12.大切な人を守るために
(平次。)
もう隠しきれへんかったお母ちゃんへの想いが、事件が起きてるのに溢れ出して止らへんかった。
自分でも、何を言ってるんかわからんくて、でも止めることなんかできへんかった。
あんなに隠さんとって思ってたのに。
みんなにバレてしもた。
どないしたらええんやろ。
知られたらあかんかったのに。
「・・・・和葉。」
まだ、和葉を離さず、平次は名を呼び続ける。
「おい!!!お前ら!!コイツの命が危ないのを忘れたか?」
全員が和葉に目を奪えわれていた。
土井の怒鳴り声で、涼子へと一斉に目を向ける。
「涼子!!」
どうしたら、このまま人質に危害が及ばず助けることができるだろうか。
「目暮警部!!支配人が来たようです!!」
人ごみの中に、スーツ姿の男性が刑事と走ってくる。
「やっと来やがったな!!!お前のせいで!!!!殺してやる!!!」
そう叫び、涼子を突き飛ばした土井はそのまま支配人に向かって走り出す。
手にはナイフを持ち、今すぐにも刺してやろうと手を上げている。
突き飛ばされ地面に倒れた涼子のもとへ、しずえはすぐに駆け寄り抱きしめる。
「涼子・・・涼子・・・よかった・・・ほんとに・・・よかった。」
土井を止めようと、刑事たちが土井に飛び掛るがスピードのついた土井を捕まえることができない。
土井が目指す支配人までの道のりには、和葉たちがいた。
「あ、危ない!!!」
土井と向かい合う形の平次がそれに気づいて叫ぶ。
でも、土井はあと少しのところまで来ていた。
「くそっ!!!」
コナンが腕時計型麻酔銃を発射しようと構えようとしたが、そんな時間はなかった。
平次も和葉を後ろに回し土井まで行く時間はない。
和葉は土井に背を向けている。
「みんな!!危ない!!!」
3人の盾になったのは蘭だった。
手を精一杯広げ、土井に向かって立つ。
「蘭!!!」
「な!?」
「コナン君!!!」
蘭が前に出たのを見た瞬間、コナンはすぐにその前へと出ていた。
「やめてー!!!」
蘭はコナンが自分の前に立ったのを見て、土井に叫ぶ。
小さな子どもが、自分よりも大きい人たちを守るために土井に立ち塞がる。
その姿を見て、一瞬怯んでしまった。
その隙を平次は見逃さなかった。
平次の周りで事件を見ていた清掃員が、後ろへと逃げていったときに落とした清掃道具の中に箒もあったのを見逃していなかった。
和葉を土井のいない方へ押し、蘭とコナンの前にさらに飛び出し、土井の肩を目指し箒を力いっぱい振り落とした。
「グワッ!!!」
倒れた土井を急いで刑事たちが取り押さえる。
「おじさん、おじさんの子どもの名前は何?」
コナンは蘭の前に立ったまま土井へと問いかける。
蘭は、土井の前に飛び出してきたコナンを後ろから抱きしめたままだった。
「は?」
刑事に手錠をかけられながら、この場に似合わない質問に情けない声を出してしまう。
「おじさん、子どもがいるんでしょ?」
「・・・ああ。」
「名前は?」
「・・・明。」
「明君、お父さんのこと大好きだよね。」
「・・・そうだな。」
「どんなにお父さんが仕事をうまくできなくても、明君のためになんでもいいから仕事を探してくれてたら、喜んだだろうね。」
「・・・・うっ・・うぅ・・」
「お父さんが、和葉姉ちゃんみたいに家族を亡くして辛い人を作ってたら、明君も同じだよ。」
「・・・・・っ・・」
「お父さんは亡くなってなくても、明君もお母さんも、悲しむよ。」
「・・・・・・」
土井は、自分の息子と年が近いだろうコナンに言われる言葉にただ泣き続けた。
「オヤジってのはな、オカンでも、子どもからこんな人間になりたいと思われることを忘れたらあかんのや。子どもにこれからの人生の希望っちゅうもんを与えてやらんといけんのやで。」
「やり方間違えてしもうたんやね。」
平次の続きを和葉が続ける。
「明君、待ってんで。おっちゃんがまたいつもの大好きなお父ちゃんになって、帰って来るのを。」
「あきらめちゃダメだよ、おじさん。」
「・・・・ああ。明も待ってるしな。」
自分よりずっと若い4人の子どもたちに忘れていたことを教えられ、今更遅い後悔の念がどっと押し寄せる。
でも、土井の顔は和葉たちが知らなかったいつもの顔に戻りつつあった。
「土井、行くぞ。」
目暮警部らに連行されて行く。
「悪かったな。ほかの人たちにもあやまってたと伝えてくれ。絶対に罪を償って出てくると。・・・それから、ありがとな。」
こちらを向かず、背を向けたまま土井は伝えてそのまま連れられて行った。
|