11話 アイリス誘拐計画
そうは言ったものの──
たった一人の魔血の女の誘拐が成功しただけで何でも言うことを聞いてやるという放言は多少言い過ぎた感があるなとレヴィは意気揚々と歩く暗殺者集団のちょっと後ろについていきながら苦々しくそう思った
どんなに未知の可能性を持つお嬢様魔女であろうとも、プロの非魔血の暗殺者が寄ってたかって襲ってくればひとたまりもないに違いない。
数と条件さえ合えばこの任務はどう見たって暗殺者側が有利なのは目に見えているのだ
それなのに──ことの勢いに任せて何でも言うことを聞いてやるといった自分はなんて愚かなんだろう。
きっと目の前の彼らの頭の中は任務であるお嬢様などふっ飛んでそのあとレヴィをどう料理してやろうかということでいっぱいであろう。
一度言ってしまったのは仕方がない。何を押し付けられても断りようがない。
今の自分にできることは──彼らの任務が失敗に終わることを切に願うことだけだった。
「ディアス、ホシは毎朝この道を歩いて学校に通うんだろ」
一同が帝都近郊に広がる森の道に差し掛かったころ取り巻きの暗殺者の一人がディアスに誘拐計画を尋ねた。
「ああ、この道の東に師範学校があるから、この寂しい森を抜ける小径は確実に通るだろうな。たしか、ジェラール大佐の言い分ではいつも許婚の医学生と一緒だとか──」
「ええ!許婚は余計だよー」
その言葉に暗殺者連中はブーブーと文句を漏らし始めたが、ディアスはそんな彼らをひと睨みして一括した。
「馬鹿野郎! 俺たちは魔血専門の暗殺者だぜ? たかが魔血貴族の子女ごときにつぶされるタマじゃねえんだよ!」
ディアスのその叱責に一同はしんと静まり返った。
そんな彼らの挙動を遠くから眺めレヴィは呆れたようなため息をついた。
「なんだよ──そのため息は」
それを聞いてやたらイラついているディアスはレヴィをにらみつけたが、レヴィはその瞬間何事もなかったかのように黙って彼に背を向けた
「何度も言うようだけど、お前絶対に手出ししないよな」
「あんたたちを助けたら俺はあんたたちの言うこと聞くはめになるんだぞ」
「いや──その逆だ」
ディアスのその言葉にレヴィは訝しげな表情を浮かべ彼を見た。
「てめえ、言うこと聞くのを阻止するために俺たちを裏切るようなことはないな、ええ?」
ディアスの疑惑の目にレヴィは思わず苦笑いを浮かべ言った。
「俺はなにもしないよ。ただ事の顛末を見届けるだけさ」
「じゃあ、昨日の約束はちゃんと守るってわけだな」
「──俺は正直お前らの失敗を望んでるよ」
「何──」
その言葉に暗殺者一同の怒気を一気に引き上げたが、レヴィは涼しい顔をして踵を返し言った。
「早く位置に着いたほうがいいんじゃないか? お嬢様到着しちまうぞ」
「ちっ……すかしやがって」
レヴィのその言葉にディアス他暗殺者一同は舌打ちしながら森の中に散り散りに消えていった。
木の葉から除く陽は大分高くなってきた。そろそ彼女たちが来てもおかしくないころだ。
久世さくらのはげみになります!
暗殺魔法士に拍手!
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