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20話 鉄線のエリオル
 俺はなんて弱い存在の人間なのであろう。

 自分の命と引き換えに請け負ったランクス・ミシュランの暗殺任務へ向かう道中、レヴィはただ自分の意志の弱さに歯軋りするしかなかった。

 イスラーグに刃をつきたてられ脅されて、結局命乞いしか出来なかった何とも情けない自分。

信念など元よりなかった。結局自分も武器としての輝きを失うことが怖かっただけだった。

 自分をもっと輝かしてくれるイスラーグに下手に逆らってポイ捨てされることが暗殺魔法士であるレヴィにとっては耐えられないことだった。

 だが、そんな自己中心的な理由でランクスたちに刃を向けることになるとは──

 レヴィはそのことを考えるとなんとも複雑な気分に襲われた。

 きっとランクスもエリオルも、そしてセドナも──みんな俺のことを恨むに違いない。

 武器として使い捨てられることを拒んだ末に、大切なものを壊そうとしている俺をきっと許さないだろう。

 だがこれも自分が選んだ道、あの場で命乞いしか出来なかった自分の報いでしかないのだ──

 そんな深い迷いの中再び大通りの目の前にあるランクスの自宅兼研究所を訪れたレヴィは深く息を吸って何とかしてにじみ出る殺気を抑えようとした。

 きっと昨日の様子であれば、自分はきっと友人として彼らに迎えられるに違いない。

だけど本心を知ったそのその時にはきっとだまし討ちだと思うであろうが──

レヴィは決心したように前を見るとランクスの家のドアを緊張の面持ちでノックした。

すると──出てきたのはなんとあの只者ではないランクスの妻エリオルだったのだ。

「あら、あんただったの……」

 エリオルはレヴィの顔を見ると明らかに不機嫌そうな顔を浮かべた。

 いつものことながら彼女だけには歓迎されてはないようだ。

「あのさ……ランクス──いる」

「ランクス? 今日は科学者仲間との勉強会だってセドナをつれて教会に行っちゃったけど──」

 その言葉を聞いてレヴィは明らかな動揺を覚えた。

 何故こんなときにちゃんと家に居ないんだ──これじゃあ、余計な仕事が増えるだけじゃないか。

「で──今日はランクスに何の用なのかしら?」

 そんなレヴィを見てエリオルは明らかに引きつった笑みを浮かべて言った。

 だが目は全く笑っていないどころか寒気がするほど冷たく、明らかな嫌悪感が見て取れた。

「別に──あんたには関係ないだろ」

「ううん。大有りだよ。暗殺魔法士さん」

 エリオルがそう言ったそのとたん、彼女は再びレヴィに向かって襲い掛かった。

 やばい──そう思ったときにはエリオルは壁にレヴィを追い込み、女と思えない強い力で彼を左肘で羽交い絞めにし、即座に彼の首に細いワイヤーみたいなものを回した。

「あんた私があんたの殺気に気づいてないとでも思ってた? 馬鹿だねえ──これでもあたし元はといえばあんたと同業者なんだから」

「同業……者?」

 レヴィは徐々に首を絞めるエリオルのワイヤーを気にしながら苦々しい表情で彼女を見た?

 それを見てエリオルは何とも冷たい笑顔を浮かべて言った。

「気づかなかった? あたしはランクスと結婚する前『鉄線のエリオル』って呼ばれてた凄腕の暗殺者だったのよ」

 その言葉を聞いてレヴィは驚きもしたが、彼女の今までの行動を思うと逆に不思議と納得した一面もあった。

 だが、それを聞いたからといって大ピンチであることは変わりがない。

「で──今日こそついにランクスの命でも奪いに来たのかしら? でも残念でしたね。この家にはあたししかいなくて」

「あんた……ここで、俺を……殺す気……か?」

「言ったでしょ。あんたがその気になったらあたしは容赦しないって」

 その言葉を聞いてレヴィは首を絞められながらふっと不敵な笑みを浮かべた。

 それを見てレヴィは明らかに怪訝そうな顔をうかべた。

「何よ……一体」

「あんたさ……こんなところでつまらないことしてる……場合か」

「──どういう意味よ」

「俺のボスは容赦しない奴だよ。今頃教会に居る……ランクスたちは、奴の手先にもうやられているかもな」

「なんですって!」

 それを聞いた瞬間、エリオルは思わずレヴィの首に巻いていたワイヤーを緩めた。

 助かった──レヴィは壁に手を突き荒く息をつきながらさらに畳み掛けた。

「いいのかあいつを助けに行かなくて。早くしないと手遅れになるかもしれないぞ」

「──あんたに言われる筋合いはないわよ!」

 そう言うとエリオルはむっとした表情を浮かべレヴィをにらみつけた。

「わかったわよ。あんたを始末するのはランクスを助けた後にするわ。だから──あんたも教会についてきなさいよ! 逃げ出したらその場でぶっ殺すからね!」
久世さくらのはげみになります!
暗殺魔法士に拍手!


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