13.通じ合った想い
土井が警察と共にここから去った後、残った人々はまたそれぞれ散らばって行く。
「和葉ちゃん、でよかったかしら?」
「え、あ、はい。」
「ありがとう。本当にありがとうね。」
和葉にお礼を言ったのはしずえだった。
なにか礼を言われるようなことをしたか覚えのない和葉は、平次たちの方を向き困っている。
「あたし・・・なんもしてませんけど・・・。」
「ううん。あたしに教えてくれたでしょ。」
今度は、しずえの隣りに寄り添う涼子だった。
「あたし、お母さんのこと何もわかってなかったんだ。」
恥ずかしそうにはにかむ。
でも、和葉はそんな涼子を嬉しそうに見ている。
「小さい頃大好きだったお父さんとお母さんが離婚した理由が本当はなんだったのか聞きもしなかった。」
「お母さん、教えてくれないんだもん。そんなのずるいよね?」
和葉に同意を求めながら、いたずらっ子のように笑い、一緒に和葉も「うん、そうやね。」と笑っている。
「それを聞こうともせず、新しいお父さんと結婚してしまったことがすごくショックで嫌で、お父さんにもお母さんにもずっとひどいことばかりしてた。」
「そんなことないわ。」
泣きそうになる涼子の手を、しずえは両手で握る。
「それでね、必死にお父さんとあたしを仲良くさせようとしてるのが嫌だった。あたしのお父さんは一人しかいないのにって。そしたら、段々お母さんはあたしが邪魔なんじゃないかなって勝手に思うようになってた。新しいお父さんとうまくいきたのに、あたしがいたら壊れてしまうって思ってるんだろうって。」
「でも、涼子さんはもうわかったんやろ?」
涼子としずえの顔を見ていればわかることだったけど、涼子の口から聞きたかった。
「うん。ありがとう。和葉ちゃん本当のおかげよ。ありがとう。」
和葉のもとへ歩いて来ると、やさしく抱きしめて言った。
和葉も背中に手を回し、
「あたしなんか、なんもしてへんって。涼子さんのほんとの気持ちは違っただけやで。」
「あのとき、和葉ちゃんが教えてくれなかったら、あたしはずっと母を憎んだままだったよ。そして、お母さんに感謝することもできなかったと思う。」
涼子は離れると今度は自分の母へ向きなおす。
「お母さん・・・お母さん・・・・ごめんね・・・ほんとにごめんなさい。」
「・・・・涼子。」
母に謝りながら、泣き始めた涼子をしずえは抱きしめる。
「お母さんは・・・ずっと・・・ずっとあたしを・・・守ってくれたのに・・・なのにあたしは・・・」
「・・・今でも前のお父さんは大好きだけど・・・・今のお父さんも・・・ほんとは・・大好きなの・・・」
じっと娘の声を聞いたまま、二人の父を大好きだと言ってくれたことに嬉しくて、抱きしめる力を強める。
「それでね・・・さっき言ったことは・・・全部嘘なの・・・ほんとは・・・あたしは・・・」
「涼子、大好きよ。この世で一番あなたのことを想ってるから。」
声に詰まった涼子の言葉を先に伝える。
「・・・うっ・・・っく・・・お母さん・・・・大好き・・・・今までもずっと・・・大好きだったの・・・お母さんにずっと・・・傍にいてほしかった・・・」
娘の涙を拭いてやりながら、自らも涙が零れる。
すれ違っていた親子が、本当はずっとお互いを想っていたことを伝え合い抱き合う姿を、和葉は微笑みながら見ていた。
「本当に、よかったね。」
「蘭ちゃん。」
隣りに来た蘭も嬉しそうに見ている。
「和葉姉ちゃんのおかげだね。」
「コナン君。あたしはなんもしてへんって。」
「ううん、違うよ。和葉ちゃんがいなかったら、きっとまだすれ違ってたよ。」
「そうかなぁ////」
「そうだ!!コナン君!!!」
え゛っ?と、コナンは蘭が怒っていることに気づいてオロオロし始める。
「なんで、あの時・・・私の前に出てきたの!!」
「・・・蘭姉ちゃん。・・だって、蘭姉ちゃんは僕が守るんだもん。」
「・・・コナン君・・・でも、もしあの時犯人が止まらなかったら・・・コナン君が刺されてたのよ・・・私・・・そんなの・・嫌だよ。」
土井が怯んで、コナンが刺されることはなかったものの、もしあの時・・・と考えると、また蘭に恐怖が襲う。
「でも、僕、約束したんだ。」
「約束?」
「うん。新一兄ちゃんと約束したんだ。」
「・・・新一と?」
新一とコナンが約束してたなんて知らなかった。
「新一兄ちゃん、言ってたんだ。『俺は、今は蘭の傍にいてやれない。蘭になにかあった時、守ってやれないんだ。』って。だからね、僕が約束してあげたんだ。」
「・・・・・」
「僕が、新一兄ちゃんの代わりに、蘭姉ちゃんを守ってあげるって。」
「・・・・コナン君。」
「だからね、これからも僕が守ってあげるから。」
「・・・・ダメよ。」
「え?」
蘭はいつもコナンを叱る時の顔で、仁王立ちになっている。
「私がコナン君を守ってあげる。」
そう言うと、笑顔に戻る。
「でも・・・。」
「私、もっと強くなる。それで、コナン君が危ない時は守ってあげる。新一が心配しないように、強くなるから。」
(そんなに自信持って言われたらなんて返せばいいのかわかんねーよ。・・でも、俺は蘭を絶対に守るからな。)
「新一が帰って来たら、一緒に遅い!って言ってやろうね!あんまりにも遅かったら、私の回し蹴りで・・・」
「だだ大丈夫だよ!!新一兄ちゃん、そんなに遅くならなように頑張ってるよ!!!」
「そうかなぁ・・。」
(ほんとに、回し蹴り喰らいそうだな・・・ハハ・・こりゃ早く元の姿に戻らねーとな・・)
ほんま、コナン君、蘭ちゃんにタジタジやな。
蘭ちゃんには工藤君も、コナン君も適わんのやね。
二人のやりとりを見て、笑ってしまった。
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