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セラフィン・バニー

作者: 葛城 炯

 長耳ウサギだらけの島で……

その星。セラフ星に向かったのは調査のため。

 ……というのは、建前。

 実際、調査なんてメカ達が勝手にやってくれる。

 知的生命体がいない星の調査員の仕事なんてメカが集めたデータがちゃんと送信されているか、サンプルがきちんと集められているかの確認ぐらいだ。

 では何故に調査員なんて職に就いたのか?

 決まっている。

 ハンバーグを食べるためだ。

 ハンバーグなんて何処にでも有る?

 判っちゃいないね。

 その星々の生物の肉で作ったハンバーグ。

 それを何種類食べたのか、っていうのが調査員の武勇伝なのさ。

 何故にステーキじゃないのか?

 決まっている。

 大抵の肉はマズイからだ。

 雑食性のヤツらの肉は匂いがキツイ。

 草食性のヤツらの肉は不味いことは少ないのだが、代わりに食べた植物の毒を体内に蓄積しているコトもある。

 まぁ、毒は事前にチェックするしかないが、その場合はミンチにする必要がある。

 そして万が一の場合でも、香味野菜なんかと一緒にハンバーグにしていれば、体外に出しやすいということもある。

 必然的にハンバーグが最適というコトになるのさ。

 そして……オレはセラフ星にいけることを楽しみにしていた。

 狩猟許可が下りたのは長耳ウサギ。セラフィン・バニーと名が付けられたウサギだ。

 ウサギならば草食だろう。

 ……星によっては例外もあるが。

 ベア星の山ウサギは酷かった。何せクマそのもの。肉なんて不味くて食えなかった。

 それでもハンバーグにして食べたけどな。

 ……香味野菜9割だったが。

 兎に角、仲間達の苦笑いを後にしてセラフ星へと心を躍らせて向かった。




 母船は2つの衛星のウチのデカい方に着陸させた。

 宇宙空間に浮かべておくよりは安全。なにせ小惑星の全ては未確認だからな。万が一のことを考えて衛星に着陸させるに限る。

 そして着陸船に飛び乗って早速セラフ星へ。

 香味野菜も山ほど積んだ。栽培セットと一緒にな。チーズももちろん抜かりなく積んである。

 ハンバーグにチーズは最強の組み合わせだ。

 ……肉が不味い時にも使える。

 問題はといえば……こういう『趣味』に関する荷物は個人払いというコトだろうか。

 別に現地調達しなくても食料は積まれているからな。

 だが? 武勇伝の為には多少の犠牲は必要なのさ。

 それにだ。

 マズイ宇宙食を宇宙にいないのに毎日食べるなんてコトは人間としての尊厳に関わる。

 ……と仲間内での取って付けた理由を鼻歌交じりに呟きながらオレはセラフ星へと降り立った。


 降りた場所はウサギ島。

 北極のノース大陸。南極のサウス大陸の間に横たわるエキュアト大陸の横に位置する島。

 島と言っても結構デカい。

 海岸はほとんどが断崖絶壁。

 それでも大陸からは離れているせいで肉食獣がいない島。

 草原にウサギだらけの島。

 それが目指すハンバーグ・エデンだ。



 上空から見ると草の生えてない場所がある。それは多分、前の調査員が着陸した場所だろう。逆噴射で草は焼けてしまうからな。

 無闇に着陸して生態系に影響があってもなんだし、それに草刈りとかしなくて済むという実利も兼ねてその場所に着陸。

 周囲をモニターで確認してみると……いるいる。

 可愛い耳の長いウサギ達が「誰?」と言わんばかりの無防備な顔でコッチを見ては草を食んでいる。

「待ってろよ〜 直ぐに仕留めてやるからな〜」

 その前に仕事だ。

 調査メカを数機、放つ。

 気球型と飛翔型。どちらも数ヶ月にわたって飛行して大気やら地上生物やらをモニタリングする。

 仕事は終わり。

 簡単だろ? これで孤独に耐えられたらば高給が待っている。

 それが惑星調査員なのさ。


 さぁ。狩猟の時間だ。

 オレはウキウキしながら電磁麻酔銃を担いで外に出た。







 なんてこった。

 この長耳ウサギってのは……精神感応能力がありやがった。

 モニターで見た時は確かにウサギ。ただ単に耳が長いだけのウサギ。

 だが肉眼で見ると……バニーガール。

 考えてみてくれ。

 草原からひょいと顔を出すのがバニーガール。しかも結構可愛いし、当然ながら四つん這い。

 とてもじゃないが……掴まえてハンバーグに出来るほどの野蛮人に退化は出来ない。


 慌てて読んだ前任の調査レポートに申し訳程度に書いてあったよ。

『なお、長耳ウサギ、別名セラフィン・バニーには精神感応能力がある。捕食者に捕らえられないようにするためにこの能力を獲得したと思われる。特徴として捕食者にとって最も魅力的な姿態として認識される。この生物は心理テストには最適と提案する』

 ……どおりでこの星の調査を仲間が遠慮していたわけだ。

 ついでに言えば……仲間達が見送りと称してベガス星のカジノ横のバニーガール・レストランで奢ってくれた理由が今わかった。


 オレはバニーガールの姿態でぴょんぴょん跳び回るウサギたちに囲まれて……

 ……仕方なしに同じ草を食べている。


 一応、文明人としてはチーズ焼きにはしている。



 読んで頂きありがとうございます。

 これは200文字で書いた作を改稿したモノです。

 原作は……kirekoで検索してみてください。

 画像は、まるかた氏の「バニーさんと緑芝」です。イメージに合っていたため、掲載の許可をいただきました。

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[一言] はじめまして。 mixiのコミュから来ました。 文章はとても論理性があり(まるで翻訳もののようですね)、読みやすかったです。 ストーリーはまだこれから展開していくようですので、フラットな…
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