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死にたくても死ねない!?
作:夷 神酒



SUICIDE24〜天下に還りし死に神〜








恋とは恐ろしいものである








―――――――――――――――








暗い闇の中、身体の感じるがままに先へと進む。
数え切れぬ戦火に燃やされた心が、その場所を求める
そこは自分が帰るべき場所……



『ソ〇モンよ…私は帰ってきた!!』






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霧のかかる意識の中、俺は無理矢理目を開く。


クソ黒ヘルめ、逃げやがって…
てか、なんだったんだあれは。
巨大な機体に乗ってるポニーテールの渋いオッサンが見えた…
てか、ソ〇モンってドコだよソ〇モンって。


そんな自問自答をしているうちに、意識の霧が少しずつ晴れてくる。

状況を確認すると…

1、俺は小さな子供を抱き締めて仰向けに倒れている。
2、この周りには俺と少女の二人だけ。
3、どうやら俺は落下した時間にちゃんと戻ったようだ。
4、ちょっとだけ体が痛むのは、仕方ないこととする。
5、てか、頭から真っ赤な血がドクドク…いや、ドバドバ出てるわぁ。












……よし、俺は問題ないな。

それよりも俺の腕の中でガクガク震えている少女の方が問題だ。


「おい、お嬢ちゃん。大丈夫か?」
「ヒッ……生き…てる?」

俺の声に反応した少女は、顔を上げて俺を驚き60%、恐怖40%の顔で見る。
そんな驚かなくても恐がらなくてもよくねぇか?


「あぁ、お嬢ちゃんも生きてるし俺も生きてるぞ。それより痛い所はないか?」
「…だ…いじょ…うぶ……………………ヒッグ…」
「ったく、…あんま泣くなよ」


俺には泣く人に対する対処法は分からん(麻依子を除く)。



「二人とも大丈夫なの!?」


急いで駆け降りてきたらしい浅尾が、息を切らしながらこっちに近づいてくる。


「あぁ、二人とも無事だ」
「「ドコが!?」」


浅尾+いきなり泣き止んだ女の子に、おもいっきりツッコまれた。

「俺もこの子も生きてる。イコールおーるおーけー」
「お兄ちゃん。せっかくの綺麗な白髪が血で真っ赤だよ?」
「真紀ちゃん…だっけか? 白髪のことはいじらないでくれないか? 結構コンプレックスなんだ」
「大切なのはそこじゃないよ?」

なんか、泣き止んだら口が達者になったなこのお嬢。
……浅尾の娘というのも頷ける。


「そんなことより!! 早く保健室…いや、救急車を!」


浅尾はだいぶ焦った様子で携帯を取り出し、病院への無料タクシーとして使われてしまう車を呼び出そうとする。
病院嫌いだし……そうなるとやっかいだな。



「ゴメン。ちょっとどいてくれないか?」
「あっ、うん」

俺は俺の上に乗った少女にどいてもらってから、スッと立ち上がって…


「ハイ、ケータイ没収♪」
「なっ!? なにするの!! 早く返しなさい!!」
「センセーがこれから二十四時間あらゆる電話の1と9を押さずに、病院の半径一キロ以内に入らないって、その命と一千香港ドルを賭けてくれるならいいですよ?」
「そんなバカなこと言ってないで返しなさい!!」


ったく、冗談の通じない人だなぁ。
………しゃあないなぁ。



「真紀ちゃん。君のママが救急車とかを呼ばないように見張っててくれないかな?」
「なんで私なの? お兄ちゃんは私を助けてくれたけど、私はママの味方だよ?」


どんなことがあっても親の味方……いい子だなぁ。
でも……


「俺は君のママの敵じゃないし悪いことはしない。それに……」
「それに?」

俺はその穢れのないガラス玉のように透き通った瞳を見つめる。


「…君の魂は本当に綺麗だ。そんな君を俺は信じたいんだ」


瞳の見れば分かる。
どんなに魂を偽りで塗り固められようが、純粋な魂は瞳を輝かせる。
…自分の言ったことに少し恥ずかしくなり、俺は少しはにかんで誤魔化す。

そして俺の顔を見ていた少女は一瞬固まって……


ボンッ


頭から爆発音。
その頭からは蒸気らしき白煙が上がっている。
大丈夫か……?



「…っ///」


そして少女は急に俯いてしまった。
…俺の笑顔って目を背けたくなるものなのか?
もしそうだったら、ショックで一生立ち直れないぞ?
さっそく生きることに挫折するぞ?



「……タイ」
「ん?」

俯いたまま喋る少女の声はうまく聞き取れない。

「鯛? 隊? それともThailand?」
「…ケータイ返して!」
「あ、ハイハイ」

取りあえず浅尾から奪った携帯を、少女が突き出してきたその手に乗せる。





『テメェら!! これから騎馬戦が始まるZE! 死亡覚悟で合戦場グランドに来いやッ!!』



話の途中で、開会式の悪乗り放送者の声が学校中に響き渡る。



「んじゃ、頼んだよ真紀ちゃん」

俺は一暴れするために、二人に背をむけ急いでグラウンドに…

「お兄ちゃん! 真紀だよ!」
「へ?」

後ろから聞こえた予想外の声に、俺は首だけ振り返る。
そこには顔を真っ赤に染めた少女が俺を見つめていた。


「ちゃん付けはイヤ。真紀って呼んで」

あぁ、ちゃん付けが恥ずかしかったから怒ってるのか。
なら、顔が赤いのも納得だ。


「…ゴメンゴメン、分かったよ。真紀、あとは頼んだ」



俺は今度こそ、一暴れするためにグラウンドに向かって返事も聞かずに駆け出した。












―――――――――――――――









私は二人のやりとりをずっと見ていた。

話は一部聞こえなかったけど、真紀に携帯を預けた須千家君は、グラウンドに走り去って行った。
真紀は須千家君が庇ってくれて無傷だけど、彼は目視しただけでもかなりの傷を負っていた。
早く救急車を呼ばないと…



「真紀。ママに携帯返して?」

私は真紀の背中から声をかける。
私の声に反応した真紀は、こっちに身体ごと振り返って…


「なにに使うの?」
「もちろん病院に電話するのよ」
「…じゃぁダメ〜」
「えっ!?」


今までこの子を育ててきた中で、初めて反抗された…
反抗期かしら……いいえ、まだ反抗期には早い。


「真紀? ママの言うことが聞けないの?」
「ん〜。私はママの味方だけど……やっぱりダメ」
「それは彼が命の恩人だから? だったら彼のためにも……」
「ううん。違うよ」


助けてくれたからじゃないの?
……二人にはさっきまで面識はなかったはず。
他に私よりも彼を優先する理由は……



「……ママ、あのお兄ちゃんの下の名前教えて」
「えっ、須千家君は……確か真慈だけど」
「ふ〜ん。シンお兄ちゃんかぁ……」

そう言って惚けた顔をする真紀。
その顔はまるで…



「まさか真紀! あなた須千家君のこと…」
「ふふふっ…シンお兄ちゃんって年下好きかなぁ?」


真紀は両手を胸の前に持っていき、どこか遠くをキラキラした瞳で見ている。
これは完全に『あれ』…
私の目の前の愛娘は、教師生活中に何度も見た『恋する女の目』になっていた。
相手は…言うまでもないだろう。


でも、今のうちに……

「…ダメ! 約束守ってシンお兄ちゃんにほめてもらうんだから!」
「うっ」


惚けてる間に携帯を取り返そうとしたら、初めて娘に凄く頑固な態度をとられた。



「ゴメンね? ママは大好きだけど、シンお兄ちゃんも大好きなんだ」
「………」

目をウルウルさせて娘に迫られた私は、生徒の怪我よりも娘の願いを叶えることを優先するしかなかった。












―――――――――――――――









取り合えず、俺はグラウンドに集まった自分達の仲間の近くに駆け寄る。
そして、すれ違う人達全員が俺を見て驚愕の顔を見せる。

「あっ真慈遅い……って、お前髪染めた?」
「そうそう、この短時間で血のように真っ赤な髪に…」
「ってそれ本物の血じゃない!! なにやってるのよ!!」

亮佑と話してると、麻依子が大声を上げながら、どこからか取り出した医療道具で俺の傷を神業で治療し始める。


「もう、またムチャして…治療する方の身になってよ!」
「すまないな。ちょっと人助けをしたらちょっと屋上からダイブして、主婦と死闘を繰り広げてたらちょっと怪我した」
「いや、意味分かんないから。言い訳なら、もう少しまともなこと言いなよ」


いちよう本当のことなんだけどな…
いくら言っても信じてもらえないだろう。


「その怪我の様子だと後頭部を打ってるけど…平然としてる。ゾンビにでもなったか?」
「…頭腐ってんじゃねぇのか〇泉洋?」
「いや、そのテンパ男の名前はいろんな意味でダメだろ! そして俺の名字は大西だし、『洋』の読み方は『ヨウ』じゃなくて『ヒロシ』だ!!」


……こいつはいろんな意味でスルーしとく。


「真慈、無理するな。その怪我じゃ騎馬戦に出るのは難しいんじゃないのか?」
「…シン…見てるだけで痛い…休んだほうがいい…」

軽く騒いでいると、麗花先輩が小夜の車椅子を押して来て、二人とも心配そうな表情で俺を見る。

そんなに心配しなくてもねぇ……そろそろ終わってるだろうし。


「…麻依子OKか?」
「…はい、応急処置は終わったから十分行ける。だけど、今日帰ったらちゃんと私の診察受けなさいよ」
「了解ッと……これで俺は心配しなくても大丈夫だ」


俺の主治医様様がOKサインを出してくれた。
それに…


「『全員参加』。…それがこの体育祭のルールだろ?」
「……ふっ。生徒会長たる私がすっかりルールを忘れていたようだ」

会長は俺の言葉の意味が分かったようだ。
そして俺は、軽く前かがみになって小夜と目線の高さを合わせる。

「俺は大丈夫だから。一緒に最後まで楽しもう」
「………ぅん」



小夜も理解完了だな。
後は……

小夜から離れ、俺は戦友の方を向く。
その二人は呆れたように笑みを浮かべていた。


「おっと、僕達には説明無用だよ」
「一緒にドンパチ楽しもうぜ!」

亮佑と洋は、俺の言いたい言葉は百も承知らしい。
ったく、流石はフェルヨルってことか。


俺は今一度、呼吸を整え俺は心からの言葉を紡ぐ。
紡ぐ…いや、そんな綺麗なものじゃねぇ。
俺は欲望にまみれた言葉を吐き出す。





「テメェ等だけで楽しむな……俺も暴れさせやがれ!」






―――――――――――――――









騎馬戦の対戦結果‐優勝D組
騎馬戦を終えた人の証言



1年A組‐田中君
「…あっ……えっ……赤と白の髪? ……その話はヤメてぇぇええええ!!!」


3年G組‐田所さん
「えっ騎馬戦……須千家君ね……ポッ」


1年D組‐胃潰瘍君
「だ・か・ら!! 僕の名前は大西洋だ!」


運動部の方々
「ぜひあの三人を我が柔道部に!!」
「いや、ぜひ彼等はバスケ部に!!」
「あのパワーはラグビー部にいてこそ生かされる!!」
「「「いや、彼等は俺達の部に…」」」………etc


2年D組‐戸野生徒会長
「この勝利は全員の協力なしにはなかった。一緒に戦えた仲間達に私は心から感謝する」


1年D組‐笠井さん
「……………………………………………シン…かっこよかった…」

戸野高校理事長‐戸野彩華
「みんなよく頑張ってくれてよかったわ………結果は分かり切ってたけど」








後日情報

負傷者‐94名
死者‐辛うじて0名
(D組と対戦したA・C・F組の負傷者が91名)



こうして、傍迷惑な体育祭は幕を閉じた。
















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