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幻想円舞曲
作:優海 刹羅



FILE2:誕生祭


(ああ、あともう少しで目的地ですのに!!!!!)
セリウスは2階までおりてきていた。
彼女は、人に出会わないように物陰にひっそと身を隠しながら、目的のここ、2階にたどり着いたのはいいが、思いもよらない障害物が待ち受けていた。
その障害物とは…。
「ウィーラの民よ、セリウス姫の誕生日を祝して、乾杯!!!!」
「乾杯!!!!」
カチン、とグラスとグラスがぶつかり合う音が、大広間中に響き渡る。
今や大広間は人で埋め尽くされ、狭いように感じた。
人達は皆、幸せそうな顔をして、ある人物の…他でもないセリウスの、誕生日を祝っているまっ只中だった。
実は今日、セリウスの15歳の誕生日。
まさか城の家臣達には留まらず、町の人達も詰め掛けて、盛大に祝っていたとは、セリウスは思いもよらなかった。

「…廊下に人があまりいなかったのは、こーゆーことを執り行っていたからですか」
セリウスは冷たくそう言い放つと、大広間を急いで引き返した。
(計画変更ですわ!!!どうせこの先の廊下にもいな…!!!!!)
慌てて立ち止まる。そして悔しそうに呟いた。
「…城門の警備兵は、きっといますわ…うぅ」
セリウスは泣く泣く、今考えたことを頭から振り払った。
彼女の考えたことは、いかにも姫だと言っているような、ごてごてしたこの格好のままで、城を抜け出すということ。
廊下はきっと、この盛大な儀式のお陰で運良く誰もいない。
いるとしても、使用人ぐらいだろう。
少なくとも、大臣クラスの家臣はいないはずだ。
そこまでは、いい。だが、城を出るには嫌でも立派な城門を通らなければならない。
しまもそんなご立派な城門には、必ずと言っていい程、ご立派な警備兵がついていることだろう。
残された、セリウスの抜け出す方法は、あの本に書かれていることのみ。
一体どういう方法が書いてあったのかは知らないが、その方法を実行するには、大広間を突っ切って、反対側に行かなければならないようだ。
(一体どうすれば…)
セリウスが力なくとぼとぼと歩いていると、大広間から、ただならぬ叫び声が聞こえてきた。
「大臣さま!!!大変です!!!!姫さまが部屋におられません!!!!!!」
「な、何だと!!!!それは本当か!!!!!」
大臣は、重大発表をした1人の使用人を、物凄い形相で睨みつけた。
それを見た使用人は恐怖で顔が引きつる。
いつの間にか、賑やかだった大広間が、時間が止まったかのように、静まり返っていた。
しーんとした大広間に、2人の声だけが響く。
「ほ、本当で御座います!!!!セリウス姫は、部屋にいませんでした!!!!そして…」
そう言い、使用人はうつむいた。
「そして何だ?!早く言え!!!」
大臣がつかつかと使用人に歩み寄る。
使用人はそんな大臣にびくびく脅えながらも、ハッキリとこう告げた。
「そして…セリウス姫の部屋の窓が、あろうことか、開いていたんです。
…もしかしたら、落ちたのかもしれません」
ただでさえ静まり返っていた空間が、また一段と静まり返った気がした。
大臣は目をカッと見開き、使用人の肩をガッチリと掴み、体を遠慮なく揺った。
「そんな馬鹿な…っ!!!!お、おいお前、ま、窓の真下には何がある??地面か?!藪か??湖か!!」
使用人は申し訳なさそうに呟いた。
「頭が…気が…動転…して…た…ので…確認…してま…せん…」
しかし、体が揺さぶられているため、途切れ途切れになった。
「ええぃ!!お前ら!!!何時までこうしてるつもりか!!!!今すぐに現地へ向かい、姫の安否を確認!!!」
この大臣の言葉が合図になったのか、大広間が一斉にざわめき出した。
「捜せー!!!姫を捜せーー!!!!」
「あの!!私達は村人なので…姫の風貌は良く…」
「急がんかぁ!!!ここにいる全員!!!今すぐに!!!!!4階!!!姫の部屋!!!!」
「急げ!!!!!走れ!!!!!そこっ!!!何転んでやがる!!!速く走れ!!!
「うぅ…ウィーラの破滅よ…うわぁぁん!!!」
「気をしっかり持て!!こんなとこで何物騒な事言ってやがる!!!」
大広間がパニックに陥った。
そして四方八方から次々と人が走り去っていく。
それはあまりにもあっという間の出来事だった。

「………………………」
セリウスはこの状況を全て見ていたが、いまいち何が起こったのか良くわからず、呆然と立ち尽くしていた。
大広間は荒れまくっていた。
今の大広間には、あろうことか、人1人いない。
セリウスはもぬけの殻になってしまった大広間に足を踏み入れた。
食べ物の残骸や、ガラスの破片はそこら中に散らばり、中央に構えられていた巨大なケーキには、ガラスの破片が突き刺さっていて、到底食べられそうもない。
セリウスはフラフラとした足取りで、そのケーキに歩いて行く。
そしてたどり着くと、その場に座り込み、ケーキに刺さっていたガラスの破片を抜き取った。
「私の誕生日をしてくれていた…さっきまで、平和に…みなさん、如何にも幸せそうに…なのに…これは何ですの??」
セリウスは抜き取ったガラスの破片に映った自分の姿を見つめながら、悲しそうにそう呟く。
「こうなったのは全て私のせいですわ!!!ううっ…私、馬鹿ですわ…馬鹿で…馬鹿で…馬鹿ですわ!!!」
セリウスはすくっと立ち上がると、ガラスの破片をその辺に落ちていたハンカチで包んだ。
「これは、私が皆さんに迷惑かけた証拠ですわ!!」
(旅先で、私が皆さんに迷惑をかけそうになったとき、これが止めてくれますように…)
セリウスは両手でギュッと握り締め、それをバッグにしまった。
(でもこれで、向こう側へ行けますわ!!)
セリウスは、今いる反対方向を見つめ、服についた埃や汚れをささっと払うと、バッグからノートの切れ端と、ペンを取り出した。


[家臣の皆さん、ごめんなさい。私は、旅に出ます…今まで、お世話になりました。  セリウス・ウィーラ]


セリウスはテーブルに、そのようなメモを残すと、大広間を後にした…。












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