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――雨上がり。
 朝から降り続いていた雨は、私の期待などおかまいなしに降り続いていた。

「……晴れてくれればよかったのに」

 しとしとという音がなぜか寂しさを連れてくる。
 でも、どうしてだろう。そう感じたりするのって。
 雨は生き物にとって命の恵みを与えてくれているというのに。
 曇っていて、薄暗いから?
 世界が重苦しく感じてしまうから?

「うん。今日はいい日」

 ネガティブなこと考えちゃ、だめだよね。
 今日はそんな事を考えることなんてない。
 私は自分にそう言いきかせて、お気に入りの赤い傘を差して、雨の中を歩いていた。

 ふと、いつもの公園の前を通りすぎようとしたとき、小さな赤い傘が公園の中にあるのに気がついた。

「女の子、かな?」

 公園に女の子がいるのは不思議な事ではないけれど、雨の中、ぽつんと一人で佇んでいたので、気になった。
 その小さな傘に近づいて話し掛けてみた。

「こんにちはっ」

 黄色いスモッグを着て、傘と同じ赤色の長靴を履いた女の子。
 声をかけた私を一瞥したけど、またそのまま俯いてしまった。
 変な人だと思われたかな。
「ね、どうしたの? 一人?」
「……」
 そっか、立ったままだった。
 私はしゃがんで、女の子の目線とあわせた。
「今日は雨が降っているね」
「……」
「遊べなくてつまんないね」
「……」
「でもね、雨って、植物さん達のごはんになるんだよ」
「……」
 優しく話し掛けてみたけど、女の子は俯いたまま答えてくれなかった。
「ねえ、雨、嫌い?」
「おねえちゃん……」
 やっと答えてくれた。
「うん」
「わたし、あめ、きらい」
 すねたように口を尖らせて。
「そう……」
「どうしてきょう、あめ、ふらなきゃいけないの?」
「今日?」
「おてんきだったら、おとうさんとあそびにいけたのに」
「そっか。それは、つらかったね」
 そうだ。雨の日が憂鬱に感じるのは、私も昔……雨の日で行きたかった所にいけなかったという、自分でも忘れてしまっていた記憶の破片が、そう感じさせているのかもしれない。
「でも、またいつか、行けるよ」
「……。きょうがよかったの」
「どうして?」
「あのね、きょうね、わたしのたんじょうびだったの。だからおとうさん、ゆうえんちにつれていってくれるって」
 半分なきべそをかいたような顔。
「きょう、誕生日なの?」
「……。うん」
「よかった。あのね、じつは、お姉さんも今日が誕生日なの」
「おねえさんも?」
「うん。今日、私が生まれた日。一緒だよ」
「ほんと?」
「ええ。今日は、私の誕生日なの」
「しのも、きょう、たんじょうびー」
「うん、しのちゃん、誕生日おめでとう」
「ありがとう、おねえちゃん」
 張り合うように、可愛らしくなついてきてくれた。
「雨が降って、遊園地いけなかったけど、いい事があったよね」
「うん」
 やっと笑顔になってくれた。
「志乃ー」
 遠くで呼ぶ声がした。
「あ、おとーさんだー」
「うん」
「おとーさーん」
 たとたとと父親らしい男の人にかけてゆく。とてもやさしい目をした人だった。
「志乃、今日は遊園地いけなかったけど、家でみんなでパーティーだぞ」
「ぱーてぃー?」
「うん、望くん達みんなが来ているぞ」
「ほんとー?」
「ああ。さ、いこうか」
「うんっ」
 そして、私のほうに向く。
「おねーちゃん、またねー」
「うん、ばいばい」
 私を真似するように可愛く手を振っていた。
 父親らしい人も会釈をして二人、雨の中去っていった。

 私はふたたび、雨の中を歩き始めた。

 誕生日。自分が生まれた日。
 そんな日に、新しい出会いができた。 
 きっとまた、この公園であの女の子と話ができる。

「うん、今日はいい日」

 でも、私も、誕生日に祝ってくれる人がいてくれたら、私、その人を好きになってしまうかも。
 ……なんてね。

 空を見あげた。
 雲の間から太陽の日差しが差し掛かってきた。

「傘は、もういらないかな」

 雨上がり。

 全てのものが、輝いて見えた。

ちょっと気分転換に短編を書いてみました。文学じゃないかも? 誕生日の出来事。皆様はどんな思い出がありますか? ほんわかしていただけたら嬉しいです。
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