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株×人間

作者: グスク

『株』株って知ってるか?俺は知ってる。分からない奴は目の前の機械で調べてくれ。まあ、簡単に言うとギャンブルだ。国が認めている合法ギャンブルで未成年者でも参加出来る。株ってのは値段が付いていて、発行している会社によって値段はバラバラだ。そして業績、イメージ等によって値段が激しく上下する。以上、そんな感じだ。

ピピピ、ピピピ、ピピピ、

「ん・・・ぅん」

俺は目が覚めた。朝日が眩しい。

カチッ!

お喋りな機械の口を閉じてやると俺はスマホに手をやり、電源を入れた。ホーム画面に映る数個のアイコン、その中から野菜のカブが描かれてるアイコンをタップした。

『にゃんタマ美』そう書かれている部分をタップすると、棒フラグが出た。グラフは右肩上がりで下がる気配が微塵もない。

「ふっ、まだまだ上がるな」

俺は笑った。制服に着替え、一階で朝食のハムトーストをかじりながらテレビを見た。「ちょっと聞いて下さいよ~」なんだよ?「この前、某番組でアイドルの悪口言ったらブログが炎上しちゃって僕の株価下がりましたよ~」と、番組は笑いに包まれている。くだらない炎上芸だ。自分の価値を下げてまでテレビに出たいのか。俺は呆れたピンポーン♪

ハムトーストを食べ終わったと同時に音が鳴る。俺はカバンを持ち、家族に行ってきますと告げ玄関に向かった。玄関を開くと大きな声で「おはよー!」と、耳の中に入ってきた。こいつの名は『友田知代(ともだちよ)』隣の家に住んでる幼馴染みだ。小、中、高と一緒で毎日欠かさず俺を登校に誘う女。成績と顔は中の中の上。最後の上は幼馴染み特典だな。特徴といえばお喋りな奴で。ほら今も歩きながら昨日の恋愛ドラマの感想をペチャクチャ聴いてもいないのに勝手に喋っている。ちなみに、

こいつの株価は500円。普通だいつものように話を聞き流していると学校に着いた。校庭に入り、靴箱置き場へ向かっていると人だかりが出来ていた。「相変わらず凄いね~」知代がそう言った。原因を教えよう。あいつだ。学校1の美女『可愛(かわい) 依心(いこ)』その女に群がって人だかりが出来ているのだ。人気の秘結はやはり容姿端麗。それだけじゃない。性格も優しく、誰にも話し掛ける事が出来る、なので恥ずかしがりやな奴らからも絶大な支持を得ている。そして極めつけは、他の女子から妬まれないように振る舞える謙虚さとしたたかさも持ち合わせている『ミス・パーフェクト』株価も当然高く、27000円ほど。そこらの芸能人より高価だ。可愛の事を知っている連中は皆株を持っているだろう。因みに俺は買ってない。好きなのがバレちまう。そんな人だかりを横目に俺は靴箱で上履きに履き替え二階の教室へ向かった。『2-B』俺のクラスだ。席は真ん中、居心地は最悪だ。次の席替えはいつだ?と、考えていると

キーンコーン ♪ カーンコーン♪

ホームルームのチャイムが鳴ると同時に担任の先生が教室に入ってきた。「みんなおはよう!じゃあ出席を取るぞ~」こいつは去年転任してきた体育教師の『矢瑠樹 .Y/(やるき あるお)』とんでもねぇ名前だ。矢瑠樹の株価は8800円。この学校の教師陣では上位だ。この世界の社会では株価は重要な要素で就職にも影響する。常日頃から良い行いをしてるかは株価を見りゃ分かるからな。「え~、次は悪井」と矢瑠樹が聞くが返事は無く。辺りはシーンとし、俺の耳がミ~~ンと言う音を拾った。「休みか?全くあいつは....」

ガラガラガラ!!!

突然の騒音に皆はビックリし、黒板側のドアに目を向けた。そこに立って居たのはゴリゴリのヤンキー『悪井男児(わるい だんじ)』だった。

「おはよう悪井!ギリギリだぞ~」続けて「先生的にはもう少し早く来てくれると嬉しいぞ!」と、

優しき先生パワーを送るが、

悪井は

「チッ...」と、一番奥の席まで聞こえる舌打ちを放った。どうやら優しき先生パワーが効かなかったようだ。キーンコーン♪カーンコーン♪

時刻は16時過ぎ、今日の授業が全て終わりカバンを持ち教室を出た。知代は部活なので帰りは一人だ。決して『行きはよいよい帰りは悪い』ではない。むしろ逆だ。家に帰る途中、自動販売機で炭酸にするかコーヒーにするか迷っていると、オバサンの井戸端会議が聞こえてた。「あそこの旦那さん、株で失敗したらしいわよ~」「えぇ!?そうなの?」「借金3000万円でしょう?」「だからあの奥さん地味な格好になったのね」「あ~怖い怖い!」なんてことないよくある風景だ。敗者はいつの世も嘲笑われるものだ。俺はお茶のボタンを押し帰路に着いた。家に着くと二階の自室に行き、制服を着替え、一階のソファーに寝転がった。スマホに電源を入れ、野菜のカブアイコンをタップした。俺が買った株。『にゃんタマ美』は国民的アイドルグループ『にゃんポポ*』のメンバーでエース的存在だ。デビューから1年弱で出すCDは必ず100万枚を越えるイケイケアイドルなのだ。デビューしたての頃は全く人気が無く見向きもされてなかったが、テレビ初登場でバラエティー番組に出演し、トークが受けたのだ。その番組を見ていた俺は直ぐ様にゃんタマ美の株を買った。当時の株価は10000円。小遣いを全部はたいて5株を購入した。それから数週間後に発売された3rdシングル『マタタビ*マタニティー』で一躍国民的アイドルグループに上り詰めたのだ。「さてと、いくらまで上がったかな。今朝確認した時は、305万円だったが」画面をタップし、棒フラグが出た。俺は驚愕した。棒が斜め下を向いていたのだ。滑り台なら大人気になる程の。震える身体に力を入れ、テレビを付けると緊急ニュースが放送していた。『にゃんタマ美交通事故で即死!』目の前が真っ白になった。タマ美の株価が0円になった。俺も死んだ。


次回予告!


「ちくしょう・・・タマ美ぃぃい!!!」


一つの命が失われ、一人の男が絶望する!


「初めまして、そしてさようなら」


突如現れた謎の転校生!


「私は貴方の株を60%も保有しているのよ?」


頭疲れる戦略バトル!


「ケケケ・・・僕にはまだこの株主優待券がある」


目まぐるしいスピードで進む本格SF!


次回、魔法少女☆タマ美*第七話

『侵略、大怪獣ムササビン!』


アナタのハートにピロピロピ~♪♪♪

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