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4話 母との記憶
 ぴちゃん、ぴちゃん──

 冷たい水滴が硬い石畳の床に落ちて弾け続ける。

 足元から心から冷える湿気に包まれた薄暗い牢獄に一人つながれた褐色の肌の女がいた。

 やせ衰えいたるところあざだらけの身体。無残に破り捨てられた衣。そして目を覆う血で汚れた包帯──

 レヴィの見た最期の母の姿の痛々しさは生涯忘れない。否、忘れることができない。

 レヴィの母はその屋敷の非魔血の女中だった。

 だけど傲慢で醜悪な屋敷の主にその美しさを気に入られ性奴隷として彼女を散々いたぶり続けた。

 そして、その結果彼女はやせ衰え盲目になりその屋敷の主に捨てられた。

 この冷たい監獄に永遠に──

 幼いレヴィが母の元に来たときにはもう彼女の命は先短いものだと思ったけど、どうしてもそれを認めたくなかった。

 一緒に逃げよう──それが一番の願いだったけど、それもかなわないことも一番理解していた。

「レヴィ……あなたは一人で生きなさい」

 彼女はレヴィに対し最大の優しさでそう言ったのだろうけど、レヴィには最大に残酷な響きにしか聞こえなかった。

「イヤだ! 母さんと一緒に逃げるんだ!!」

「甘えないで……! 私は……もう逃げられない」

「でも──」

 そのときレヴィはまだ十歳、一人で生きるなど到底無理だと思った。

 だけど──あの時はそれ以外方法がなかった。

「レヴィ──私のペンダントを取って」

 レヴィにはそれが彼女がいつも肌身離さずつけていたサラマンダーのペンダントだとすぐに気づいた。

だが、それを形見にしてくれといわれるのではないかと思い余計悲しくなったのを覚えている。

「いい、レヴィ──」

 ずっしりと重いペンダントを握り締めたレヴィを母は見えない目でじっと見つめた。

「そのペンダントがあなたをお父さんの元に誘ってくれる。だから──それを大切にして……」
久世さくらのはげみになります!
暗殺魔法士に拍手!


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