もう会えないあなたへ(9/15)縦書き表示RDF


いよいよ事件も始まってきたのですが。
事件については詳しく書けません(泣)
でも、書き続けます。
もう会えないあなたへ
作:ERIKA



9.平次の誓い


「工藤。」

「ああ。」

「人質をとって、トイレに立て篭もるつもりなんか?」

「くそっ!女性を狙ってわざわざトイレにしたのか!?」

「どうする、工藤。」

「とりあえず、目暮警部に連絡だ。」

「よっしゃ!俺がかけるわ。」


平次の通報により、警察が現場へやって来た。

休日を楽しみに来たはずの客たちが、今は恐怖の場と化したトイレを囲むように人垣を作っている。
人質の家族や友人、恋人などがその人たちの名を呼び、泣き叫んでいる。
目暮警部は刑事たちを連れ、人垣を掻き分け、平次たちのもとへ急いで様子を伺う。

「服部君、男はどこだね?」

「便所ん中に、立て篭もっとるわ。」

「人質が何人かわかるかね?」

「最初にナイフをつきつけられた人が1人。」

「それから、悲鳴に気づいて出てきた人が、4人だよ。」

目暮が到着するまでの間、男はナイフで脅し、5人の女性を人質にしていた。


「平次、どないするん?」

「あぁ、便所とはいえ立派な篭城やからな。迂闊に手は出せんわ。」

「コナン君、危ないから下がっててね。」

蘭にそう言われても、下がる気はない。
体は小さくなっても、工藤新一としての探偵の血は消えていない。



「涼子!!!」

突然、平次たちの後ろから叫び声が上がる。

「涼子!!!涼子!!!!」

「おばさん!」

「七海ちゃん!!涼子は!?あの中にいるの!?」
40代か、涼子と叫んだ女性は、七海と呼ぶ女性に必死に聞いていた。


「おばはん。あんた、人質の中の女性と知り合いなんか?」

突然声をかけてきた少年に、誰なのかと驚いている。
「あ・・・あの中に・・・私の・・娘がいるんです!!!!」

「娘?一緒に来てたんか?」

「いえ、この、七海ちゃんと来てたんです。それで、七海ちゃんが、涼子が人質にとられてると連絡してきてくれたんです。」

「涼子がトイレに行きたいって言ったんで、私は外のベンチで座ってたんです。そしたら、悲鳴が聞こえて、出てきた涼子もナイフで脅されて・・。」

「お願いします!!!あの子を・・あの子を助けてやってください!!!!お願いします・・お願い・・」
助けを請うて叫びながら泣き崩れていった。七海がすぐに支える。
ショックで名を聞く警察に答えられない代わりに、七海は涼子の母で松本しずえというと伝えた。


「おばちゃん。」


「え?」

「大丈夫やで。涼子さんも他の女性も、みんな助かるで。」

「・・・なんで?・・なんで、そう言い切れるの?・・・」

泣き崩れて地面に座り込んだしずえに合わせ、自分もしゃがみ込み、和葉は自信に満ちた目で言い切る。

「だって、ここにおるのは西の名探偵、服部平次やで!あたしの幼馴染なんや。平次が解決できへん事件なんてあらへんもん。絶対に、平次が助けてくれるからな。」

日本を守る警察がたくさんここにはいる。なのに、この少女は、なぜまだ高校生であろう少年の名を挙げるのだろう。


「な?平次。」

「おぉ。まかせとけ。」

な?としずえの顔を覗きこみ、さらに自信に満ちた笑顔を向ける。

「お願いします。」

自分でも不思議だった。高校生探偵を信じきる少女の言葉が、大丈夫だと思わせていく。


和葉と蘭も寄り添い、犯人の動きを伺う。

「目暮警部!犯人の情報が入りました!」

高木刑事が、犯人の情報が書かれた紙を持ち、こちらへ向かってくる。

「犯人は、土井 悟、35歳です。以前、ここで勤めていたようです。」

「なんで辞めたんや?」

「あ、服部君、コナン君まで。」

「で?」

「支配人と揉めていたそうです。勤務態度が悪く、それなのに給料や待遇のことで文句を言ってきていたそうです。そこで、支配人は土井を解雇したと。」

「逆恨みの線か。」

「ああ、そうだな。」

犯人は以前として、動きが無い。



「涼子。涼子。」
娘の名を祈るように繰り返し呼んでいる。

「おばちゃん、涼子さんは大丈夫やで。やって、お母ちゃんがこんなに祈って心配してくれてるんやから。きっと、涼子さんもおばちゃんがここに来てくれてるって知ったら安心するで。」

「涼子は・・・私が再婚した頃から、私を避けていました。」

「なんで?そんな・・・。」
悲しそうに娘のことを話すしずえに、和葉は胸のあたりが痛んでくる。

「涼子の父親は、ずっと私に暴力をふるっていました。・・・でも、涼子には手は出さなかった。涼子も父親にはなついていました。でも、涼子にいつ暴力をふるわれるかわからない、そう考えたら怖くて。涼子を守るには、こうするしかないと・・・涼子が5歳の時、離婚しました。」



5歳の時に・・・・。

運命の悪戯か、5歳という響きに和葉の脳裏に浮かび上がるのは、白い布を顔に掛け、もうあの優しい声をかけてはくれない母の姿。

「でも。・・・おばちゃんは、涼子さんのためを思ってしたことやろ?涼子さんも、わかってくれてんのとちゃうの?」

娘をただ守りたかった。
この愛しい娘だけは、大好きな父親から暴力を奮われることだけは嫌だった。
でも、涼子にとって自分は大好きな父親から離した張本人。

「あの子は、きっと・・・私を・・・憎んでいます。・・・あの子は父親が大好きでした。・・・だから、言えなかった。・・どんなに責められたとしても、あの子の父親が暴力を奮ってたなんて、・・・あの子は絶対に悲しむから。」

悲しくても、涼子をずっと大切にしていても、すれ違ってしまっている。
和葉は、それでも羨ましいなと思った。
お母ちゃんがこんなにも想ってくれていて、ずっと傍にいてくれる。
その娘が今こうして、命を奪われるかもしれないという状況にあって、この母はどんなに辛いだろうか。


(絶対に。絶対に、救い出してあげてな、平次。)

しずえの背を擦りながら、大好きな、いつも信頼してやまない幼馴染に願う。


視線をしずえから平次へと動かしたとき、平次と目が合った。

「へ・・じ?」

目が合った瞬間、平次は自分をいつもの自信満ちたキラキラした瞳ではなく、寂しそうな悲しそうな瞳をしていた。

でも次には、力を入れ直し、和葉の大好きな顔をしていた。
 

「絶対に、助け出してやるから心配すんな。」

「うん。」




「オマエも救い出してやる。」


「え?」

何も言わなくても、絶対にと誓ってくれたことは嬉しかった。

でも、『オマエを救い出してやる。』

この言葉の意味がわからなかった。

人質にはなってない和葉の何を、救い出すのかこの時は理解できなかった。

何を?と聞こうとしても、平次はコナンのもとへと戻ってしまっていた。



何言うてんの、平次?


こんばんは、ERIKAです。
本日2回目の投稿でした。
勢いつけてこのままラストまで突っ走ろうと思っています。
和葉にとって、母への想いがあふれ出してしまう展開へと続きます。
読んでくださってありがとうございました!











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