死にたくても死ねない!?(7/43)縦書き表示RDF


書き忘れましたが、この小説の時間軸は高一の二学期…いわゆる今頃に合わせています。 できれば、それを頭に入れて読んでいただけると有難いです。
死にたくても死ねない!?
作:夷 神酒



SUICIDE6〜一緒にいる人はちゃんと選ぼう〜






時は、一定の速度で進む一方通行の一本道である。









―――――――――――――――











「はぁ…」

「真慈もやっちゃったねぇ」

「まぁ、殺人犯にならなかっただけでもマシだぜ。てか、あの威力で人を殺さなかった真慈はスゲーよ」


「お前等っ……はぁ…」



…今、俺と谷…麻依子と亮佑は帰り道が同じ(亮佑は途中まで)だから一緒に帰ってるわけで…俺は帰りながら二人に慰められてた。












――俺が屋上を去った後、あの騒ぎは生徒達によってますます悪化。
即刻俺は呼び出しを受けた。
俺は両親がいないため、代わりに担任の浅尾が監視不行き届きで怒られてた。
で、結局俺は『器物破損』と『傷害』ってことで一週間の自宅謹慎になった。

本当は一ヵ月以上の監視者付き謹慎になってもおかしくないらしい。
だけど、『自殺しようとしたのを止めた』という多数の目撃証言と、友好関係にある校長のおかげで一週間になった。

校長よ、俺はお前がズラだという秘密を、誰にも言わずに墓まで持っててやるよ。



あと、俺が二つのフェンスごと吹き飛ばした男(後で二年だと判明)は、肋骨三本にひびが入っただけですんだらしい。

慰謝料でも求められるかと思ったら、逆に両親が自殺を止めてくれたってことで感謝していた。――









「でさ、屋上にいた女の人って誰だったの?」

「さぁ? キレてたからよく分かんねぇ」


別に他人に興味のない俺は、特にキレた時は余程印象的な人じゃないとその時いた人を記憶しない。
実際、その場に女が一人いたのは確かだけど、なんかムカつく奴だったとしか覚えてないのだ。






「それよりも、フェンスをあれだけにするてことは相当な破壊力だぜ? どうやって殺さなかったんだ?」

亮佑は、俺を慰めるよりそっちの方に興味があるらしい。

まぁ実際、『車が衝突したような跡』と言われたフェンスを見れば、その威力を食らった人間が生きているほうが不思議に思うだろう。


そのタネを知ってるのは俺…あと、近くにいた浅尾ぐらいだ。



「…バケツを使ったんだ」

「「バケツゥ?」」

おいおい、麻依子も興味があるのかよ。
…まあ、いいか。


「俺はあの時、朝の濃硫酸事件の時のバケツを持ってた。
たまたま、そのバケツは濃硫酸でも溶けないような素材出来てて、その素材が柔軟性が高かいものだったんだ。
そして、そのバケツをタイミングよく俺の右蹴りと男の腹の間に入れて、クッション代わりにして衝撃を減らしてみたんだ。
でも、フェンスを壊すような衝撃には代わりなかったから、あの男もかなり吹っ飛んだけどな」


今回のことで、物事は計算通りにいかないってわかったよ。
まぁ、死ななかっただけでも許してほしい。



「「………」」

「ん? どうした二人共黙って?」

そんなに凝視されると怖いぞオイ。


「いや、元々人間っぽくないけど、昔より計算高くなったと思ったからよ」
「そうだよ、昔から人間らしくないけど、前の真慈ならキレたら容赦なく暴れちゃうからね」

ったくコイツ等、俺をなんだと思ってやがる…



「……俺だって成長してんだ。死ぬ前に殺人犯っていう汚点は残したくない」

「コラー! 死ぬ前とか言わないの!」









――二人が言う昔っていうのは、俺があるチームにいた時のことだ。

…約三年前、不良や族が戸野周辺にはびこり始めたと同時期に、あるチームが出来上がった。


名は『R‐ラグナロク』


そして、そのチームの主力部隊が未成年、それも中学生の亮佑、俺、洋だった。


俺達のチームは、戸野周辺の族もヤクザも他のチームも、全てを薙ぎ倒した。

チームは今でも周辺の治安維持のために役に立ってる。
けど、俺達はいろんな理由で去年のうちに脱退した。


亮佑は『真慈たちがいないとつまんないから』

俺は『面倒になったから』

洋は『ナンパの道を極めるために』


色々派手にやってたけど、あのチームで俺達はちょっとはまともな人間になった気がする。――





「亮佑は脱退してからも変わってないけどな」

「当たり前! 今日も先輩三人と遊んできたぜ!」

親指を立てて自慢気に言う亮佑。

亮佑の遊ぶは、世間一般で言う喧嘩のことだ。

元々、三人の中で一番好戦的な性格だった亮佑は、今でも戸野高と周辺高校の不良と『遊んでる』らしい。






…たしか、こいつが戸野高に来た理由は『周辺で一番不良が多いから』だそうだ。

あと、洋は『カワイ子ちゃんがいっぱいいるから』

ついでに俺は、中卒の予定だったのがチームのリーダーにバレて、強制的にここに進学させられた。



……そういえば…

「谷…麻依子はなんで戸野高にしたんだ?」

間違って名字で呼びそうになるだけで、スンゲー涙目+上目遣いで見ないでほしい。


「ん〜。アタシは真慈を見張るためかな?」

「ヲイヲイ、疑問形で言われても困る。てか、そこまで俺の自殺を止めたいか?」


実際に、今まで麻依子には何度も自殺を止められた(もちろん鉄拳で)。


「それもあるけど…虫がつかないようにかな?」

「イヤイヤ、お前は言葉に『?』をつけないと喋れなくなる病気か? てか、虫がつくって…俺は樹液か?」

酷い扱いだなオイ。
それも二人でコソコソ話だしたし。


::::

「…麻依子、真慈なら心配ない。コイツは昔から鈍感だから、普通の女ならコイツの言葉に一瞬にして氷殺されるぜ」
「そうじゃなきゃこの数ヶ月で11人も撃墜してないよね…自覚ナシで」
「なんせ真慈は鈍感大魔王だから」
「そうだね、キング・オブ・鈍感だもんね」


::::


「……」

話の内容は聞こえないけど…なんかバカにされてる気がする。



「んじゃ、真慈の機嫌も悪くなったみたいだし、俺はココで失礼するぜ!」
そういって亮佑は、朝のように砂埃をあげて走っていった。





「………」
「………」
「………帰ろっか?」
「………あぁ」

なんとなく去っていく亮佑を見ていた俺達は、気を取り直して帰ることにした。


















→→→→→→→→→→→→→→→






あれからごく普通に自宅に帰った俺は、リビングにあるソファーに座った。






――この家は個性的な両親が建てたため、奇妙な形をしている。

今頃だけど、一様説明しとこう。


見た目は二階建の家だけど、実は地下一階があり、合計三階建ての家である。


地下には三つの部屋があり、一つは開かずの部屋、一つは仮の寝室になっている。
そして、もう一つの部屋はワインやら焼酎が二千本ぐらいある酒蔵になっている。


一階は、普通に風呂やトイレがある。
そして、一番の特徴は二十畳以上ある巨大な吹き抜けリビングの中心には、入り口に対して垂直なバーカウンター風(もちろんバー機能あり)の大きなカウンターキッチンがある。

ついでに、今俺がいるバーの前方がテレビやソファーがある接客用リビング(日曜日の首吊り現場)、後方がテーブルなどがある食事用リビングだったりする。


二階は、リビングの吹き抜け以外に大きめなベランダ(椅子が吹っ飛んだ場所)と四室があり、それぞれ自室、書斎、空室、…元両親の部屋がある。


ついでに、二年前に暇つぶしで全室バリアフリーした。

もし売りに出したら、不動産屋でも扱いづらい物件である。――





「この頃説明ばっかりで疲れてるだろ?」
「いや、お前に振り回されるほうが疲れる」

いつの間にか、俺の後ろに黒ヘルが立っていた。


「いや、後ろから声かけられたんだから驚こうぜ?」
「家に入った瞬間から、なんとなく分かってたから」

ずっと後ろから何かを感じてたけど、全力で無視してた。

「霊感ナイのに?」
「お前が分かんないことを、俺に聞かれても困る」

俺は三日前までは、そんな世界に全く関係なかったんだから、知ってるわけない。









まぁ、今日でそんなことを気にしなくてすむ。

「んじゃ黒ヘル、早く次の自殺方法をプロデュースしてくれ。なるべく簡単なのにしてくれよ」

麻依子と亮佑には悪いが、予想を裏切らせてもらう。
なんせ、こっちにはバカでウザくて頼りないけど、いちよう自殺のプロがついてる(憑いてる?)んだ。

シンジ・スゼンヤ、逝きまーす!!












「………あっゴメン、ムリだ」
「なんだとゴルァァァァアアアアアア!!」
「アベシッ!!」


俺は座ったまま後ろの黒ヘル掴み、そのまま掴んだ腕を振り下ろし、黒ヘルを『午後は○○』ぐらいおもいっきり目の前の床に叩きつけた。


「なにが『あっゴメン、ムリだ』だこの野郎! 自殺屋が自殺させられなくてどうすんだよ! 戦争屋が戦争やめるのとはわけが違うぞオラァ!!」

仰向けになった黒ヘルに四の字固めをかける。
タップなんて関係ねぇ!!


「ギブギブギブ偽不ギブ!! ちゃんと話すから! カツ丼なくても全部ゲロするから! 折れる骨が折れる心が折れる! 骨がムンク並に悲鳴を上げてる! 今ミシッていってるよ!?」


確かに『メキッ』って不気味な音が聞こえるような聞こえないような…

まあ、これぐらいで許してやろう。


「じゃあ、尋問を開始する。なんで、ムリなんだ?」

力は緩めたけど、四の字固めのまま黒ヘルに聞く。


「次ふざけたら絶対に骨が逝くな………真面目に答えよう」

もしも何もしてなかったら、ふざけるつもりだったのか?
…まぁいい。


「実は、あの自殺儀式は特殊な対価がないと出来ないんだ。
その対価…通称『聖翠せいすい』は、俺達自殺屋がお客から代金代わりに貰うもので、その客が死んだ時に流される清らかな涙の量によって決まる。
昨日の『皇狩』シリーズは自殺儀式の中でも手軽で、最低ランクの『パイプ椅子タイプ』は1人分、最高ランクの『王家の椅子タイプ』でも20人分ぐらいの聖翠で出来る。
だけど、真慈は『皇狩』シリーズじゃ死ねない。だから、他の儀式を発動する必要があるんだけど、そのためには何十人、何百人分もの聖翠が必要になるんだよ。
今のシンジは『風俗に来たのに手持ちの金が足りなくて、〇番まで出来ない人』と一緒…だからマジで折れるってェェェエエエッ!」

十八禁的な例えには制裁が必要だけど、なんとなく分かった。


「簡単に言えば、俺には儀式に必要な聖翠が足りないってことだな?」
「そ、そういうことだ……アハハ♪ なんだか足の感覚がなくなってるような…」

あまりの痛みでラリッてきた黒ヘルはフルパワーで無視。



…でも、なんとなく聖翠が足りない理由が分かる気がする。
俺が死んで一番悲しむはずの両親は先にあの世に行ってる。
親戚だって、親の残した財産目当てで近づいて来たような奴らばっかりだったから、清い涙なんて流すわけないない。

…亮佑と洋、R‐ラグナロクの奴らは泣くわけない。
逆にマジで怒って、死体の俺をミンチにするだろ。

泣いてくれるのは…隣だからってよく世話してくれる麻由さんと、まともなダチの麻依子とで2人分ぐらいになってくれれば、今の俺には十分だろ。

人の死、それも自殺者を本気で泣いてくれる人間なんて、肉親か恋人、親友のどれかでしかないのだから。















「…ついでに真慈、お前の聖翠は23人分だ」
「まあ、せいぜいそんな…はぁ!?」

23人も俺の死を嘆く人がいるって言うのか?


「…実際は137人。男は122人…我慢強い奴が多いな。ほんの少ししか流さないから合わせても四、五人分にしかならない。残りの女も数人分にしかならない…だけど、名前は分からないけど一人が二、三人分。昨日来た麻依子ちゃんは何人分も泣いてくれるぜ」

「そ、そんな…」
我慢強い男…チームの野郎共も泣くのか?
それに麻依子も…
…でも、二、三人分って誰だよ。



「真慈…周りはお前が思ってるより、お前をちゃんと見てるんだ。…どうだ? もしかして死ぬ気がなくなったか?」
「…くだらないことを言うな、少し驚いただけだ」


悲しむ人間がいたとしても、たったそれだけ。
そんな一時的な感情に…俺の願望が曲げられることはない。



人は自分自身の欲望に忠実なのだから。
だから俺は自分の欲望…『死ぬこと』に忠実になるだけだ。



そのためには…

「…で、その聖翠を集めるにはどうすればいい?」

出来るなら、なるべく早くしたいからな。



「…まぁいい。簡単なことだ、お前が死んだ時本気で泣く=お前を必要としてくれる人を増やせばいい」
「……無理難題だな」

俺を必要とする人…そんなの元々いねぇのに、そう簡単に出来るかっつうの。



「なんとかなるさ。人は誰かとかかわって生きてんだからよ。小学生の時にならわなかったか?」

「……とっくの昔に忘れた」


てか、自殺願望者に言うセリフじゃねぇだろ。



「んじゃ、これから頑張って貰うために、俺からプレゼントをあげよう♪」
「ハァ?」

いきなり声のトーンを上げて喋りだした黒ヘル。
プレゼントってなんだ?


「カモ〜ン♪ 幻羅空鶴げんらくうかく

なにかを呼んだ瞬間、黒ヘルの手が光りだして、光は見慣れた形を作り出す…

「って、いつもの鶴嘴じゃねぇか!!」
その鶴嘴に名前ついてたのかよ!?


「細かいことは気にしなぁ〜い。んじゃ行くよ♪」
そのままその鶴嘴を振り上げる黒ヘル。


「我が名の下、この者に自ら呼び込む死から逃れる方法すべを与えよ…」
みるみる白かった鶴嘴が、黒く滑らかな色に変わる。


「って、ちょっと待った!! 俺を殺す気か!?」

この野郎、確実に俺を鶴嘴の餌食にしようとしてるよ!!
逃げようとしても、四の字固めを利用されて動けな…



「問答無用♪ 因果封印いんがふういん!!」






容赦なく振り下ろされる鶴嘴。
その、鋭く黒光するものが俺の胸に深々と突き刺さる。
その瞬…間、目の前…がひか…りに包まれ…お…れは………………












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