挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
無関心の恋(拍手お礼の中身) 作者:黒湖クロコ
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

2/9

不良少女の恋(明日香視点)

 明日香視点の話で、明日香の過去の話になります。
「お前、もうこれで何回目だ?」
 呆れたような、咎めるような声に、私は返答を返さない。私だって分かっている。こうやって警察にお世話になっている回数が通常より全然多い事に。
 それでも、上手く抑えきれないのだから仕方がないじゃないと思う。
「Bクラスなのに、かなりひどい被害ばかりだして。もう少し我慢というものをだな――」
「我慢て。……だって悪いのはあっちじゃないの」
 我慢、我慢、我慢。
 もちろん、そんなの何度もおまじないのように心の中で唱えている。それでも、我慢しきれないのだ。
「確かに今回は、お年寄りを暴行してお金をせしめようとした奴らの方が悪いが、世の中には限度というものがあってだな」
 分かっている。
 悪いのはあっち。でも私はやりすぎている。

 たまたま公園で、お年寄りに能力を使って暴行して、金品を取り上げようとしている不良達を見つけてしまった私は、何も考えずに助けに飛び込んだ。
 そして起こった、大乱闘。というか、大乱闘にしたのは私だ。最終的に電信柱を蹴り倒したところで、警察に私が止められた。
 最初は私が起こした暴力事件になりそうになったが、助けたお年寄りが、悪いの不良少年達で、私は助けに入っただけだと証言してくれたおかげで、何とか厳重注意だけですんでいる。Aクラスの物損に対する保障はBクラスは適用されない。ただし理由が認められれば、能力を使っての物損をBクラスでも国が保障してくれる。今回はその保障対象内に何とか入ったが、頻回にこう言う事を起こしている為、警察からのお小言も長い。
「最近の破壊活動は、あまりにも頻度が多いしな。力も有り余ってるんだろ。というわけだから、とりあえず、【組織】から直々にうちで働かないかという誘いが来た。瀬戸がやっている事がすべて間違っているとは言わないが、これ以上は俺たちも庇ってやれないんだ」
 【組織】というのは名前だけは知っている。この国でそう呼ばれるのは、警察などの力だけでは解決が難しい事件を担当する機関の事で、全国に点在した。AクラスやBクラスでも能力が高い人が所属するが、色々問題がある能力者も監視するために入れられたりすると聞く。私の場合は、あきらかに後者だろう。
「分かった」
 私は不良達とは違うといいたいけれど、世間が私を見る目は不良と変わらない。【超脚力】という能力を持って生まれてしまった私は、いつも周りから怖がられる。能力と性格は比例するのか、性格もどうしてもキツイと言われてしまって、女の子と上手く付き合えない。

 本当は、組織の仕事なんて興味はなかった。学校の先生になりたいと思っていたから。でも、この分だと無理な気がする。私のように自分の感情に任せて能力を使うような暴力女に大切な子供を任せたいと思う親がいるとは思えない。
 実習も普通は母校に行く事になるけれど……断られるというか、止めなさいと諭されるのが目に見える。
「じゃあ、【組織】の人に連絡入れておくから」
 他人事のようにその言葉を聞きながら、私は警官から顔を逸らし、外を眺めた。




◇◆◇◆◇◆◇◆



 どうして、目の前に妊婦さんがいるのに、席を譲らないの。
 どうして、道端にタバコを捨てられるの。どうして、そんな子供が多い場所で能力を使えるの。どうしてどうしてどうして……。
「イライラするっ!!」
 我慢我慢我慢。

 分かってる。私が口を開けば喧嘩になる。そして喧嘩になったら、絶対能力を使ってしまう。そうしたら、私の能力じゃすぐにまた警察のご厄介だ。
 小学校の頃にやったら駄目だと言われた事を、どうして皆やるのだろう。そして、どうして皆それを無視できるのだろう。
 私も無視できれば、きっとこんな風じゃなかったわけで……皆、きっと私よりずっと生きるのが上手なのだろう。そして、私は下手なのだ。
 我慢だ、我慢。
 それが上手に生きる方法なのだから。

「きゃぁっ!」
 組織へ向かう途中、叫び声が聞こえて、私は足を止めた。
 無視。それが一番。それが一番賢い生きかた。皆に合わせて、空気を読んで――……でも、それができないのが私だ。
 叫び声の方を向くと、バイクが走り去っていくのがみえた。その手には女物の鞄。路上に倒れた女性の手には、鞄がない。
 みんなが唖然として固まっている。誰も追いかけない。誰も止めようとしない。明らかに、ひったくりなのに。関わりたくないからか、唐突な事の所為で動けないのか。
「ふざけんじゃないわよっ!」
 我慢――なんて無理。

 私は【超脚力】の能力を発動する。
 さっきまであった、また警察にご厄介になるのかという不安なんて消えた。だって、バイクに乗ったひったくりなんて危険すぎて見過ごせない。次は誰かが大怪我するかもしれないし、下手したら子供が事故に会うかもしれないのだ。学校の先生にはなれないかもしれないけれど、でもだからって子供の安全を守りたくないわけじゃないし、間違った事をしていいわけではない。
 私は結構離されてしまったバイクを追いかける為、スタンディングスタートをする。【超脚力】の能力はあるが、それは足の脚力を上げるだけで、持久力が上がるわけではない。
 なので、いつまでも追いかけっこが続かないように、私は全力で走った。
「待ちなさいよっ!!」
 徐々に、徐々にバイクとの距離をを縮め、バイクのナンバーがみえるぐらい近づいた。
 バイクに乗った男も私の存在に気が付いたようで、ちらりと後ろを振り返った後、スピードを上げる。人が待ちなさって言っているのに、スピードを上げるなんて……。
 ブチッと私の繕いだらけの切れやすい堪忍袋の緒が切れる。大人しく止まったなら、そのまま警察に引き渡すだけだったけど、もう許さない。

「スピード違反はダメ、ゼッタイッ!!」
 私はそのまま【超脚力】の能力をフル発動させて、バイクに向かって飛び蹴りをくらわせた。勿論バイクなんてバランスの悪いものに乗っていた男は、そのまま横転し、地面に転がった。
「聞こえなかったの? 私は待ちなさいと言ったのよ?」
「ひっ」
 スピードを上げていたから、バイクで転倒すれば脳震盪ぐらい起こしたかもと思ったが、一応意識はあるようだ。そして、そんな男は化け物でも見たかのような悲鳴を上げる。本当に、失礼極まりない。
「ひったくりは、窃盗で、犯罪なの。しかもこんな人が多いところでバイクを走らせるなんてどうかしているわ。子供が轢かれたらどうするの」
 まあ、こんな人通りの多いところで能力を発動した私も私だけど。通行人が、見てみぬふりをして、移動するのが分かる。……そりゃ、こんな事に巻き込まれたくはないか。
 ひったくりにあったお姉さんが、この男にひったくられたとちゃんと警察で言ってくれないと、私が暴行したとして警察からのお小言が増えそうだ。証言があっても、やりすぎと言われそうだけど。

「本当だよな。バイクで窃盗とか、超危ないし」
 私が倒れた男と話していると、不意に少年が声をかけてきた。
「というわけで、お兄さんのバイクは、ちょっと破壊しておくな」
 そう少年が言うと、唐突にバイクがカシャンと音をたてて真っ二つになった。まるで、鋭い刃物で切られたかのように。でも男の子は刃物なんて取り出していないし、そもそも普通の力で切れるものでもない。
「俺は【風使い】の能力者で、逃げようとしたらこうなるからよろしく」
 ……【風使い】という事は、Aクラスなのね。
 私の能力は戦闘に特化していて危険だと思っていたけれど、間近でAクラスの能力を見ると、私のなんて可愛らしいものに感じる。もしもこの能力を人に向けたら、簡単に殺せてしまいそうだ。しかも風だから距離なんてほぼ関係ない。
 たぶん今回のバイクを真っ二つにしたのは、男の闘争心をそぐために行ったのだとは分かるが、私ですらバイクの切り口を見るとゾクリとする。
「これがひったくられたバックか。中身大丈夫かな?」
 しかし少年はそんな脅しをしたとは思えないほど、呑気な様子だ。バックを拾い上げマジマジと確認した後、私の方を向いた。
「お姉さん」
「な、何よ」
 Aクラスという事は、もしかしたら私が今向かっている最中の【組織】と関係がある人物かもしれない。こんな子供にも文句を言われるのだろうかと、身構える。勿論能力の差は今の一瞬で見せつけられてしまったから、子供だからといって刃向う気はないけれど。警察に引き渡されるなら、大人しく引き渡されよう。

「正義の味方みたいでカッコイイな。俺、スゲー感動した」

 そう言って、初めて私がやった事を真正面から褒められた。
 驚きのほうが大きくて思考が止まる。でも私がやっているのが間違っていないと肯定してもらえたことに嬉しさが後から湧きあがった。
 少年はあたかも普通の感想を述べただけのようだけど、なんだか泣きそうだ。今まで眉を顰められるしかなかったから。……勿論泣いたりなんてしないけれど。

 そしてこれが私と、佐久間のファーストコンタクトであり、私が恋などという、とんでもないものに落ちた瞬間でもあった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ