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チョコレート革命 作者:香月よう子
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不吉な予感

「ねえ、浩人」

 秋の夕暮れ。
 彼の部屋の中で、彼の肩にもたれかかったまま、私は問うた。

「あの娘。クラスメートの・・・何て言うの。名前」
「神崎・・・神崎純子」
 浩人は無表情のまま。
「玲美のこと、知ってるの?」
「いや・・・あいつは何も知らない」
「でしょうね。「身代わり」だなんてわかってたら、彼女だって・・・」

 私の言葉は浩人を追い詰める。
 追い詰められれば、浩人は心を閉ざすだけ。
わかっていながら、私はそれしか術を知らない。

 神崎・・・純子────── 

私は、彼女のことをありったけ思い出す。
 一目見たあの時、一瞬、息を飲んだ。
 未だに私は忘れられない。
 確かに。
 髪は玲美より長かったけれど確かに、彼女は玲美と同じ顔だった。
 顎から耳にかけてのシャープな輪郭。
 意志の強さを秘めた口許。
 何よりその瞳。
 何の疑いもなく、まっすぐ前だけを見つめるその瞳。
 何もかもが玲美の生き写しだった。

彼女は泣いていた。
 躊躇いもなく、浩人の胸に縋って。
 私にはそれが許せない。
 玲美ですら、そんなことはしなかったのに。
 浩人がちょくちょく浮き名を流している時ですら、玲美は微笑っていた。
 それは心から愛し合い、崩されることのない絆。

 泣いていたのは────── 
 浩人の胸の中で泣いていいのは、この私だけ。
 誰が何と言おうと。
 その権利を、文字通り、身を張って得たのは私だけ。

 それなのに。
 今頃になって、横取りするかのように私の前に現れた彼女。
 彼女だけはどうしても許せない。
 玲美と顔が似ているというだけで、浩人の心をわずかでも捉えたなど、我慢出来るわけがない。

けれど。
 今、一抹の不吉な予感を禁じ得ない自分がいる。

 イカロスの翼さえ持たなかった玲美が、自らするりと浩人の腕の中から零れ落ちてしまったように。
いつか、玲美のように彼女はごく自然にあっさりと、浩人の胸の中に入りこみ、本当に浩人の心を掴んでしまうのではないか・・・

 そして────── 






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