十九匹目! 触るべくして救ったオトコ?
引き連れられるがままに廊下へと向かわされた僕。
扉の後ろに隠れるよう言われて、言われた通りにして、
そして、ろくでもない作戦会議が始まった。
「わかってる。わかってるぞ」
と、言ってきたのは、賢二だった。
「何の話?」
「お前が朱鷺沢に夜這いをかけた話だ」
「いつの話!?」
「とぼけても無駄だ。男女二人が同じ部屋で一緒にいてすることは一つしかないからな」
賢二はとんだ勘違いをしているようだ。僕のことといい、常識といい。
「あのね……僕は朱鷺沢さんを見守ってただけで、賢二が思ってるようなことはしてないからな」
「そもそも夜這いなのに今昼だしね」
礼二の言う通りだ。
さすが僕の唯一の理解者。
「夜這いじゃなくて昼這いだよ」
前言撤回。
礼二は僕をちっとも理解していない。
もうどうにでもなれ。
「それはそうと、一体、何の作戦会議をするの?」
良からぬことだとは思うけど。
「女子風呂覗き見の作戦会議だ」
嬉しくないビンゴだ。
「ガールズには僕の魅力が伝わらないらしいからね」
と、真人が前髪をさらりと浮かせながら言った。
「そこで、何故かモテてるお前の力を借りようというわけだ。裕二」
僕はその場を立ち去った。
が、後ろから賢二が腕を掴み、引き止めてきた。
「待て」
「待たない」
「話だけでも」
「話だけってね、賢二がすることは立派な犯罪なんだよ? 僕は覗き見して警察に捕まるのなんて嫌だからな」
僕は賢二を強引に引き剥がそうとしたけど、それでも賢二は僕にしがみついてきた。
「お前はもっと青春を楽しめ!」
「そんな汚れた青春なんかいらないよ!」
僕と賢二がごちゃごちゃ言い合いをしていた時だ。
「裕二、後ろ」
「……っえ?」
礼二がそう言ってきて、僕が後ろを振り返ると、
ドンッ。
「うわっ」
「きゃ」
誰かとぶつかった。
見ると、そこには柊さんがいた。
僕は足を踏み込んで倒れなかったけど、柊さんは倒れそうになっていた。
というより、今、僕の目の前で倒れようとして、
「危ない!」
僕はとっさに手を伸ばしたけど掴めなかった。
クッションも何もない廊下で頭なんか打ったら大変だ。
何とかしてあげないと。
そう思って動いていた矢先のこと。
柊さんが倒れた。
倒れた柊さんを、いち早く存在に気付いた礼二が屈んで受け止めていた。
「あ、ありがとうござい……」
格好良く救った礼二の一点を、僕らは見ていた。
不自然に胸を触れてる手だ。
礼二は勝ち誇った決め顔を浮かべていた。
もみゅ、と手を一回。
「大丈夫かぃぶっ!」
柊さんのビンタが礼二の顔面に直撃した。
倒れた礼二から逃げ去るようにして、柊さんは消えた。
「……た、隊長……」
礼二が鼻血を垂らしながら呟いた。
礼二が掲げた手を賢二が握り締める。
「なんだ!? 礼二二等兵!」
「Bでした……」
そして礼二は気絶した。
「礼二二等兵ィィィィ!」
僕は呆れて教室に戻っていった。
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