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ストラグル・ドラゴン―STAGE1―
作:拓平



第五章


 「俺は、自分の中の“龍”の力を借りてハンターという敵集団と戦っている」
「龍?」
友蘭は突拍子も無い話についていくのがやっとというように聞き返した。
「そう。龍は俺の中にいる。皆、龍は持ってるんだ。誰でも。
 いつ頃からか解らない。大昔から、人間には龍が憑いていた。その龍は人間の半分を占め、強い力、空を飛ぶ翼とかいろんな力を持っていたんだ。大昔はその龍は人間の一部として、生きてた。能力も普通に使われていたんだ。だけどね、いつからか、その龍のあんまりの強さに……神様が人間の中の奥のほうにしまいこんでしまった。
 そこから人間は無力な生き物になったんだ。龍は生きてて、人間は自分等がそんな力を持ってること、すっかり忘れてしまった。だから、龍は知られることも、思い出されることも無く、しばらくの間そのままだった。
 でも今から数千、数百年前、やっと気づいた人がいた。それも、二人。その二人は龍の力があることを知り最初は喜んだ。人間に新たな可能性が出来たってね。
 でも……ある日、その二人のうち、一人が言い出したんだ。『この力は危険だ。龍は人を侵食し、人を滅ぼしてしまうかもしれない』もう一人のほうはそんなことは無い、ともに生きていくべきだと言い張った。
 二人は、龍の力を正反対の考え方で見ていたんだ。
 結局そのまま、二人は決別してしまった。一人は、龍が恐ろしくて魔術に手を伸ばし、己の龍を殺した……。自分を、半分失ったんだ」
芽緒はぎゅっと目を瞑った。耳を傾ける友蘭は本当に真剣そのものだ。
「半分自分を失った代わりに、そいつは魔術を手に入れ、そして狂ったように他の者の……まだ自分に龍がいるってことを気づいてない人たちの龍まで、殺していった。そして、龍を殺した後、自分の考えをその者達に植え付け、魔術を与え仲間を増やしていったんだ。龍の駆除、抹殺だと言い張って。
 これが、ハンター組織の始まり」
「それが……龍架君の、敵?」
そう。芽緒は頷いた。
「今は、昔みたいに狂ったようには龍を殺してないみたいだけど。何らかの拍子に龍の波動が出てしまったものが、狙われるんだ。手当たり次第に殺してくより、一番龍の力が出やすくなってしまった人の龍を殺したほうが簡単だし、効率が良いんだろうね」
「それで……もう一人のほうはどうなったの?」
「ああ、もう一人のほうは魔術を持ったハンター達から人々の龍を救うために、己の龍を鍛えたんだ。鍛えてくうちに、変身が出来るようになって力が、操れるようになったんだ。
 でもその人はハンターたちを皆殺しにしようとはしなかった。
 そこで考え出されたのが、龍の力を封じ込めた赤い札」
芽緒は引き出しから赤札を引っ張り出した。そして、友蘭に手渡す。友蘭は恐る恐るといった様子で札を両手で持ち、まじまじと見つめる。
「これを作ってハンターたちの魔力を吸い取り、副作用でハンターとなっていたころの記憶を抜き、元の人間に戻していった。
 それでも、ハンター達の龍は戻ってはこないんだけどね。
 その人は、自分の子孫たちにもその使命を受け継がせた。受け継がれていくうち、龍も協力してくれるようになったのか、生まれつき変身が出来る体を持った子が生まれるようになったんだ。
 これが――……龍架家のハンター狩りの始まりなんだ
 そのハンターと龍架の戦いは今現在も続いてる。今の家の当主はうちの父さんだけど、いつか俺がこの家を継ぐんだ。皆の龍を守るためにね」
赤札を持ったままの友蘭の瞳はきらきらと輝いていた。だんだん口元から笑みが広がってゆく。
「すごい!龍架君みんなを守ってるんだ……すごいね」
「え!?そ、そんなにすごいの?」
こくり、大きく頷いて友蘭は優しく微笑んだ。突然芽緒の顔は熱くなってきた。
「じゃあ、あの、ベンチに座ってた、尾崎さんだったかな。その子も守ったんだね。龍の力が出てくるようになったから、ハンターに狙われるようになって」
「ああ、龍の波動を出す人のこと、龍の力を操る人のこと、全部まとめて『龍人』って呼んでるんだ。龍架家の人たちは。まあ龍になれる人っていうのは龍架の血がかよってる人しかいないんだけどね」
「龍人……?じゃあ、私も龍人になるかもしれないの?普通の人は、龍人じゃないの?」
友蘭は芽緒の隣に来てベッドに腰掛けた。赤札を芽緒に手渡す。近いっ芽緒は思わず顔を背けてしまった。それでも、質問に答えようと頑張る。
「ふ、普通の人は龍の存在なんて知らないから……龍人になるなんて、普通はありえないんだ。何らかの拍子に、実際あんまり原因は分からないんだけど、強い、龍の波動を出すことがあるんだ。中にいる龍も、存在を気づいてほしいんだろうね。
 銀さんだっていつ龍人になるか分からないよ」
「その波動をハンターは感じるの?」
好奇心丸出しで友蘭はどんどん質問する。芽緒にとってその友蘭の好奇心は嬉しいのか恥ずかしいのかよく分からない気持ちとさせた。
「うん。したら、ハンターがその龍人を襲ってくるんだ。そしたらさっき言ったように赤札で俺たちが守るって訳。俺らも波動を感じられるから、ハンターの狙う人は大体目星がつくしね」
「へぇ、そうなんだ。やっぱりすごいね」
きっと頭の中は今の話でいっぱいとなっているのだろう。友蘭は瞳をめいっぱい輝かせた。
「でもさ」
芽緒がふと思い立ったように言う。友蘭はきょとんと次の言葉を待った。
「よく信じられるよね。こんな非現実的な事。一回全解除を見たって……実際信じられるような話じゃないだろ?なんかさ、気持ち悪いとか思ったりしない?」
「信じられるよ」
にこっと微笑んで友蘭は答える。その笑顔を間近で見たら、ちょっとくらっとする。もう病気だな、と永に言われてしまうだろうか。
「龍架君、嘘つくような人じゃないでしょ?信じるよ。それに、全然変じゃないし、気持ち悪くも無いよ。むしろ龍架君てすごいと思うしね」
「……そう、ありがと」
さらりと礼の言葉が出てきたのには芽緒も少し驚いた。いいよいいよ、と友蘭は首を振る。
「ねね、全解除って何?」
「全解除?全解除は龍に変身することだよ。全部、龍になること。で、後部分解除って言うのもあるんだけど、これは龍の翼だけを出すとか、龍の腕にするとか龍の力だけを発揮するとかのこと。文字通り部分だけ変身するって事なんだ」
「奥が深いんだ」
ぽっかり口をあけて友蘭は感心している。おっと、忘れるところだった。
「銀さん、これ、全部龍架家の極秘の秘密なんだ。絶対に誰にも言わないでね?絶対だよ」
きつく口止めされて友蘭は開いていた口をきゅっと閉め首を縦に振った。
「絶対言わないよ」
ま、銀さんなら心配ないよな。芽緒は安心したようにふうっと息を吐き出した。その時。
 バーン!!
 大きな音とともにドアが開け放たれた。
「話は聞いたわ!ひとつ私に提案がありま〜す!!」
入ってきて早々叫んだのは音だ。芽緒と友蘭、二人ともあんぐりと口を開け放っている。
「あ……姉貴!?」
最初に声を発したのは芽緒、友蘭は何事かと二人を交互に見る。
「極秘の秘密を喋っちゃった芽緒ちゃん!秘密を知っちゃった〜えーと……」
音は名前なんだっけ?という顔で友蘭を見た。
「銀友蘭です」
気を取り直した友蘭が慌てて言う。
「そう!友蘭ちゃん!あ、私は芽緒の姉の音っていう者よ。で、一般の人は秘密を知っちゃ駄目なの、一般の人は、ね」
にっこりと音が微笑む。まだ二人には話がつかめていない。
「てな訳でコンビ組んじゃったらどうかしら?一緒に仕事するなら父さんも文句は言えないでしょうしね〜」
「は!?コンビ!?」
「ど……どういうことなんですか?」
二人ともあたふたと詳しい説明を求める。音はすとんと正座し、得意げに話し出した。
「二人で組んで、お仕事するの。芽緒ちゃんはハンターと戦って、その助手を友蘭ちゃんがするの」
芽緒はすぐ、有り得ないと首を振った。
「そんなの危険すぎるだろ!第一銀さん戦えないじゃねぇか!龍も目覚めてないし!訓練受けなきゃハンターとはやりあえないって!!」
「大丈夫よ」
即座に音が反論する。友蘭はそのやりあいをはらはらと見守ることしか出来なかった。
「御札の使い方をマスターして、ちょっとした戦闘能力つければ完璧よ。あ、と、は」
にへらっと笑んで音は声を低くした。
「芽緒ちゃんが守れば良いでしょ〜う?」
守る!?芽緒は顔から湯気が出るかと思った。
「そんな……俺ハンターと戦うだけで精一杯――」
言いかけた芽緒の言葉をさえぎり、即座に音が言う。
「父さん、秘密を勝手に喋ったって聞いたら……」
芽緒はぐっと言葉に詰まる。
「てな訳で、友蘭ちゃんがハンター狩りに加われば秘密を知る理由も出来るって訳よ。いいかしら?友蘭ちゃん」
いきなり話の矛先を自分に向けられ、多少たじろいた友蘭だが、少し考えて、うなずいた。
「そもそも私が見ちゃったからいけないんだけど……でも、私も皆の龍を救いたいって思います。足手まといになるかもしれないけれど、やりたいです」
「じゃ、決まりね!友蘭ちゃん、明日帰りに家に寄っていって頂戴ね、いろいろ教えるわ」
にこにことご機嫌な音に対して芽緒はかなり複雑な気分だった。話が速く進みすぎだっつーの!こんな姉に悩まされたのは、一度や二度ではないのだが、今回のはさすがに芽緒も堪えてしまったようだ。

 反面、嬉しいと思う自分がいたというのは芽緒は認めたくなかった。







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