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しろいおともだち

作者:みあ
「いい、ダイアナ。迷子にならないようにね。池まではいいけど、それより奥には、行ってはいけないよ」

 その日、おともだちと 森に行くことになったダイアナは、おかあさんに「はあい」と返事をしてでかけました。

 だけどいつのまにか、ダイアナはおともだちとはぐれて 独りきりになっていました。

「ねえ、みんな、どこにいったのぉ」
 ダイアナの声には、だれも答えません。

 遠く近く聞こえる鳥の声と、木のゆれる音しかありません。

 ダイアナはブドウの木を見ました。ブドウをかごいっぱいにするのに夢中になっているうちに、いつのまにかともだちがいなくなっていたのでした。

「だっておいしいんだもの」

 ダイアナはブドウがとても好きなので、ぜったいかごいっぱいにするのだと、はりきっていたのでした。

 ブドウつみは楽しかったのだけど、独りきりだと気付いたダイアナはさみしくなってしまいました。

 そして、べそをかきながら、おともだちをさがすことにしました。

 大きい子はくだものやきのこをとりながらすすんで、最後は池で魚つりをするのだと言っていました。

 きっと前ばかりを見ていて、小さなダイアナがついてこないのに気付かなかったのでしょう。

 ダイアナは木のねっこに気をつけながら歩きました。しげみのあいだを通りぬけるのにだって、注意が必要です。

 だけど歩いても歩いても、ダイアナはなかなかおともだちをみつけることができませんでした。

 ダイアナは心配になりました。そして、早足になりました。

 そうして進んでもすすんでも、やっぱりおともだちのすがたは見えません。
 池もみつかりません。

「ねえ、みんなあ。どこーぉ」

 とうとうがまんができなくなって、ダイアナはぽろりとおおつぶのなみだをこぼしてしまいました。

 それから、ダイアナは声をあげてなきました。
 とても大きな声でした。

 なきすぎてのどがいたくなってきたので、ダイアナがなきやもうとしゃっくりあげていた時のことです。

 だれかがダイアナの左のほっぺを、ぺろりとなめました。

「きゃ」
 ダイアナはびっくりして、目をぱちぱちとしました。

 ダイアナを なぐさめるように、ざらりとしたものが三回ほっぺをなめていきました。

 なのになみだでにじんだダイアナの目にはなにも見えませんでした。

 おどろいているあいだに、いつのまにかダイアナのなみだはすっかりかわいてしまいました。

 すると、なにかがダイアナの肩で「キィ」となきました。ダイアナのほっぺたをなめていたその生き物はダイアナにのっていたのです。

 それは白くてふわふわのけがわをもっていました。

 体はちょうどダイアナの両手をあわせたくらいの大きさ。

 そして体とおなじくらいの長さの、ピンとのびたしっぽをもっていました。

「おまえは、ええと、なあに?」

 ダイアナはこんなにまっしろい生き物を、これまで見たことがありませんでした。
 あらいたてのシャツだって、こんないろはしていません。

 その生き物はとんがった耳をしています。
 大きくてまんまるい目はみどり色です。

 キツネかしら?
 でもそれにしては小さいかも。

 リスかしら?
 だけど、リスとはしっぽの形がちがうかも。

 ダイアナは、それは知っている生き物のどれでもないようにおもいました。

「もしかして、まもの?」
 まものなんて、ダイアナは見たことがありません。

 おとうさんだって、おかあさんだって、見たことがないというのですからあたりまえです。

 だけど、森の奥にまものというものがいるというのはずうっと昔から言われていることでした。

 森の池よりずっと奥は、まもののすみかだから近づいてはいけないと、ダイアナのようなこどもだってなんども聞いています。

 まものというのはとてもこわいのだと、大人はみんな言いました。

 それをきくとダイアナはいつも、まものはおおかみよりもこわいのかしらとかんがえていました。

 まものを見たことのないダイアナには、おおかみがいちばんこわい生き物でしたので。

「ちがうよね」

 白くふわふわのその子は「キィ」とひとつなきました。

 それをきいたダイアナは、この生き物はまものではないと信じました。

 だってとてもかわいい声でなくその子が、とてもそうとはかんがえられなかったのです。

 しらない生き物だけど、小さくてかわいいのだもの。

 きっとまものではなくて、ダイアナのしらない動物なのでしょう。

「キィってなくから、キィってよんでもいーい?」

 ダイアナは聞いてみました。

 その子はキィとないて、うなずいてくれたようでした。

「あのねえ、キィ。わたし、まいごになっちゃったの。わたしのおともだち、みなかった?」

「キィ」
 キィのおへんじははいともいいえとも わかりません。

 だけど、話あいてができたことをダイアナはうれしくおもいました。

「ねえ、おともだちがみつかるまで、いっしょにいてくれない?」

 ダイアナがそうっと手をだすと、キィはぴょんとそこにのりました。

 そしてダイアナの腕をかけあがって、肩にのりました。

「わたし、ダイアナっていうの。このちかくにすんでいるのよ」

 あたらしい小さなおともだちに話しかけながら、ダイアナは元気に歩きはじめました。






 ときどきブドウをたべながらいっしょに歩いているうちに、ダイアナとキィはすっかりなかよしになりました。

 とてもたのしいので、どこまでも歩いていけそうでした。

 だけどしばらくしてつかれてしまったダイアナは、またさみしくてかなしいきもちになってきました。

 キィがちかくにいても、くらくなるのはこわかったのです。いつのまにか、木のかげが大きくなってきたようにおもいました。
 夕方がちかいのかもしれません。

 キィをそうっとだきしめて、ダイアナは地面にすわりました。

「もう、おうちにかえれないのかなあ」
「キィ」

「みんなどこかなあ。おとうさんとおかあさん、わたしをさがしにきてくれるかなあ」
「キィ」

 キィはダイアナの手をぺろぺろとなめて、なぐさめてくれます。

 だけど、つかれてしまったダイアナはかなしいきもちをなくすことがどうしてもできません。

 キィと会うまえよりはしずかに、ダイアナはぽろぽろなみだをこぼしました。

 そんなときです。どこかからか男の人の声がきこえました。

 ダイアナはひっくとしゃっくりをあげてから、あわてて立ちあがりました。

「ここ。ここにいるよう」
 ダイアナは声のするほうへ走ります。

 木のねっこにひっかかりそうになりましたし、しげみに足をとられそうにもなりました。

 でもなんとかこけないで、ダイアナはおとうさんをみつけました。
 おとうさんのほかにも、おともだちのおとうさんもいます。なぜかみんな、手にオノやカマをもっていました。

「おとうさーん」
 ダイアナはおとうさんにとびつきました。

「ぶじだったか」
 おとうさんはオノをおじさんの一人にわたしてから、ダイアナをぎゅっとして、ほっとしたように言いました。

 おともだちのおとうさんたちも、口々によかったなあと言っています。

 そのあとでおとうさんは、「こんな森の奥まで来るなんて」としかめつらでおこりました。

 それでダイアナがべそをかいたのは、おこられたのがこわかったからではありません。おとうさんに会えてうれしかったからでした。

 ダイアナはおとうさんにぎゅうぎゅうだきつきながら「ごめんなさい」と言いました。

「さあ、かえるぞ」
 おとうさんはダイアナをだっこしてくれます。
「うん」
 元気よくダイアナはうなずいて、おとうさんの首に手をまきつけました。

「キィ」
 そのときキィの声がきこえたので、ダイアナはじぶんが白くてかわいいおともだちをおいてきてしまっていたことに気付きました。

 とつぜん走り出したダイアナをおいかけて、今ようやくキィはここに来たのでしょう。

「ありがとう、キィ。おとうさんがおむかえにきてくれたよ」
「キィ」

 おれいを言ったダイアナに、よかったねと言うようにキィはこたえます。

「ダイアナ、あれは……」
「おともだちのキィだよ。さみしいから、いっしょにいてもらったの」
「そうか」

 おとうさんはなんだかむずかしい顔をしていましたので、ダイアナは「どうしたの?」ときいてみました。

「ひとりでなくて、よかったな」
「うん」
 おとうさんはダイアナの頭をなでました。

「じゃあ、おわかれを言ってからかえろうか。ここは人のいるべきところじゃないから」

 ダイアナはひとつうなずいて、

「じゃあね、キィ! またね!」

 元気よく手をふりました。

 そうして、ダイアナとおとうさんたちはいっしょに村までかえりました。

 それからダイアナとキィがまた会うことはありませんでしたが、ダイアナはずうっときぃのことをおともだちだとおもっています。

 森の奥ふかくで出会ったほかにはいない生き物が、本当はまものだったのではないかと気付いてからも、ずうっとです。

 だって、キィはないていたダイアナをなぐさめてくれたやさしい子だったのですもの。

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