはできなかったようだ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ