九匹目! 思春期キャットは恩知らず?
一階から二階まで。
一通り辺りを探してみたけど、高嶺さんはどこにもいなかった。
後は校舎側にいるか、もしくはトイレや別の部屋にいるのか。
たぶん、部屋はないと思う。高橋さんや戸塚さんに聞いた感じだと、あまり人とコミュニケーションを取るのが苦手みたいだし……。
トイレなのかな?
でも、トイレにしては長すぎだよなあ。
「うーん……」
何だかんだで僕は自分の部屋に帰ってきていた。
扉を開けて、中に入ると、
「あ、おかえり−」
「た、ただいま……」
みんながトランプで遊んでいた。大富豪をやっているみたいだ。
声をかけてくれた朱鷺沢さんもやっている。
そして、やっぱり。
高嶺さんは帰ってきてなかった。
そろそろ就寝時間だし、最後のもう一回回って来よう。
「私も行くよ−」
僕が背を向けると、朱鷺沢さんが声をかけてくれた。
上がりの一言と同時に、こっちに来てくれた。
「もうすぐ寝る時間だよ?」
「大丈夫。それまでには戻ってくるから」
朱鷺沢さんが僕の背中をせっせと押してきながら言った。
「行こう」
「うん」
僕は足下に気を取られながらも、外に出た。
朱鷺沢さんが扉を閉めて、僕の隣に来た。
「どこから探す?」
「えっ、と……一通り見てはみたけど、トイレを探してないんだ。僕じゃ、その入れないし……」
「そっかあ。じゃあ、まずはトイレに行ってみようか!」
朱鷺沢さんはスキップ混じりで通路を駆けていった。
す、すごい速い!
「走ったら先生に怒られちゃうよ−」
僕は早足で朱鷺沢さんの後を追った。
次第に差が広がっていき、朱鷺沢さんの姿が見えなくなると、僕も通路を走っていた。
一階二階共にトイレは二つずつある。
右が女子、左が男子、となっている。
朱鷺沢さんが向かったのは、右の突き当たりを曲がったところにあるトイレだ。
二階の女子トイレはここにある。
僕が女子トイレの前に着くと、目の前の網み目模様の厚手のガラスに人影が映っていた。
薄暗い場所でも、天井に付いた非常口の看板の照明が、姿をぼんやりと映していた。
そこには、はっきりと栗色が見えた。
扉を開けて出てきたのは、やっぱり朱鷺沢さんだった。
「中にはいなかったよ」
「そっか……じゃあ、一階に行ってみようか」
僕らはその後、一階の女子トイレも見て回ったのだけど、そこにも高嶺さんはいなかった。
やっぱり外に出たのかな?
夏とは言え、さすがに夜九時にでもなれば、辺りは真っ暗だ。
この辺は山道が多くて、色々と危ないし……。
「そうだ! 下駄箱を調べてみよう!」
「そっか−! 中にいるかどうか分かるもんね! 行こう行こう!」
僕らは一度、旅館を出た。
校舎と繋がる通路を走っていき、もうすぐ閉められてしまう扉に入り、急いで下駄箱に向かった。
ロビー前に下駄箱はある。
真っ直ぐ走った先にロビーはある。
僕らはそこまで直行し、そして、下駄箱に着いた。
僕は場所が分からないので、朱鷺沢さんが高嶺さんの下駄箱の中を見てくれた。
ガチャ。
中を開けた時、そこには、上履きだけが入っていた。
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