16話 ランクスの招待
ランクス・ミシュランの自宅兼研究室は非魔血居住区の中心部の立地のいい場所に建っていた
非魔血初の魔法科学研究所の助手として採用され、現在はフリーの科学者として生計しているだけあって生活水準は比較的一般的な非魔血よりも高いようで、通されたリビングは思っていた以上に広々としておりふかふかの絨毯の上に大きなソファが置いてあった。
「セドナ、本当にコイツをウチにつれてきたんだね」
家の中の入るなり、ランクスの妻であるあの豪気なエリオルが低く呆れたような声を上げた。
「だって、彼がいればランクスの研究が一気に進むかもしれないのよ!? これを見逃すわけにはいかないでしょう」
「でも──」
エリオルはそういうとレヴィを射抜くような視線でにらみつけた
「コイツはあたしたちと対立する奴らの手先だよ。いつ刃を向けられるか──信じられたものじゃないわ」
「そんなこと関係ないわ。もし闇討ちするつもりなら彼は私の誘いに付いてくることはないと思うけど」
「甘いねえ……セドナはそういうところが暗殺者がわかってないよ!」
そういうとエリオルは呆れたような深いため息をついて言った。
「暗殺者ってのはね、そういう標的の油断を突いて命を奪う奴らなんだよ! 付いてきたのはもしかしたらそのためかもしれないわよ」
「あのさあ……」
好き勝手言うエリオルの言葉に眉をひそめながらレヴィはぼそっとつぶやいた。
「俺、魔血専門の暗殺者だぜ……非魔血なんか狙ってどうするんだよ」
「聞きなさい! 反則まがいの濁血の暗殺魔法士!」
エリオルはレヴィをびしっと指差して高々に言い放った。
「もしランクスの命を奪おうと動いたらあたしが逆にあんたを殺すからね! それだけは頭に入れて頂戴!」
「───」
その一言にレヴィは開いた口がふさがらなかった。
非魔血の女が暗殺魔法士の自分の命を脅かすとは到底思えないが、昨日のあの強襲を思うと不思議とそれも適ってしまうような錯覚を覚えた。
しかし、このエリオルという女──一体何者なんだろう。
彼女曰く一応専業主婦らしいがレヴィの目にはそんな風にはどうしても映らなかった。それどころか、彼女には自分と同じにおいさえ感じてしまう。同じような殺気、同じような視線──それは「ブラッドウィキッド」に集う暗殺者とそう変ることはない。
「俺はランクスって野郎には手を出さないよ」
そういうとレヴィは降参したかのように手を上に上げた。
「第一、そんな指令俺は受けてないしな。一非魔血なんぞ狙ったって名誉も糞もない」
「そうかしら。あんたのご主人様は頭の中ではそれを画策してるんじゃない?」
その一言にレヴィはじろりとエリオルをにらみつけたが彼女の推測はほぼ正解だったので反論が出来なかった
近々ランクスは命を狙う相手になるのかもしれない。そのときエリオルは、セドナは自分をどのように見るのだろう──そう思うとレヴィは何とも重い気分になった。
「とにかくさ、とりあえずランクスに会ってみようよ。そうすればエリオルの心配は杞憂だってわかるからさ」
どうやらセドナだけはレヴィのことを心から信用しているようだ。
そんな姿を目の当たりにしてレヴィは彼女だけは絶対に裏切ってはいけないと心の中で小さく誓った。
とにかく今だけはランクスへの敵対心は抑えよう。いつかは敵同士になるのかもしれないけど、今は彼に招かれた客の一人にしか過ぎない。
心を乱してはだめだ。なるべく平常心を持って彼に会おう。
久世さくらのはげみになります!
暗殺魔法士に拍手!
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