3話 運命の出会い
「くっそー……こんなはずでは」
どこまでも続く長い廊下を全力疾走しながらレヴィは苦々しくそうつぶやいた。
ミュラーニッヒ卿を殺害したまでの展開は計画通りだったはずなのに、部屋を出る際あの魔血令嬢と 鉢合わせしてしまったのが運の尽きだった。
あの女の叫び声のせいで屋敷中の魔血たちがこの事件を知ることになりたちまち俺は袋のネズミに──本当についてない話だ。
だがそんな文句を言っている暇などあるはずがない。
こんな広すぎる屋敷で衛兵どもと永遠に追っかけっこする気なんてまっぴら御免だ。
さっさと脱出口を見つけて一刻も早く外に出なければ──
「いたぞ!」
その瞬間前の辻から衛兵たちが飛び出しレヴィの進行方向を遮った。
だがレヴィはそれに臆することなくスピードを落とさずつっこんでいく。
そして、それと同時に自分の血にある命令も下した。好きなだけ暴れろ──と
レヴィが手を突き出したその瞬間、衛兵が立っている場所で大爆発が起こった。
屋敷中に響く大音響に巻き上がる黒い炎──その横をレヴィはただまっすぐに疾走していった。
いくらやったってキリがない。
相手は量で攻めてくるのだからまともに戦ったら勝てる訳がない。
こんな状況にいつも合っているからこそレヴィは早くこの屋敷から出たくてしょうがなかった。
この屋敷さえ脱出してしまえばあとは闇に紛れ逃げるのがかなり楽になるのに──何故窓際に出ないんだ!!
また何度目かの四つ辻の前に来るとレヴィは指先に小さな黒い炎を出す。
ふっと右側に揺れた黒い炎を見てレヴィは迷うことなく右の辻を曲がった。
しばらく走っていくとそこにはやっと念願の窓が広がっていた。
やった──!
心の中で小さなガッツポーズをしたレヴィは迷うことなくその窓向かって突進しようとしたそのときだった。
はっと何かを感じたレヴィはいきなり急ブレーキをかけてその場に止まった。
それは敵の存在でもなんでもない。ただ目の前に落ちていたあるペンダントが目に入ったがためレヴィは本能的に足が止まったのだ。
それを見たとたんものすごく嫌な予感がレヴィをおそった。
だけどそれを拾わずにはいられない自分の本能には逆らえなかった。
レヴィは恐る恐るペンダントを拾い手のひらにのせてじっと眺めた。
それはスピネルをあしらいその周りを絡まるように縁取るのは見事な銀細工で施されたサラマンダーのペンダントだった。
それを見てレヴィは思わず絶句した。
レヴィにはそのペンダントに見覚えがあったのだ。
そして、焦って自分のペンダントも出そうとしたそのときだった。
「ちょっと! それ放しなさいよ!」
「え──!」
その少女の声でレヴィは一気に殺気立ちそちらを睨み付けた。
そこにはオレンジ色の見事なドレスに身を包みローズ色の髪をなびかせた魔血令嬢がどんと仁王立ちしていた。
「聞いてるの? そのペンダント、私のなの。だから返してちょうだい」
何だ、この強気のお嬢様は──
いかにも異質な暗殺者である自分に物怖じをしない魔血令嬢を見てレヴィの殺気は徐々に薄れどんどん困惑していった。
「いい。ペンダントを黙って返してくれるならあなたのこと見逃してあげるわ」
「そうじゃなかったら?」
「それって私のことを殺すってこと?」
「そういうわけじゃないけど」
そう言うとレヴィはペンダントをかるく放りながら彼女を冷めた目で見た。
「俺は暗殺者だぞ。もうちょっと怖がってくれてもいいんじゃないかな」
その一言に彼女はけらけらと笑った。
「やだー。暗殺者って言ったってあなた非魔血でしょ? 魔法の使えない非魔血なんて怖くも何ともないわ──」
彼女がそう悠長にしゃべっていたその時だった。
彼女の目の前にあったカンテラが急に黒く燃え上がりガラスを破壊した。
それを見た彼女は唖然とした様子でレヴィを見つめた。
「魔法──使った?」
「怪我したくなかったらさっさとお家に帰りな。お嬢様」
「馬鹿にしないで!そのペンダントは私のお父様がくれた宝物なの──!」
彼女がそう言った瞬間、レヴィは彼女にペンダントを投げて渡した。
「俺はここに長居したくないんだよ。ほら、よけいな奴らもこっちにきてるし」
そう言われてレヴィは彼女のすぐ背後から近づく人影に目を向けた。
衛兵が10人ほど──自分を捕縛するためかもしれないが、もしかしたら彼女を守るためにあんな大人数やってきているのかもしれない。
「じゃ、俺……そう言うわけで行くな」
レヴィは一言そう言うと、そのまま地を蹴って窓ガラスに体当たりした。
夜の闇にきらきらと光るガラスの破片の中レヴィは服の中に入れていた自分のペンダントをぎゅっと握りしめた。
──なんであの女の持っているペンダントと同じなんだ。
闇の庭の中へと落下していきながらレヴィはただそれだけが気がかりでしょうがなかった。
久世さくらのはげみになります!
暗殺魔法士に拍手!
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