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23話 ダークサラマンダー
 レヴィは黒い刃を振りぬき目の前の魔血の身体を一閃させた。

 男はどさっとその場に崩れ落ちたが、そうすればまた新たな敵がレヴィの前に立ちふさがる。

 レヴィは荒い息を吐きながら周りを取り囲む彼らを睨み付けた。

 先ほどからこの悪循環の繰り返しばかりだ。目の前のイエロ・ティグレを何人倒してもその倍の奴らの仲間がレヴィの前に現れる。

 一体、イスラーグは何様のつもりなのだろう──?

たかが非魔血の学者の始末のためにこれほどまで本気になることはいくらなんでもないはずだ。

だとしたらこのイエロ・ティグレの理由は一体何なんだ? 何の目的でランクスのためにこれほどの人員を差し向けているのだろう──

「とうとう追い詰められたようだな。濁血──」

 ジリジリと間合いをつめるイエロ・ティグレの一人がレヴィに向かって一言そう言った。

 その言葉にレヴィは黙って黒い刃をすっと構えて答えた。

「貴様はまだ何も知らないのか? なぜ俺たちが非魔血ごときにこれほどまでの尽力するかまだ気づいてないようだな」

「何──?」

 レヴィはその言葉に対し始めて訝しげな表情を浮かべた。それを見て取り囲むイエロ・ティグレたちは冷ややかな笑い声を上げた。

「冥土の土産に教えてやるよ。俺たちの狙いはあんな科学者ぶった雑魚なんかじゃねえんだよ。本当の狙いは──レヴィ、お前の始末なんだよ」

 その言葉を聞いてレヴィは目を丸くして絶句した。それを見て彼らはさらに面白がるようにぺらぺらと喋りだした。

「大佐は俺たちにもあの非魔血の科学者の始末と同時にそれを邪魔をするものは誰であろう抹殺しろという指令も出した──つまりあの方はお前が暴走するということをすべて織り込み済みで俺たちに命令を下したんだ」

 ──なるほど。そういうことだったのか。

 その言葉を聞いてレヴィは不思議に納得したように穏やかな表情を浮かべた。

 この仕事を遂行してもしなくても自分はイスラーグに始末される運命にあったのか。そう思うと何故だかすべてに踏ん切りがついたような気がした。

「その顔は自分の宿命(さだめ)に観念したようだな」

 それを見てイエロ・ティグレたちは嫌な笑みを浮かべながら光り輝く魔剣を構えた。

「それならそれでおとなしく──死ね!」

 彼がそう言った──その瞬間だった。

 ひゅんと何か空を切って飛ぶ音がしたと思うと、レヴィに襲い掛かろうとしていたイエロ・ティグレが持っていた魔剣を高く弾き飛ばした。

 手から弾かれた魔剣は魔法の刃を失いただの金属片になって地面に落ちた。

「レヴィ! あきらめちゃダメよ!」

 魔剣を弾き飛ばした鞭を振るいながらセドナは高々とそう叫んだ。

一度逃がしたはずの彼女の思いも寄らぬ登場にレヴィは呆然とするしかなかった。

「お前──何で……」

「何でって──あなたにすべての責任を押し付けられないもの」

 そういうとセドナはこの場には似合わない無邪気な笑みを浮かべレヴィに駆け寄った。

 そんな彼女を見てレヴィはいらっとした表情を浮かべ思わず強く睨み付けた。

「馬鹿野郎! ランクスと逃げろってあれほど言っただろ──」

「いいの。あなたと戦うのは自分の責任だから──」

「そういう問題じゃな──!」

「危ない──ッ!」

 セドナがそう叫んで前に飛び出したその瞬間であった。

 ひゅうんと飛んできた細長い氷柱が彼女の右肩にずぶりと突き刺さった。

 はっと目を見開き身体を硬直させるセドナ。そんな彼女を目の当たりにした瞬間、レヴィは慟哭の表情を浮かべた。

「セドナ──ッ!」

 その呼びかけに彼女は心配させまいとにっこりと微笑んで見せた後、ぐったりと倒れこむ。

 その瞬間、レヴィは身体にある変調をきたし始めた

 みるみる早く高鳴る心臓、カッと火照るように熱くなる身体。

まるで身体の中に棲まう何者かがある一点へとさかのぼっていくかのように体中で暴れだしていくのがわかった

「許せない──」

 レヴィは力なく横たわるセドナを抱きかかえて一言そう言ったその瞬間、彼らの周りは一気に灼熱の空気が包み込む

 そして、レヴィの足元から闇に侵食していくような黒い炎が音もなく一気に当たり一帯に広がった。

「お前ら、絶対に許さない!!」

 そう言った瞬間、レヴィは自分の視界が一気に真っ暗になったような感覚を覚えた。

 だけど、気を失ったわけではない。

 知らず知らず自分が作り出した闇の炎で辺り一帯がすべて深い闇に包まれただけであった。

 遠くでは、ギャアギャアとなにかが激しく咆哮する声が聞こえる。

 静かに上空を見ると自分の炎と同じ色をした真っ黒な炎の龍が黄昏の空に舞い上がっていた。

 それは真っ赤な瞳でじっとレヴィを見据えている。まるで早く命令をくれを言わんばかりに──

そうか……暴れたいのか。

その龍の瞳を見てレヴィはすっと手を天高く上げると、黙ってその手を目の前にいるイエロ・ティグレに向かってかざした。

また夕闇にダークサラマンダーの咆哮の声が響き渡る。

それは身体うねらせ地面めがけて突進すると同時に当辺りは灼熱の闇に突き落とされた。
久世さくらのはげみになります!
暗殺魔法士に拍手!


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