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前書き
【登場人物】
*シャルギエル=グレアム・ジャンセン(十六歳)……名家ジャンセン伯爵の御曹子。超傲慢怖い物知らずな挑戦的性格で不良に憧れてスラム入りし、ストリートギャングウォリアーの新トップになる。

*カノン・クラレンス(十四歳)……ストリートチルドレンの少女。スパニッシュ系の気は強いが優しく面倒見がいい。シャルギエルの恋人。

【固有名詞】
*SCC……シークレットセレブリティークラブハウスの省略名。スラム街に身を隠すように佇む、裕福な上流階級者ご用達の、地下世界に存在する危険な娯楽場。
【第二章】 ギャングハスラー苦闘編
act,46:綴られる正典は雪天使へ聖歌を謳う


 こうしてシャルギエルもハウス側から、27万2千ドルの小切手を受け取ってカノンと一緒に、部屋へと戻ってきた。
 27万2千ドル。日本円にすれば2千7百15万円に相当する高額なのだが、シャルギエルにとっては所詮は小遣い銭程度でしかない。そもそも実家で着ている普段着だけでも、軽く数百万単位の代物だったりするのだから。なのでシャルギエルは平然と、その小切手をヒラ付かせながら軽い口調で言いやった。
「こいつはスラムの子供達の為に将来設計基金として貯金しよう。今の問題が片付いたらこの金で、みんなに色々してやろうぜ。勿論、更に金額上乗せでな!」
「……」
 “返事がない。どうやらただの(しかばね)のようだ”並に、無反応のまま黙ってソファーに座っているカノン。なので一瞬、シャルギエルはカノンを室外に置き忘れたのかと思わず、ソファーに座ったはずの彼女へ振り返り確認する。そこには確かに彼女は居た。まるでそのままでいると、本当に可憐な陶器人形(ビスクドール)のようだ。もう一度声を掛けてみる。
「おいカノン?」
「……」
 やはり返事がない。シャルギエルは顔を顰めるとそんな彼女の前まで歩み寄り、相変わらずボンヤリとしているカノンの顔を、ヒョイと覗き込んだ。
「お~い! カーノンー? 聞いてっかぁ~!?」
 途端。
「ひゃあああぁぁあぁあぁぁ~~~~~!! まだ待ちなよ!!」
 少々情けなさを含んだ絶叫を上げながらカノンは、顔を真っ赤にして目前のシャルギエルを思いっきり、突き飛ばしてしまった。彼女の容赦ない突き飛ばし攻撃は、余裕でシャルギエルを後方一回転させるだけの威力があった。そんな引っ繰り返っている、無様な姿の彼の様子にやっと我に返ったカノンは、大慌てで傍に駆け寄る。
「ああ! ご、ごめんよ! ちょ、ちょっとその、考え事をしてて……!!」
「いってぇ~……。何なんだよさっきから! 何考えてんのかこっちは分かんねぇんだから、自分ごとで八つ当たりすんじゃねぇよ! こちとらルーレットに負けたせいで少しでも多くの住人を、救えなかった事でへこんでんのにお前にまで辛く当たられたんじゃあ、俺の気持ちのやり場がねぇよ! そんなに考え事に没頭していたいのなら、気が済むまで独りでいろ! もう俺はそれまで邪魔ぁしねぇよ!!」
 すっかり機嫌を損ねてしまったシャルギエルは立ち上がると、プイとそっぽ向いてそのまま室内に備えられてある、視聴ルームへと入って行ってしまった。
「シャルギエル……」
 カノンはそんな彼を見送ったまま困惑した表情で呟くと、すっかり意気消沈して再度ソファーに戻って座り込み、無言のまま(こうべ)を垂れた。そして暫く経ってから思い立ったように、突然脇にあるクッションを鷲掴みにすると大声を上げながらそれでソファーを、何度も殴り付け始めた。
「だってだって! いざその気になっても切り出すタイミング分かんないし! 勇気が要るじゃないか!! あたいから受け入れるのを待つなんて言って、ズルイじゃないか!! だいたい女の子からそんな誘い起こせるかってぇのさ!! バカバカ!! こーいうのって、男の方から自然とリードしてくれるもんじゃないのかい!!?」 
 ひとしきり暴れると、肩で大きく息をしながら漸く動きを止め最後は(とど)めを刺すように、彼が入って行った視聴ルームのドアに全力で、クッションを叩き付けた。そしてウエストを捻って、ソファーの背凭れへと(かじ)り付く様にしがみ付くと、大きな嘆息を一つ吐く。
 ……とは言っても、確かに分かんないよね……。こっちからアプローチしなきゃ……。でもアプローチって、どうやってすりゃいいのさ。例えば肩を露出して流し目を送るとか? スカートを太腿まで思わせ振りにたくし上げるとか? そ、そんなの、もう時代遅れじゃないのかい!? いや、ちょっと落ち着きなカノン! まずは本当にその気があるのかって事だよ! 人に言われたからでやっちまうようじゃあ、余りにも節操がなさ過ぎる。あたい自身は!? シャルギエルに抱かれたい?
 ……。
 …………。
 ――分かんないよ! だって今こうして考え中なんだもん! その気になってるかどうかなんて、分かる訳ないじゃないか! その気になるかどうか確かめるには……確かめるには……えっと、う~ん……。
 途端に胸が、ドキドキしてくる。
 方法は一つ。やっぱり、結局は自分から……。
 カノンは立ち上がるとひとまず、水差しからグラスに水を注いで一気にそれを、飲み干した。そして意を決したように顔を上げると、握り拳を作って勢い良く視聴ルームのドアを開け放った。
 と同時に、大音量のロックミュージック。その全身に反響する重低音に仰天すると、大慌てで中に入り込みドアを閉める。そしてその騒音に顔を顰めながら、中をそっと見渡すとシャルギエルは部屋の中央にあるダブルサイズのリクライニングチェアに、こちらへ背を向ける形で背凭れを倒して横になっていた。照明は少し暗めに落とされてある。暫くドアの前からそんな彼をジッと見詰めてから、カノンは一歩踏み出してそっとゆっくり忍び寄る。そして背後に辿り着き、上から背凭れを倒して横になっている彼の顔を覗き込むと、シャルギエルは瞑目していた。
 まさかもう……眠っちゃったのかね……。
 そう思いながら、彼の横に隣接してあるもう一台のダブルリクライニングチェアに回り込むと、這い上がり今度は自分の左隣になった彼の顔を覗き込む様にして、ゆっくりと顔を近付ける。綺麗な柳眉(りゅうび)。長く濡れたように黒い睫毛(まつげ)。整った目鼻立ち。形良い唇。中性的から少し男寄りな、ハンサム美顔。それがシャルギエル=グレアム・ジャンセンという少年の顔だった。
 嫌な気持ちにさせちゃって、ごめんねシャルギエル。大好きだよ。凄く。だから……確かめさせてね。あたいの――愛欲を……。
 そしてそのまま眠っている彼へ、自ら口づけをするカノン。ゆっくりと、触れる程度に重ねて彼の唇の感触を、実感してみる。柔らかくて、温かい。滑らかな唇。更にもう一度、今度は僅かに唇を開いてからサンドするようにして、キスをする。
 高鳴る鼓動。彼の唇の感触を意識しながら口づけをすればする程、体の奥から熱を発する。そしてそれはまるで、媚薬の様に心地良くさせてうっとりとした幸福感へと、変わる。愛しさの余り、行動は大胆になってゆく。
 続いてカノンは彼の口内へとゆっくり、舌先を差し入れていく。するとシャルギエルの舌と触れ合い、更なる濃厚な滑らかさが彼女の脳を刺激する。無意識に、舌を動かす。次第にその動きは、強引になってゆく。それもその筈。いつの間にかシャルギエルも彼女の舌に応えて、一緒に舌を絡ませていたからだ。
 ダメだ……やめられない。ううん。やめたくない。もっと、もっとこうしていたい。
 もう自力ではどうしようもない、初めて襲われる訳の分からない激情(パッション)。息は荒くなり、体は火照る。ただ無我夢中で、シャルギエルに(むさぼ)りつく。彼もそんな彼女に応えて、我武者羅にカノンを貪る。大音量で鳴り響くロックミュージックなど、最早この幼き二人の耳にも意識にも、入っていなかった。
 カノンの華奢(きゃしゃ)な体に両手を纏わり付かせては、愛しそうに抱き締めるシャルギエル。そして漸く唇が離れると、荒い息遣いでカノンが先に言葉を洩らす。
「ごめん。起こしちゃったね……」
「いや。ずっと起きてたさ……。どうしたんだ急に。お前から迫って来るなんて……」
 シャルギエルは落ち着きのない手付きで、オーディオのリモコンをまさぐり音楽を止める。
「謝りたくて……。ああ、シャルギエル。愛してる。凄く、凄くだよ」
「カノン……!」
 再度キスを交わしては、互いの舌を味わう。不思議にもこういう時、何も言わなくても通じ合うものだ。
「俺を生殺しにする気か……? 俺はそんなに、お前を怒らせる事をしたかな……?」
「うん……したよ。あたい任せにした事……。こういうのって、男から上手く誘ってくれるのがさり気無い、愛情表現じゃあないのかい……? こんな、その、欲情なんて、とても女の子からは誘い難いもんじゃないか……」
 そう言うとカノンは、気恥ずかしそうに赤面すると思いがけずに、自然と目が潤みだす。そんな自分の上に覆い被さって、頭を(もた)げている彼女の赤い巻き毛を優しく撫でながらシャルギエルは、優しい口調で囁いた。
「そうか……。そうだな。少しデリカシーが欠けてたよ……。本来ならそれこそが、紳士の務めだった事を……」
「お願いシャルギエル……あたい、もう――」
 潤む瞳。色っぽい声。熱い吐息。愛しそうに、頬をなぞってくる細い指先。耐え切れず、シャルギエルはその手を掴むと指を口に含み、舌を絡ませる。
「あ」
 ピクンと、カノンが小さく弾んで声を洩らす。それが引き金になった。
「ダメだカノン。もう限界だ。これ以上の我慢は俺には無理だ」
 そうしてシャルギエルは彼女を軽々と抱き上げると、脇目も振らずに寝室へと足早で駆け込むなり、そのままベッドに倒れ込んだ。
「覚悟はいいかカノン。俺は今夜、お前を貰う」
「うん。シャルギエル」
 カノンは恋しさの余りに、更にその瞳を潤ませながら彼を熱く見詰めた。その顔がこの上なく可愛らしく、愛しくて堪らずにシャルギエルは魅せられる。カァッと体が熱くなる。次々と彼女のドレスのリボンや紐を解いていきながら、自分の頭にあるクリップも投げ捨てて漆黒の長髪を振り解き、同じく着ているタキシードも次々と脱ぎ捨てる。その間にも隙を見つけては、カノンとのキスを貪る。艶めかしい音を立てながら、舌を絡めあう。
 先の事なんか考えられない。今はこの瞬間瞬間だけしか意識になかった。シャルギエルは彼女のか細い首筋に唇を這わせ、ゆっくりと鎖骨の上を舌でなぞる。カノンは大きな吐息と共に、彼の長い髪に指を絡ませる。速まる鼓動が、シャルギエルを導く。まだ成長段階である小振りな左胸に、彼はそっと静かに掌を当てる。
「カノン……。お前のリズムが聴こえる。お前のハートで奏でるビートが。――怖いか?」
「ううん。大丈夫……。これはシャルギエルを迎える期待の鼓動さ。ただちょっと……恥ずかしいだけ」
「恥ずかしい? 裸を見られるのがか? もう何度も見られてるのに?」
 そうしてシャルギエルは、すっかりドレスを脱ぎ捨てて全裸姿になった、まだ幼さの残る彼女のスリムな肉体を、まじまじと眺める。
「ヤダ。それとこれとは別だよ。そんなに見ちゃイヤ!」
「どうしてだ。今からお前を手に入れようという男に、体を見せられないのか? こんなにも綺麗な体を、してるのに……」
 そう甘い声で囁くとシャルギエルは、左手の指先でゆっくりとカノンのラインをなぞる様に唇から咽喉元、鎖骨、そして右胸の乳房の脇を横切り、ウエスト、腰へと下ろしていってスルリと内太腿側へと指先を移動させた。それに敏感に反応したカノンは、息を荒げて体を(よじ)った。
「ぅゎ、ヤベェ……凄ぇ今、メチャクチャお前が可愛い。カノン……!!」
 堪らずシャルギエルは、彼女の舌に貪りつくと片手でゆっくりカノンの胸を揉み上げて、やがて指先でその先にあるピンク色をした突起を軽く、刺激した。更にカノンは熱い吐息に合わせて身を捩る。この彼女の反応が、シャルギエルの性欲を増幅させる。そのまま一気に唇を胸部へと引き下げて、乳房の周囲を()らすようにして舌先で円を描く。
「――んん……!!」
 堪えるようなカノンの声が漏れる。体は僅かにピクピクと反応しているのが分かる。シャルギエルはまだ黒のタンクトップにトランクス姿だ。先に女の裸体を晒す事で男は女への支配感を味わい、女は男からの征服感に酔い痴れる。これが逆のパターンだと特に初めての女(・・・・・)は、先に見せつけられる男の性器のリアルさに、性欲が冷め易くなるものだ。女の最初は何かと扱い難く、デリカシーに敏感な生き物なのである。
 やがてシャルギエルは上のタンクトップを乱暴に脱ぎ捨てると、そのままの勢いを活かしてカノンの乳房を口に含んだ。ドキンと激しく跳ね上がる、カノンの鼓動。そしてその先端が生温かい濡れた感触を覚え、舐め上げられ舌先で転がされる度に初めて味わう過剰刺激に、カノン自身でも予想すらしていなかった反応を、起こさずにはいられなかった。
「ふぁ……! アン!」
 ビクンと大きく体を弾ませると、彼の両肩にしがみ付く。その声と反応に刺激され、シャルギエルの攻め方は更に激しさを増した。手と舌で、両方の胸を愛撫し続ける。
「ん、うん! ハァ……、クゥ~ン!」
 更にピク、ピクンと体が弾む。恥ずかしさの余り、必死に声を堪えようとすればする程逆にその息苦しさで、無意識に小さく声が出てしまう。カノンは顔を赤らめて、自分の人差し指の第二関節に歯を立てると、必死に声を堪えようとあがく。それに気付いたシャルギエルが、乳房から口を離すと囁いた。
「愛してるカノン。今の君は、凄く可愛らしくて堪らない。カノン、好きだ」
「ふぇ……シャルギエルゥ~……」
 そう甘え声で口にしたカノンは、半ば涙目になっていた。
「やめるか? 怖いなら」
「そうじゃない……。こんなの、初めてだから……。何だかよく分かんないけど、嬉しいような、くすぐったいような、幸せな感じのドキドキって言うか……凄く、凄くシャルギエルを愛してるって今ほど強く思った事、なかったから……。セックスがこんなに素敵な気持ちになれるなんて、思いもしなかった――」
「嬉し泣きか。そこまで心が入ってもらえるとは、光栄の極みだな。大歓迎だカノン……」
 そうしてディープキスを交わすと、シャルギエルはゆっくりと左手を下へと移動させ、彼女の太腿をなぞり上げる。すっかり敏感になっているカノンは、舌を絡ませあいながらも息を荒げる。そして唇を離すと彼は、彼女の瞳を熱い眼差しで見詰めたまま太腿にある手を、カノンの秘所に当てた。
「――カノン」
 静かに呟いて瞳を見詰めたまま、ゆっくりと指先の腹でカノンの恥部を優しく撫でた。瞬間、それはまるで電気信号の様になってカノンの脳に、刺激を与えた。体の芯が熱くなる。
「んはあぁん!」
 堪らず一声上げてビクンと大きく体を仰け反らせると、シャルギエルを力強く抱き締めた。ドキリとするシャルギエル。驚きとは違う、胸の高鳴り。それはときめきだ。そんな彼女の反応への愛しさに、迷わず二、三度同じように表面を擦った。
「あ! ヒャアン! ア、アン!」
 その度に声を出しては、体をビクつかせるカノン。シャルギエルが指の動きを止めると、ピクピクと小刻みに体を震わせながら、熱い吐息をゆっくりと洩らす。そして固く瞑っていた目をゆっくりと開けると、目前で自分の顔を覗き込んでいる彼を恍惚(こうこつ)とした表情で、見詰め返した。
「感じるか?」
「ん……も、何も、考えられないくらい、くすぐったい様に疼いちゃう……」
「ああ。だろう。カノンのここ、凄く濡れてる」
 シャルギエルは言うと、悪戯そうな笑みを浮かべる。その表情に勘違いしたカノンは、はとして驚きの声を上げる。
「え! ウソ! ヤダ! 洩らしちゃったって事!? どうしよ……!」
 咄嗟にカノンは上半身を起こしかけるのを、シャルギエルが肩を抑えて(さえぎ)ると、首を横に振った。
「そうじゃない。これは体液の一種で性的興奮によって分泌される、性行為の潤滑(じゅんかつ)をスムーズにする為の生理現象だ。これが自然な反応でいい事なんだ。これがなかったら激痛を伴う原因になる。カノンの体が喜んでいる、証拠だ……」
「よ、喜んで、る……? そ、そんな、恥ずかしい――」
 そう言うとカノンは、両手で顔を覆い隠してしまった。
 ――可愛すぎる……!!
 シャルギエルは心底そう思うと、穏やかな笑みを浮かべて諭すようにカノンに言い聞かせた。
「クスクス。ここまでしてもまだ恥らえるとは。その恥じらいをまた忘れさせてやる。君の感じる時の声は、実にいやらしく愛らしい。もっとだ。もっとその声を俺に聴かせてくれ。カノン」
 シャルギエルは額や瞼にキスをしながら、耳元で熱く湿った声で囁くと軽くカノンの唇にキスをしてから再度、乳房を口に含んでその突起を舌先で(くすぐ)りながら同じく下半身の手で、彼女の濡れた恥部をじっとりと撫で付け始める。
「ヒャァン! ア、アアン! ヤ、ヤァ……! シャル、ギエルゥ~……ぅうん! はぁん!」
 ビクビクと体を弾ませると、次第に力が抜けてゆきついにカノンは体を艶めかしく、くねらせ始めた。そして貪りつくように、シャルギエルの裸の上半身を両手でまさぐる。
「どうだカノン。今どんな気持ちだ。言ってくれ」
 シャルギエルは声を荒げて、苦しそうに訊ねた。
「凄く……凄く感じる……」
「それは気持ちいいって事か?」
「これをそう呼ぶのなら、ア! ――うん、そう。凄く気持ち、いい」
 その言葉にシャルギエルは更に二本指で、カノンの恥部にある(つぼみ)の両脇の溝を何度も擦る。艶めかしい濡れた音が耳に届く。
「あ、ハァン! や、やぁん! もう何だか――アアン! 分、かん、な……い……あ、あ……!」
 無意識にカノンは、自ら腰を動かし始める。それに気付くと、シャルギエルはトランクスを脱ぎ捨てた。そして手早くサイドテーブルの引き出しの中にあった、コンドームを装着する。
「もうこれ以上は無理だカノン。我慢出来ない! お前の中に入るぞカノン。覚悟しろ」
「うん……! いいよシャルギエル!」
 それに合わせてシャルギエルは自分のモノをゆっくりと、彼女のグッショリ濡れた入り口に当てる。ピクンと体を弾ませるカノン。ゆっくりと優しく、そっと何度か先端だけでまずは突付く様に押し付けながら、神秘なる扉の具合を確かめる。二人声は出さないが、息だけを荒げてお互いの顔を見詰め合う。少しずつ、少しずつ、ゆっくりと無理強いしないように彼女の扉を開いてゆく。じっくりと、時間をかけて。
「は、あ、あん……!」
「痛いか?」
「まだ、大丈……夫……」
 シャルギエル自身は、もう半分まで入っている。
「苦しくないか?」
「うん。我慢出来る」
「だったらカノン。一気に行くぞ。いいか?」
「う、うん。多分……大丈夫……」
 そう口にしながらも、いよいよかと思うと鼓動が早まる。少し緊張気味でいる彼女に、彼は優しく微笑む。
「よし。力を抜け」
 言われる通りにふと力を抜くカノン。それを確認すると、シャルギエルは優しく笑いかけた。と同時に、グン!! と勢い良くシャルギエルは腰を押し付け、己の全てをカノンの中に突き入れた。
「キャアァン!!」
 声を上げてカノンは、シャルギエルにしがみ付く。
「痛かっただろう。大丈夫か?」
 暫くそのままを維持した状態で、シャルギエルは優しく彼女を抱き締めて宥める。その彼の労りが嬉しくて、カノンは強がって彼を促がす。
「う、うん。平気。一瞬だけだったから……」
「それを聞いて安心した。――うわ……カノンの中って、凄く熱い……」
「シャルギエルこそ……あったかい」
「これでもう、お前は完全に俺の女だな。カノン」
「うん……!!」
 カノンは喜びの笑顔を浮かべる。そんな彼女にシャルギエルは、感謝を込めた熱い口づけをした。そしてゆっくりと腰を動かし始める。カノンは若干痛みは感じるものの、時間を掛けたお蔭もあって我慢する事が可能だった。痛みも歯を食いしばるほどの激痛ではなくなっていた。だがまだ心底からの快楽にまでは、さすがに微痛の余韻(よいん)に阻まれて無理ではあったが、それでも洩れ出るカノンの嬌声(きょうせい)。それに刺激されて、シャルギエルは快楽の高みを越えるまで彼女を抱くと、二人は初体験を終えた――。














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