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二匹目! 女の子がいっぱ~い!
 緑ヶ丘中学校。
 街から遠く離れた山奥に佇む、元旅館の男子校。
 全校生徒三十名の廃校寸前の学校だ。
 僕、都築祐二がこの緑ヶ丘中学校に入学してから早一年。
 全寮制のこの学校では、夏休みや冬休みなどの長期休暇以外は学校で暮らすことになる。
 そして、明日、いよいよ夏休みに入るのだけど、今年は少し違った。
 木造二階建ての校舎、その中央の教室、窓際側の席。
 そこが僕の席だ。
 校舎の素材は旅館の面影を残したままとなっていて、かなり樹齢を感じさせる色合いとなっている。
 僕は窓の外を眺めていた。
 教室では山中先生が今日から始まる『林間学校』について説明をしていた。
 林間学校とは、夏休みに校外学習として自然の中で集団生活をすることだ。
 そう、今年の夏は、その林間学校があるのだ。
 しかも、来るのは女子校の人達だ。
 僕はこれまで女子とは無縁の生活を送っていた。
 幼稚園から保育園から小学校まで。女子と会話したことが少なく、恋愛なんてしたこともなかった。
 この林間学校は、そんな僕の最大の転機だと思っている。
 これを機に、僕は女子と喋れるようになりたい。
 たった四十日間だけど、何とか成果を出したい。いや、出してみせる!
 ……と、意気込んでみたものの、実際はまず話しかける段階で挫折しそうなのだけど。
 本音を言えば、僕一人では無理なので、友人の会話に乗じていこうと企んでいる。
 僕には三人の友人がいる。
 猿飛賢二。
 雉鳥真人。
 犬丸礼二。
 この三人だ。
 賢二は年がら年中エロいことばっかり考えていて、常に発情期を迎えているような男だ。
 スポーツなんかが似合いそうな好青年っぷりが見られるのだけど、話を数分交えれば、それが幻想だと分かる。
 真人はクラスで一番モテる……と思っている、自意識過剰な男だ。
 確かに僕なんかと比べれば何十倍もカッコ良く、たぶん都会とかでも通用するカッコ良さだと思うのだけど、その自意識過剰な性格のせいで人生を損している。
 プライドが高い分、それを折られた時の落胆っぷりは酷く、前に街で気軽にナンパしようとして、えげつない言葉で木っ端微塵にされた時は三日寝込んだほどだ。
 最後に礼二は、僕の唯一の理解者だ。
 ただ、腹黒い性格をしていて、生活の節々でドSっ気が出ている。漏れていると言ったほうが正しいかもしれない。
 以上が僕の友達で、みんなの名字に童話に出てくる家来の名が付いていることから、桃太郎三兄弟と呼ばれている。
 たまに兄弟の部分がバカに変わってたりもするけど、僕は含まれていないので全く気にしない。
「来たぞ!」
 賢二がそう叫ぶと、一斉に教室ががたつき、生徒全員が窓際に押しかけてきた。
 僕は急いで端っこに避難し、人の壁ができたところで、そっと後ろを回った。
 僕はチビなので、隙間から入り込んで覗いた。
 バスだ。
 バスの中から、女子生徒が降りてきた。
「うおおお!」
 教室に歓喜の雄叫びが轟く。
 すごい、美人だらけだ。
 みんなが叫びたくなるのも分かる。
 先生に指示を受けながら、だらだらとした動きで整列していく。
 その中で一人、栗色の髪色をした女子がこちらに笑顔を向け、手を振っていた。
 目が合ったような気がした。
 ゴンッ!
「はぐっ!」
 窓枠におでこをぶつけた。
 みんながえらい騒ぎを起こしていた。
「今、俺に手を振ったぞ!」
「いや、俺だって!」
「いや、俺だよ! 絶対!」
「ふふふ、僕じゃないかな」
 真人が輪の中に入り込むが、
「お前はすっこんでろ!」
 みんなで一斉に輪の外へ蹴り飛ばされた。
 輪の外へ蹴り飛ばされ、床を舐める羽目になった真人の下に、礼二が一言。
「まさに外の外だね」
 トドメの一撃を突き刺した。
 がふっ、と見えない弓に射抜かれた真人はそこで尽きた。
 僕は再び顔を窓の外に向けた。
(まだ手を振ってる……)
 その女の子が笑顔で手を振っていた。


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