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第十一項 朝這い?妻。


 ――雪が降っていた。
 少年は一面を埋め尽くす雪の上に、大の字で寝そべっていた。
 少女は、少年を不思議そうに遠くの物陰から見ている。

 ――冷たくないのかな?

 素朴な、他から見ればどうでも良い好奇心に負け、少女は少年に問う。少年は一瞬だけ少女に目を配ったが、すぐに曇天の空を見上げて不機嫌そうにもらす。凄く当たり前で、誰もが気付いているようで気づいていないこと。

 ――雪なんだから冷たいに決まってんだろ。

 で、でも汚れない……?

 ――汚れたら洗えば良いだろ。服なんてそんなもんだ。

 少女は当たり前のように言いのける少年の事を目を丸くして見ていたが、泣きそうな笑みを浮かべて少年の隣に寝そべる。

 ――うん、そうだね。その通りだよ。汚れたら洗えば良いんだよ、ね。

 少年は、自分の隣で空を見ているこの不思議な雰囲気を持つ少女を横目に見ていた。少女もまた、当たり前の事を当たり前のように教えてくれた少年の事を意識していた。






「……夢、か」

 凄く久しぶりに見た気がする。この夢を見た後は、必ずと言って良いほど胸が締め付けられるのに今日は少し気分が楽だ。これも大河のおかげなのかもしれない。

 ――っていうか、何か身体が重いんですが……。

 ふと自分の布団を見下ろしてみると、不自然なほどにこんもりと盛り上がっている。大きく上下しているのは、俺のせいではない。

「……」

 隣で寝ていたはずのベルチェの姿はない。そして、何かに乗っかられているような感覚。大きく上下する布団。

 ま、まさかな。いくら相手がベルチェだからって、そんなバカなこと。

 恐る恐る自分の布団を捲ってみる。

「何してんだこのバカ……」

 案の定というかなんと言うか。ベルチェがすやすやむにゃむにゃと幸せそうな寝息をたてながら、俺の身体の上に文字通り全乗っかりで寝ていたのだ。上半身だけもたれかかるように乗っかってるならまだしも、全身がぴったりとくっつくかのように乗っかっている。つか良く寝返りの時に落ちなかったな。

 年頃の少女としては、それなりに発育の良い身体がずっしりと全身に乗し掛かっていた。ずっしりと言っても、人の重さからすれば羽のように軽い。全身が華奢であり、柔らかさを兼ね備えていた。常人より体温が高いのか、小さな体躯から熱が伝わってくる。

「むふ〜、むふふふふっ」

「な、なんだっ?」

 突如ふにゃっとベルチェの顔が歪み、壊れた人形のようにくすくすと笑い出す。いったいどんな夢を見ているのか、そもそも本当に寝てるのかもさえ疑問である。

「うふふ、悠さま〜」

「……怖っ」

 なんか怖くなってきたので、この状況を打破する事にした。もぞもぞとベルチェを起こさないよう身体を動かすが、がっしりと彼女の腕が腰に回されていて、びくともしない。

 強化版だっこちゃん人形のようだ。んなもんホントにあったら焼却炉に投げ付けるが。

「……死ねェですう」

 何故に!?

 夢の中で殺されそうになってる俺二号が居るようだが、そんなのを気にしている場合ではなかった。ギリギリと、プロレスラー顔負けの絞めが極っているのだ。無理矢理酸素を吐き出させられ、嫌な意味で熱いモノが込み上げてくる。

「が……っ?! 冗談、キツいって!!」

「浮気は絶対……許し……すーすー」

 ま、また寝た……。 っていうかさっきまで寝てたのか? しかもまだ極ってるのはどういう事だ。

 ベルチェロックによって、骨がミシミシと悲鳴をあげている。肺になかなか酸素が取り込めず、普通に愉快に日常的にピーンチ。

「べ、ベルチェ……! 起きろこのバカ!」

「ふんにゃ〜?」

 なぞの奇声をあげつつ、ベルチェの瞼がゆっくりと開く。ぼんやりと且つ確かめるような視線を、真っ直ぐと見返した。早く自分が何をしているか認識してもらわなければ、俺の命が持たないのだ。

 ――いやだ、こんなので死ぬなんて絶対にいやだ!

 こんな少女に絞め殺されたなんて、誰が信じるだろうか。新聞の朝刊にのってみろ、マヌケなんてレベルじゃねえ。

「あっ、悠さまだ〜」

 にへら〜、と笑いよいやく通常レベルの力に戻った。命の危険はなくなったが、新たな危機に直面している事に気づく。いいや、気づいてしまった。

 おおうっ、優しく抱きつかれても逆に困った感じがする〜!!

 忘れていたが、今のベルチェは俺に全乗っかりなのだ。そしたらまあ、アレがこうしてこうなるのは当然な訳で。そうすると、アレがこうなるのは当然な訳で。

「んふふ、おはようございます〜」

 ごしごしと人の服で顔洗ってんじゃないかと思うくらい、強烈に顔を擦り付ける。パタパタとベルチェの金髪が暴れまわり、ふわっとした良い香りが鼻を擽った。端から見れば、仔犬がじゃれついているようにも見えるだろう。主人の腰が引けているのを別にして。

 うむ、これはこれでヤバいな。何がとは言わないけど。どうせ引き離そうとしても無駄なんだろうな〜、悲しい事にさ。

「離れろ」

「やっ」

やっ、て! やっ、て!! やっ、て!! めっっっちゃ可愛いんですけど!!

 甘えるような笑顔で、きゅっと腕の力を強めた。

「んん?」

 きょとん、と俺を見て不思議そうに首をかしげる。もぞもぞと動き出しかと思えば、耳まで真っ赤にしてピタッと硬直した。

 ――すっごく嫌な予感がするのは何ででしょうか。

「悠さまのえっち……」

 や、やっぱり――。

「し、仕方ねえだろうが! 朝だぞ!? しかも俺健全な男子高校生だぞ文句あんのかこの野郎!!」

「……えへへ」

 なにか変態やらクズやら罵られるかと思えば、ベルチェは恥ずかしそうに笑って、じっと俺を見上げた。期待と不安と照れが入り混じった視線で。

「……にゃんにゃんします?」

「するかっ」

「えー」

「えー、言うな!」

 唇を尖らせて不満を表していたが、何かを思い付いたらしくニマッと笑い、腰から首の横に手を置いた。

 突然の出来事に俺はどうする事も出来ずに、俺を見下ろしながら妖艶に笑うベルチェを見つめる。

 彼女の髪が頬に当たり、それだけでなんだか変な気分になってしまう。

 これは俺のせいか? 俺が悪いのだろうか?

「べ、ベルチェさん?」

「ふふふっ、不本意ですが私から襲わせてもらいますねっ? んっ――」

「むぐっ!?」

ねっ、じゃねえええ!!

 いつかのような熱烈なキスを浴びつつ、ビリビリと服を剥かれる。完全に襲われてるああ襲われいるよ。ある意味壮観だ。こんな可憐で華奢な少女に襲われるとは……。

「ああっ、悠さま!!」

「なに一人で盛り上がってんだよ!!?」

「くふうん、悠さま……逞しいお方」

「ぎゃああああっ、服を剥くなベタベタ触るなッ!!」

「えー、いけずう……」

「だからえー、って言うな!」

 もう地獄なのか天国なのかわからなくなってきた。言うなれば、天国っぽい地獄?

 そうだったのか、ぽいって結構大切な言葉だったんだ。

 良くわからない悟りを開きそうになってしまっていた。




前回の更新で、ひとつびっくりする事がありました。なんと!!ユニークアクセス1000!!良いのか『コレ』で?恋愛小説で四桁いってる方が居るというのは知っていましたが…まさか自分がって感じです。えと、1000って結構多いですよね?ほかの小説がどの程度なのか知らないのでわからないのですが、いままでの小説ひっくるめると、大体600〜800くらいでした。いや、一度だけ1000以上はありましたけど。でもそこら辺はどうなんですかね?


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