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第1章
 ラクロス・ラスティスはその時、パリのリュクサンブール公園にいた。
 パリの左岸、サンジェルマンとカルチエ・ラタンの間に広がる美しい公園――いや、庭園と呼んだほうが正しいようにラスには思える――は、マリー・ド・メディシス王妃が宮殿として使っていたリュクサンブール宮のある場所である。
 ここは、ラスにとってある意味とても思い出深い場所だった。
 今彼女はその公園の一角から、短期間であるとはいえ、かつて住んでいたことのあるアパルトマンを通りの向こう側に見、そこでメロと色々な話をしたことを思いだす……。
 考えてみたら、彼とは最初から奇妙な縁だった。
 初めてイラクの土産物店で会った時には、互いに相手が何者であるかを知らず、メロは流暢なアラビア語で、ラスが買おうとしていたスカーフやネックレスなどを値切ってくれたのだ。その後、二度目に再会した時にはある意味敵同士で――ちょうどラスはカイの死を知らされて、とてもショックを受けている時だった。
 そしてその時のことを今思い返してみても、ラスはこう思ってしまう。
(自分はもしかしてとても、浮気な女ではないのだろうか?)、と……。
 カイを失ったショックから、一時的に混乱してメロと寝てしまい、そんな自分に自己嫌悪を覚えた。けれど、今もその嫌悪感から完全に脱しきれていないように思えることが、ラスをここ、リュクサンブール公園へと向かわせていたのだ。
 実をいうと、ラスは今パリでモデルの仕事をしていた。
 正確にはモデルとしてスカウトされたのは、ルーマニアの首都、ブカレストの街にいた時のことで――ラスは他の仲間たちがみな、それぞれの夢に向かって羽ばたこうとしている中で、自分だけ何をしていいかわからず、生まれ故郷を少しの間旅して歩いていたのだ。
 かつて十歳の時に母親が暗殺者の手によって射殺されたショックから、超能力に目覚めたラスだったが、彼女はその自分の過去を直視するのが怖くて、ずっとルーマニアという国を避けてきた。けれど、あれから九年もの時が過ぎ、自分自身の火炎能力によって消失した屋敷の跡を訪ねてみると――そこには新しい家屋が建っており、子供たちが庭のブランコで遊んでいるところだった。
 ラスは可愛らしい金の巻き毛の女の子ふたりが、仲良くブランコに乗りながら笑う声を聞いて、あれから随分時が流れたのだと、深い感慨を覚えずにはいられない。今から十五年以上も昔の話になるが、ラスの父親は民主化運動の立役者のひとりとして政府の人間の手により暗殺されていた。ラスはまだ物心もついていない頃だったから、父親の記憶というものはまるでないが――母からしょっちゅう話を聞いて育ったせいもあり、まるで父が今も生きているかのような錯覚を覚えることが、よくあったものだった。
 そう――ラスの中には父と母から受けた、革命家の熱い情熱の血が流れている。
 時々ラスは、自分が無鉄砲なことをしたり、向こう見ずなことに手を染めたりするのは、この自分の心の奥深くに眠る、両親から受け継いだ革命家の血のせいではないかと思うことがある。
 ラスは、小さな女の子ふたりが当たり前のように<自由>を今日享受できているのは、自分の父や母や多くの犠牲があって、その上に成り立っているということを思い――自分もまた他の孤児院の仲間たちのように「何か」すべきだとの、強い義務感のようなものに駆り立てられていた。
 セスは当然のように<殺し屋ギルド>の総帥としての地位に留まり、二アとともにある意味裏社会の歴史を動かしていたし、ラファは十歳というあの歳で飛び級をしてハーバード大学へ入学、ボーは音楽の勉強をするためにドイツの音楽大学を受験する予定であり、ルーは数学の才能によってオックスフォード大学へ推薦入学、エヴァは赤十字の活動でアフリカへ飛んでいた……そんなふうにして、かつての孤児院の仲間たちはある意味散り散りとなり、唯一モーヴだけはかつてと変わらず隠遁的な生活を送っているとはいうものの――ラスは他の仲間たち全員が、それぞれ<一番したいと思う夢>に向かっているの対し、自分だけが唯一「それ」を持っていないということに悩んでいた。
 思えばずっと避けてきた故郷ルーマニアへ旅にでたのもそのことが原因であり、ラスは言うなれば自分自身を見つめる旅、自分探しの旅をするために、元自分の生家のあった場所へと里帰りしていたのである。
 そしてラスが、ブカレストの中心部にあるゴールデンチューリップというホテルへ戻る前に立ち寄ったレストラン――そこでこれからのラスの一生を左右する、大きな出来ごとが起きたのだった。
 いや、ラスはその時、自分が食事をしている席に馴れ馴れしくも同席しようとした男に、これっぱかりも好感など抱かなかったし、その金髪の若い男が――それも、見るからに小洒落ていて、自己中心そのものに見える上、香水の匂いまで漂わせている男が――「君、モデルになる気はない?」などと言っても、そんな言葉を頭から信用する気になどなれなかった。
「そうやっていつも、女の子を口説いてるってわけ?」
 軽く肩を竦めつつそう答え、ラスはルーマニア料理のサルマーレやママリガなどを食べていた。小さな頃、母がよく作ってくれた、昔懐かしい味だった。
「まあ、大抵の常識のある女の子は、みんなそう言うね。そして俺のことをぽん引きを見るような、うさんくさい目で見るんだ……実をいうと俺は、<ディエラ・マリス>っていうモデルエージェンシーのスカウトを担当してるんだよ。正確には東欧部門のスカウト担当。ディエラ・マリスの支社は世界中にあちこちあるんだけど、俺は自分のたっての希望で、東欧部門を選ぶことにしたんだよ。なんでかっていうとね、アメリカとか西ヨーロッパとかブラジルとかはさ――なんかこう、すっかり手垢がついてるっていう感じがするんだな。でも東欧の女の子には神秘的なところがまだ残ってるんだよ……たぶんルーマニアの女性はみんな、吸血鬼の末裔の血が流れてるんだろうな。そして俺は自分が血を吸うか吸われるかしてみたい女の子に声をかけてるってわけ。俺はいつもここ、ブカレストにいるってわけじゃなくて、明日にはプラハに発たなくちゃならないんでね、もしその気になったらパリ本社の<ディエラ・マリス>のほうに電話してくれ。そしたらすぐに君の携帯に折り返し俺のほうから電話させてもらうよ」
 そう言って男が差し出した名刺には、パリ屈指のモデルエージェンシー、<ディエラ・マリス>本社の住所や電話番号、他に彼の役職名と名前――ミッシェル・スラッダート――などが書かれていた。
 ラスは果たして本気にしていいものかどうかと思いつつも、一応名刺を受けとり、男がコーヒーだけ飲んで去っていく後ろ姿を見守った……シャネルのエゴイストの香りが鼻腔を微かにくすぐり、ラスは思わず顔をしかめたが、それでいて彼――ミッシェルにはどこか、人の気を惹くところがあるとも思った。
 何より、その時の対応があまりしつこくなかったということが、ラスにとっては決定打となり、ラスはその後一週間としないうちに、パリにある<ディエラ・マリス>本社を訪ねていた。
 いや、ラスにしても本気でパリでモデルになろうとか、いずれヴォーグの表紙を自分のこの顔で飾ってみせる!とか、高い夢や野心といったものを持っていたわけではまったくない。
 ただラスは――他のみんなが<これ!>と思える夢を持っているのに対し、自分には何もないことが不甲斐なく感じられ、まず最初に差し伸ばされた可能性のひとつに飛びついてみようと思っただけのことだった。
 何よりミッシェルが口説き文句のひとつとして言った言葉が、ラスの脳裏を離れていかなかったという、そのせいでもある。
『君がもしモデルになったら、ルーマニアの他の女の子たちに夢を与えることになると思わない?ルーマニア出身のモデルの……えっと君、名前なんていうんだっけ?』(ここでラスは、しぶしぶ自分の本名を告げた)『ルーマニア出身のラクロス・ラスティス!!モデルとしての君が、女の子たちに与える影響といったら、きっと絶大なものがあるだろうな。彼女にやれたんだから、自分にだってきっとチャンスはある、そんなふうに夢を与えられる女の子が、たくさん増えるに違いないよ』
<夢>……その言葉を聞く時、ラスは微かに胸が痛むものを感じる。
 何故といって、ラスの一応恋人であるはずの男は、突然「F1ドライバーになる」とか言いだし、彼女を置いてアメリカまでプロになるためのドライバーテストを受けにいっていたからだ。
 特段メロから「おまえもついてこい」というようなことを言われることもなく、ただ自然と「俺は好きなようにやるからおまえも好きなようにやれ」と言うかの如く、メロはラスの目の前から去っていった。
(だったら、わたしだって……!!)
 ラスは最後に別れた時のメロの態度のことを思いだし、パリの<ディエラ・マリス>のお洒落な応接室で、社長のディエラ・マリス本人が姿を現すのを待っていた。セーヌ通りにある真珠のように光を反射して建つその大きなビルの受付に立った時――まさか元モデルのディエラ・マリスその人が、直接自分を面接しようなどとは、ラスは思いもしなかった。
 けれども、実にツンと取り澄まして、笑うために頬の筋肉を動かすなど、労力の無駄だと信じているような女性が電話を取り次ぐと(実際ラスは彼女の顔を見ていて、このまま門前払いを食うのではないかと感じた)、「社長自らお会いになるそうです」と、確かに彼女はアンドロイドのような声でそう答えのだった。
 その後ラスはビルの最上階にある、社長室の隣、その応接室に通されて、暫くしてもディエラ・マリスが姿を現さないのがわかると、壁にかかっているポートレイトを順番に見ていくことにした。
 ディエラ・マリスと言えば、彼女と同じ時代に肩を並べたモデルとしてジーン・シュリンプトンやパティ・ボイド、ツィッギー、シェリル・ティーグスなどの名前が上がる、六十年代に一大センセーションを巻き起こしたモデルのひとりである。彼女はヴォーグやハーパース・バザーなど、有名ファッション雑誌の表紙を何度も飾り、レブロンやマックスファクターといった大手化粧品会社の顔として長く活躍したことでも有名だった。もっともラスは、ディエラが数々の男と浮き名を流してはパパラッチに格好のネタを提供していたことまでは――あまりよく知らなかったけれど。
 ただ、普段ファッション雑誌などほとんど読まないラスでも、ディエラ・マリスをTVのコマーシャルで見かけたことは何度もあり、その女性が直接モデルの面接を行うだなんて……ラスは突然、自分が随分身のほど知らずの行動をとっているのではないかと不安に思えて仕方なかった。
「随分、お待たせしてしまったわね」
 応接室にディエラが姿を現した時、ラスは壁のポートレイトのひとつ――ディエラ・マリスというモデルを決定的に有名にした写真のうちの一枚を見つめているところだった。
 ディエラはビリヤード台の上に寝そべり、男を誘うような眼差しを、フォトグラファーのギュンター・ヴァグナーに投げている……その写真は言うなれば、ディエラが熱烈に愛しあっていたヴァグナーとの性的情熱が結晶した傑作であった。時は六十年代のことであり、ディエラのまわりのモデルやフォトグラファーでドラッグをやっていない者はひとりもいないというくらいの、激しい変革期にあった時代のことである。
(あの頃に比べたら)と、ディエラは今もよくそう思う。(現代なんて随分生ぬるくなったものよ。近ごろのモデルなんて甘やかされてちやほやされるだけの、スター性に欠けた子ばかりなんだから……言うなればまあ、どんぐりの背比べとでも言えばいいのかしらね。そんな中でわたしが欲しいのは、激しい情熱を内に秘めたような子なのよ。たとえば、マドンナが初めてニューヨークへ行った時、『神よりも有名になってみせる』と心に決めたっていうけど、そのくらいの野心と気概のある子が欲しいわ)
 ディエラは現在六十歳に近かったが、それでも大抵の人の目には四十七歳くらいにしか見えなかったであろう。高く結い上げた金茶の髪には、日本の箸の形をしたものが何本も突き刺さっており、和洋折衷といったデザインのドレスを着ている。
 ラスはディエラの持つ野心的オーラに圧倒されつつも、同時に彼女のドレスをとても趣味が良くて素敵だと感じていた。一度ラケルがラスとルーとエヴァに着物を着せてくれたことがあったのだけれど――あんなに難しい手順を踏まなくても、今ディエラの着ているドレスなら、簡単に日本の<和>のテイストをとり入れて、十分そのファッション性を楽しむことが出来るのだ。
「あなた、名前はなんていうの?」
 ディエラはラスに対して、無言の三十秒チェックを行ったあとで、彼女にそう聞いた。これはディエラにじっと見つめられた者であれば誰もが感じる印象なのだが――ラスもまた、アフリカのサバンナで女豹に睨まれたレイヨウか何かになったような気分だった。
 ディエラはアフリカ系のフランス人として、この業界で初めて成功した人間としてつとに有名である。ゆえに、彼女がこれまでどれだけの修羅場をモデル界でかいくぐって来たかについては、押して知るべしといったところかもしれない。アルジェリア人の父とフランス人の母との混血であり、肌は黒人というほど黒くはなく、彼女の恋人たちが“ココナッツクリームみたいだ”と称賛した美しさが、今も損なわれることなく保たれている。瞳の色は鳶色で、かつて彼女のことを愛人にしたイランの国王シャーが、彼女の美しい瞳と同じ色のオパールを贈ったという逸話は、ディエラ・マリスに纏わる伝説のひとつになっているほどだった。
「……ラクロス・ラスティスと言います」
 自分に初めて会った人間が、大抵の場合気圧されるのはディエラにとって日常茶飯事のことだったので、彼女は若き日の自分と同じ野心や情熱といったものをこの娘も内に秘めているのかどうか、そのか細い声を聞きながら注意深く探った。何しろ、ルーマニアのブカレストでスウカトされたというのに、ものの一週間も経たないうちにここパリまで飛んできたほどなのだ。もし仮にラスがこれからどんなに表面上は謙遜しようとも、そんな娘に「有名になりたい」と思う野心がないなどとは、ディエラには到底信じがたいことだった。
「ラクロス・ラスティスね……悪くないわ」
 ラスの容姿をあらゆる角度から眺め、ディエラは赤いマニキュアをした細い指を、考え深げに顎にあてていた。1億するブルガリの指輪が、その人差し指には輝いている。
「気に入ったわ、あなた。唯一気になるのは、モデルとしては背が少しばかり足りないことだけど――170cm?そう。ケイト・モスがデビューした時も、あの娘は170センチだったのよ。いいわ、大丈夫。わたしがあなたを、第二のケイト・モス……いいえ、それ以上のトップモデルとして必ず育てあげてみせるわ」
 ディエラの中ではこの時、ラクロス・ラスティスというトップモデルが、ヴォーグの表紙を飾り、またいくつものブランド、化粧品会社のCMに引っ張りだこにされるところが、目蓋の裏に見えるかのようだった。もちろん普段のディエラは、周囲の人間がよく知っているとおり――非常に辛口な人間である。そんな彼女の眼鏡にかなうモデル志願の少女や女性は極めて少なく、あるいは気に入った場合でも、顔の一部をデビュー前に整形するようすすめられたり、まずは髪型を変えてから出直しなさいと言われたりするのよくあることであった。
 ディエラにとって何よりも大切なのは、相手が会った瞬間に何がしかの強いインスピレーションやイマジネーションを与えられる人間であるかどうか、またすぐにサクセス・ストーリーや成功への青写真がその背後に見えるかどうかにかかっているといってよい。そういう意味でディエラには相手から受ける最初の第一印象は非常に重要であった。ただ単に容姿が美しいというだけのモデルであれば、掃いて捨てるほど業界にはひしめいている。その中で原石を見極める目があるかどうか――それがこの世界で成功するか否かの分かれ道であるといっても過言ではないだろう。
(世界屈指のトップモデル、ラスティスの誕生秘話はこうよ)と、形のいい指を顎にのせたままで、ディエラは少しの間白昼夢に耽る。(うちのスカウトのミッシェルが、ルーマニアのブカレストで偶然発掘、その後彼女はすぐ<ディエラ・マリス・モデルエージェンシー>をパリまで訪ねてくるの。片道の旅費しかなくて、断られたら帰るあてもなく……でもモデルを見る目にかけてはナンバーワンと業界でうたわれるこのわたしの眼鏡にかなって、ラスティスは見事モデルとして正式デビュー。その後はもう飛ぶ鳥を落とす勢いで、各種雑誌のカバーガールを務め……)
 そこまでディエラが想像していた時、ふと彼女は自分を見返しているラスの不思議な眼差しに気づいた。最初はあまりの感動に言葉もなく立ち竦んでいるのかと思いきや、どうもそうでないらしいことに、ディエラはようやく思い至ったのである。
「どうしたの、ラクロス。嬉しくないの?」
「あの……わたし、その………何かのカタログのモデルでもさせていただけないかと思って、今日はこちらへ窺ったんです。スカウト担当の方が、あんまり軽い調子だったので、半信半疑ではあったんですけど、そうした仕事の口をお世話していただけたら有難いなと思って……」
(なんですって!!)
 ディエラは思わず眉を吊り上げた。ルーマニアのブカレストからわざわざやって来ておきながら、たかだかカタログ・モデルの仕事を所望しにやってきただけとは!
(ありえない……わたしは信じないわ、そんなこと)
 ディエラは今一度、厳しい目つきでラスの頭の天辺から足の爪先までをじっと見つめ返した。肩のところで切り揃えられた黒い髪に、その下には黒いバイク・スーツを着用している。そのぴったりとした革素材の服のせいで、ラスがいかにいい体つきをしているかは、肌をあらわにする以前から誰の目にも明らかであった。
「実はね、先日ミッシェルからわたしの元まで連絡があったのよ――ルーマニアのブカレストにあるレストランで、ちょっと変わったいい娘を見つけたってね。あなたも今ミッシェルのこと、<軽い調子>だって言ったけど、彼はいつもそうなの。世界中の街角で自分にとってのミューズを見つけるなり、すぐ声をかけるのよ……中にはなかなか本気にしない子もいるんだけど、実際そんな話にすぐ飛びついてくるような子よりも、そういう女の子の中にこそ百年の逸材って眠っているものだと思わない?ミッシェルにしてもそういちいち、わたしに電話までして連絡してくることはないのよ――だからよっほどその子のことが気に入ったんだと思ってね。『脈はなさそうだったけど、もし万一連絡があったら自分に知らせて欲しい』ってミッシェルは言ったの。そしたら自分が専属のマネージャーとしてその子のことを売りこみたいからって……彼は基本的に博愛主義者だから、そう滅多にひとりの娘に入れこむってことはないんだけど、これはもしかしたら何かの<予兆>かもしれないってわたし、その時思ったの。だから受付のナタリーが電話してきた時、すぐあなたに会ってみようって決めたのよ。ナタリーはわたし同様、この業界では百戦錬磨の強者でね、わたしが会うほどの価値もないと彼女が見定めた場合には、引きとってもらうことになってるの。あなたはもしかしたらまだいまひとつピンと来ていないかもしれないけれど――モデル業界で成功するか否かの秘訣というのは、<運>というものに多くを左右されるものだわ。そう思わない?」
「え、ええ……」
 ディエラが何を言わんとしているのか、まだよく飲みこめないまま、ラスは曖昧に頷く。受付のあの、無表情なアンドロイド・ガールは、実は自分のことを内心たがつすがめつしていたのだろうかと、ラスはふと思った。確かに、毎日飛びこみでやってくるようなその種のあしらいをするには、彼女の鉄壁の仮面は実に有効的であるように思われる。
「あのね、わたしだってこの<ディエラ・マリス・モデルエージェンシー>をしょって立つCEOなんですから、そうそういつも社長室に閉じこもってるってわけじゃないのよ。会社を存続させて業績を上げ続けるには、第一にこのわたしの“顔”が必要なわけ……今日も夕方には、友人の小説家が主催するパーティへ顔をだして、マスコミ向けに華やかな話題を提供するっていう段取りになってるのよ。わたしの言っている意味、あなたにわかるかしら?」
「いいえ。あの、なんていうかよくは……」
 わかりません、と消え入るような声で答えられて、ディエラは心の中で肩を竦めた。(もしかして、わたしの勘が外れたのかしら?)一瞬そう思うものの、ディエラの目には、ラスが何か謙遜ぶった演技をしているようにも見えない。そしてこう直感する。(この子、いわゆる天然系っていうこと?もしそうなら、大した器に化けるかもしれないわね)
「ようするにね、あなたの訪ねてくる時間がまさに<今>じゃなかったとしたら――わたしは今日この場所にはいなかったかもしれないのよ。それでもあなた、明日またここへ来る勇気があったかしら?」
「たぶん、なかったと思います」
 ラスは即答した。一階の入口、受付カウンターにいるあの無表情なナタリー嬢がもし、「社長は今お出かけ中です」とでも言おうものなら、実際にはいつ来ようが社長は<お出かけ中>なのだろうとラスは判断したに違いない。
「わたしが言いたいのはそこよ」ディエラは煙草に火をつけると、煙を吐きだしながら言った。それだけでもう、まるで一幅の絵画のようだと、ラスはそう感じる。「モデル業界っていうのは、言ってみれば極めてギャンブル性の高い世界なの。わたしが期待した逸材が、結局のところ蕾のままで終わったっていうことだって何度もあったわ。あるいは、容貌にも才能にも恵まれた素晴らしいモデルが、惚れた男に貢いで最後にはドラッグでぼろぼろになったっていうこともあったわね……わたしはそういう例をいくつも見てきてるの。でも今あなたに会って、久しぶりに血の騒ぐものを感じてるのよ。ルーマニアのブカレストからパリまでは遠いわ。それなのにあなたはやって来て、極めて外出頻度の高いこのわたし、ディエラ・マリスとこうして会うことが出来ているのよ。認めなさい、ラクロス・ラスティス。あなたは運がいいのよ――モデルというのはね、顔とスタイルが良ければそれだけでトップに立てるなんていうような、甘い職業じゃないの。<運>が多くを左右するわ。かつて、このわたしがそうだったみたいにね。わたしはこれから最高の待遇をあなたに与えるつもりでいるけど、これも言わばあなたの運の賜物なのよ。そう思ってこれを自分のものになさい。わかったわね?」
「……はい」
 ラスはディエラの放つ野心的な女豹オーラに圧倒されるあまり、ouiウィと答えてしまっていた。本当は自分がディエラの言うほど果たして運がいいのかどうかなど――この時のラスにはまだ、よくわかってはいなかったのだけれど。
「さあ、そうと決まったら早速カメラ・テストをするわよ。ところでラクロス……いいえ、愛称はラスでいいのよね?ラス、あなたもしかしてここまでバイクでやって来たんじゃないわよね?」
「いえ、バイクです」と、ラスは何気なく答えた。
「まさかとは思うけど、ブカレストからじゃないでしょ?」
「まさか」感じよくラスは笑って言う。「バイクは借り物です……その、こちらに友人がいるもので」
 確かに半分は嘘ではない、そう思いながらラスは、パリの16区に住んでいる、セスと二ア、それにモーヴのことを脳裏に思い浮かべた。もっともパリに来て以来、ラスはホテル住まいをしており、彼らの元を訪ねる予定など、今のところなかったのだけれど。
「そうなの。なんにしてもそのへんのことは追々説明させてもらうわ――カメラ・テストをした後、わたしたちが用意した場所で寝泊りしてもらうけど、それで構わないかしら?歩き方とか効果的なメイクアップの方法なんかを、うちの新人モデルたちと一緒になって学んでもらいたいの。ところであなた、両親の許可はきちんと取って来てるんでしょうね?正直なところを言ってちょうだい。家出してきたのなら、家出してきたとね。もしそうならこちらから連絡して、御両親のことはなんとか説得してみせるから」
「あの、わたし……」どこまで本当のことを言ったらいいものかと、ラスは戸惑いながら小さな声で言った。「孤児なんです。ブカレストへは偶然、旅行でいっていたに過ぎません。本当はドイツのベッテルハイム孤児院というところが出身地なんです」
 ラスの過去というものは、十歳以前のことが辿れぬよう、いかなるデータも世界中から消去されている。ゆえに、語ってよいのは表向きはクリーンで、超能力開発研究所が併設されている、その孤児院の名称だけであった。ちなみにその場所で超能力の研究がなされていることなど秘密でもなんでもなかった。何故といって、そんなことを言ったところで誰も信じないか笑いだすのがオチである以上――それはいわゆる公然の秘密にも近い機密事項であった。
「そう、そうなの」
 だが、この<孤児>という言葉は、ディエラ・マリスに深い衝撃を与えたといってよい。彼女はこの時思わず、背筋にぞくぞくっとするものさえ感じていた。
(まあ、孤児ですって!ドイツの孤児院出身の娘が、これからトップモデルに成り上がりでもしたら――大変なサクセス物語じゃないの!しかもその原石を発掘したのがこのわたし、世界屈指の美女としてうたわれた、ディエラ・マリスなのよ!)
 ディエラの中ではこの時、トップモデルのラクロス・ラスティスがコレクション・モデルとしてランウェイに立ち、人々の脚光を浴びるシーンが目に見えるようであった。
 こうなったらもう、善は急げ、である。
 ディエラは秘書に内線で連絡して携帯電話を持ってこさせると、超有名フォトグラファーの名前が並ぶ、電話番号のリストを呼びだした。そしてミッシェルの昔からの親友であるセオドア・マクミランと数分の間話をする。
「あ、テディ?わたしよ――そう、お久しぶりね。ところであなた今、国内にいて?ええ、あなたは本当に昔から察しがよくて助かるわ。他でもないミッシェルが見出した逸材が、今パリのわたしのエージェンシーまで来てるのよ。そうね……もちろんわかってるわ。アマンダの時のような失敗は、わたしだって二度とごめんだもの。でも本当に彼女――ラスっていうんだけど――ラスは有望株なのよ。あなたが今すぐくだらないパーティを抜けだしてカメラ・テストしてくれるなら、いつかそのことを自慢できるかもしれなくてよ。ええ……スタジオの準備はこちらで万事抜かりなくしておくから、まずはこの子を売りだすためのポートフォリオを作成して欲しいの」
 ポートフォリオというのは、モデルを売りこむための、いわゆる宣材写真のようなものである。まったく無名のモデルの場合、もしこのポートフォリオの出来が悪かったりすると、それだけでなかなか仕事がまわってこないということも十分にありうる――だがその点、ラスは最初から最上級にツイていたと言えるだろう。
 テディ・マクミランと言えば、現在はフリーランスで仕事をしているが、その前はヴォーグの専属であり、ファッション・フォトグラファーの中では五本の指に入る人間としてその名が業界に知れ渡っている、超のつく売れっ子だったからである。
 だがラスは彼の名前を聞いてもさっぱりピンと来なかったし、当然ながら彼に気に入られる=ヴォーグの表紙を飾れるかもしれない……などという図式は、ラスの頭の中にはまるで存在しなかった。
 ただラスはカメラ・テストと聞いて、若干体を硬くし――これで仕事がもらえるかどうかが決まるのだから、しっかりしなくてはいけないと、自分の心に言い聞かせるのみだった。実際、ラスはディエラの言ったことを半分も信じてはおらず、彼女は第一印象で目に留まった女性には大体似たようなことを最初に言うのではなかろうかとさえ、思っていたのである。
 ラスはこの日もいつもどおり、化粧などまるでしていなかったので、エージェンシーのビル内にあるスタジオへ通された時――そこで待機していたメイクアップ・アーティストやヘア・アーティストは珍しくも驚きを隠せなかったほどだった。リンダ・エヴァンジェリスタやナオミ・キャンベル、シンディ・クロフォードなど、名だたるスーパーモデルの大半にメイクを施したことのあるマイク・デイヴィスは、化粧テーブルの前に緊張するでもなく(実際はそうではなかったが、彼の目にはこの時そのように見えた)座るラスの姿は、将来の大器をすでに予感させていた……のちにデイヴィスは、ある雑誌関係者らにそう話したほどである。
 とはいえ、のちにラスのモデルとしての伝説の一部となるこのフォト・セッションについての逸話は、なんといっても超有名フォトグラファーであるセオドア・マクミランの到着を待たねばなるまい。
 デイヴィスはコットンに化粧水をしみこませ、ラスの東欧人特有の白い肌にそれをパッティングしようとして――やはり出来なかった。彼はこの業界に入って二十年以上にもなるが、生まれて初めて<どうメイクしたらいいかわからない顔>に出会ったのである。
 今回のフォト・セッションには特にこれといったコンセプトやストーリー性のようなものは存在しない。ディエラからも「新人モデルの簡単なカメラ・テスト」としか、マイクは聞かされていなかった。だが、もしファンデーションを塗ったとすれば、むしろラス本来の持つ肌の美しさやきめ細かさといったものが損なわれてしまうのではないかと彼は考え、上司のディエラ・マリスから意見を仰ごうと思った。
「そうね。問題はまあ、テディがこの子をどうしたいかっていうことだけど――髪はとりあえず染める必要はないわ。まずは彼の到着を待ちましょ。すべてはそれからよ」 
 だが、肝心のセオドア・マクミランがやって来るのは遅かった。彼はセーヌ左岸にある友人の高級アパルトマンで、カクテル・パーティの招待客になっていたのだが、ヘア&メイク・アーティストの準備といったものは軽く二時間以上はかかるものと考えて、友人宅で実にのんびりしてから、ようやくスタジオ入りしたといったような次第なのである。
 彼は時間にルーズなことで知られていたとはいえ、流石のディエラもマクミランのこの遅刻には苛立ちを覚え、彼が到着するなり舌鋒鋭くこう釘を刺した。
「遅いわよ、テディ。もしあと一分遅刻してたら、他のフォトグラファーに電話してたでしょうね。アントニオ・ファルコー二かフローレンス・ディアスにね――それなのに何故わたしがあなたにお願いしたか、わからないわけじゃないでしょう?」
 テディ・マクミランは、ディエラの吊り上がった右の眉を見て(彼女は怒ると片方の眉だけが極端に上がるのだ)、肩を竦めた。ファルコー二もディアスも、自分が気に入ったモデルとすぐ関係を持ちたがるタイプのフォトグラファーで、さらには野心家のドラッグ愛好者だった。
 それに引き換え、自分は腕のいい安全株と見なされていることを、マクミランはよく知っている。三十歳を過ぎた頃からでっぷりと太りはじめた下腹、もじゃもじゃの髪に気難しそうに顰められた太い眉……彼はもともと映画を撮りたくて、腰かけ的にファッション業界へ入ったのだが、気がついた時には短い広告フィルムで他を寄せつけないほどの芸術性とセンスを買われるまでになっていたわけだ。
「俺はこの世界の非日常を切りとるのが好きなんだよ」マクミランはよくそう言って笑う。「言うなれば俺は、<美の中のただ一匹の醜いカンガルー>なのさ。モデルたちはみんな、俺のことをカメラを持ったカンガルーだと思って気を許すし、俺は美を理解するカンガルーとして彼女たちのまわりをぴょんぴょん飛び跳ねて、写真を撮りまくってるといった按配だね」
 そしてこのオーストラリア出身のフォトグラファーは、ラスのことを見るなり――自分にこの仕事をまわしたディエラに、心底感謝した。腹を割って言うなら、彼はディエラ・マリスのことが嫌いである。人間としても女としてもどうしても好きになれないタイプだとそう思う。だが、彼女が彼のライバルである他のフォトグラファーにこの仕事を回さないでくれたことを、この時心から有難く思っていた。
「一体なんだい、このセットは?まさかとは思うが俺に、パンクロックバンドのお嬢ちゃんを撮れなんていうんじゃないだろうね?」
 実際、そのセットはほんの一昨日、スーパーモデルのシシリー・ファルケンバーグが、フォトセッションのために使用していたもので、一昔前のパンク・ファッションがテーマだっただけに、エレキギターやアンプやマイクといった小道具が、そのままの状態で放置されたままになっている。しかもその場にバイクスーツにライダーブーツという格好の少女が現れたとなれば、テディがそう茶化したくなるのも無理からぬ話だったろう。
「やあ、お嬢さん。俺はセオドア・マクミラン。みんなからは熊ちゃんのテディって呼ばれてる……今回のカメラ・テストが初めてのフォトセッションということでいいのかな?じゃあ、これから俺たちはチームだ。俺やここにいるスタッフたちと最強のタッグを組んで、いい仕事をするってのが目標だ。わかるかな?」
 まるで小学生か幼稚園児を相手にするように、テディはラスにそう説明した。しかも、両方の手を肩のあたりまで持ち上げてピースサインをし、何度も折り曲げるということを繰り返している。
「はい……」
(もしかしてここは笑うところなのだろうか?)、茶目っけたっぷりに微笑む大男を前にして、ラスはちらとまわりの人の様子を窺った。ディエラはまだテディの遅刻を怒っているらしく不機嫌だったし、他のスタッフたちは最初のテディの冗談を「さっさとそんなもの片付けろ」の意として解し、忙しく立ち働いている様子である。
「これはね、お嬢さん。WIN・WINポーズって奴さ。フォトグラファーの俺とモデルのあんたとで、互いに勝利するようないい仕事をしようじゃないかっていうサイン。わかったかな?」
 またも小さな子供を扱うようにそう言われ、ラスは無器用ながらも、微かに微笑んだ。この人はおそらく、ベテランの写真家で、モデルをリラックスさせるのも自分の仕事のうちだと、そう心得ている人なのだろう……ラスはテディのことをそんなふうに解し、彼に対して好感を持った。人見知りする彼女としては、初対面の相手にそんなふうに感じることは、滅多にないことだったけれど。
「ようし、いいぞ。大分わかってきたじゃないか」
 スタジオのセットが灰色のコンクリート剥きだしの倉庫に姿を変えたのを見て、テディはその準備をしたスタッフたちの名前を呼んで褒めた。ディエラはもちろんのこと、ラスもまた、テディがスタジオに姿を現すなり、ピリッとするようないい意味での緊張感がその場所に漲ってくるのを感じていた。
「ラクロス・ラスティスちゃんね。ところでそれは本名なのかな?」
「ええ、本名です」
 ディエラに紹介された時、ラスはどこかおどけたようなテディに対して、あくまで真剣な顔つきでそう答えていた。「あのヴォーグのムッシュー・マクミランと仕事が出来るだなんて!」といったような、彼がこれまで飽きるほど経験してきたやりとりは抜きだったわけだが――むしろ彼はそのことに新鮮味を覚えて、ラスのことをどう撮影したものかと顎髭に手をあてながら考える……と、そこへメイクアップアーティストのデイヴィスが、「ナチュラル志向でメイクしますか?」と聞いてきたが、テディは彼に対して手を振った。
「いや、まずはこのままでいこう。余計な手を加えないでくれてありがとう、マイク。どうやら面白いことになりそうだ」
 テディはまず、ポラロイドで数枚試しどりをしてから、ラスのことをセットに上げ、本格的にシャッターを切りはじめた。最初、ラスの動きは当然ながら硬く、ぎこちなかったが、テディが何度もカメラのレンズ越しにWIN・WINポーズをして寄こすことで、次第に顔の表情がほぐれてきた――「今のところ、勝ってるのは俺だけだよ、ラス。君もそろそろゴールに一発決めたらどうだい?」
 実際、撮影を開始して、三十分もしないうちにラスは見事なゴールをひとつずつ決めはじめた。コンクリートブロックにもたれてアンニュイな表情をしたり、自らバイクスーツのジッパーを下ろし、その襟首を両手で挑発的に持ち上げたりした。
「いいぞ、その調子だ!!」
 テディはバイクスーツの下にラスが何も着ていないことに興奮し、それ以後の撮影はすべて好調に進んだといっていい。ディエラはラスが「どうポーズをとったらいいんですか?」などと間抜けなことを聞くでもなく、<自分の頭で考える>タイプのモデルであることに満足していた。どうやら、小説家のパーティをキャンセルする必要はなさそうだと思い、何も言わずにスタジオを後にすることにする。
 ――この日、ディエラはエージェンシーのビルのほうへは戻らなかったが、ナタリーからテディが深夜までかけて、計5千枚ものラスの写真を撮ったという報告だけは受けていた。そして彼女は最後にこう付け加えたのである。
「明日社長が出社されたら、デスクの上の写真を見て、きっと驚かれるのではないでしょうか」
 受付のナタリーが厳しい審美眼を持っていることを知っているディエラは、彼女のまるで感情が表にでない声を聞いて、満足の微笑みを洩らす。そうなのである……ナタリー・ギエムは新人モデルの発掘についてはちょっとした権威なのだ。彼女がヴォーグやエルやグラマーといったファッション雑誌を見て、「この娘はくる」、「この子はまるで駄目」といった評価を下す時、百発百中とまではいかないが、その勘はおおよそのところでほとんど当たっていたといっていい。
 そのナタリーが自分に対して<驚き>という言葉を使った以上――ディエラは自分の想像以上の写真をセオドア・マクミランは撮ったに違いないと確信して、その夜はモンマルトルにある自宅で、睡眠薬を使うことなくぐっすり深い眠りに就いたのであった。


◇二次創作サイト『探偵Lの部屋』


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