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最果てのパラディン 作者:柳野かなた

〈間章二〉

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1:月の旅路

 

 木漏れ日がきらきらと輝きながら、木々の合間から差し込んでいる。
 清冽な空気の中で、無数の巨木が、神殿の列柱めいて並ぶ。
 《獣の森(ビーストウッズ)》の奥深く。偉大なる森の(ぬし)、《ヒイラギの王》の座所――

「おお、ここは、ええ場所だあなぁ! 『お心遣いに感謝する、ウィリアム殿』」
「『お気に、なさらず』……それで、約束の件なのですが」
「うんむ、確かに引き受けただよ」

 僕の対面で頷くのは、一度会ったら忘れられない巨躯。
 いつぞや戦った森林巨人フォレストジャイアント、ヨトゥン族のガング氏だ。

 辺りには部族の巨人さんたちが、あちこちを物珍しげに歩きまわったり、巨大な魔獣革の天幕を設置したりしている。
 男性は皆、三メートルを超えるような大柄で、女性も二メートル半ば以上はあるので、なかなか壮観だ。
 なんだか童話の小人になった気分になる。

「人とぶつかると、勝つにせよ負けるにせよ、面倒だでなぁ……」
「ですよねぇ……」

 無事の帰還の宴も終わってから、邪竜騒動の後始末として行うべきことは多々あった。
 発見された森林巨人の部族への対応も、その一つだ。

 一般に巨人たちは、竜たちと同じく、善神にも悪神にも属さない、中立の立ち位置だと言われる。
 ……この『中立』というのは、「争いが嫌いで、どちらにも与しない」とかそういう感じのあれではない。
 どちらの神々の庇護をうけなくてもやっていけるし、ケチをつけられ殴られたら、それがどちらの神の陣営だろうが、殴り返して派手な損害を与えられるくらい強い。
 であるのに何故、わざわざ神々とかいう連中の縄張り争いに関わる理由があるんだ? くらいの、極めて力ある『中立』だ。

 森林巨人は比較的に、創世神話の時代の《原初の巨人》たちの血が薄いほうだと言われている。
 世代を重ね、神秘が薄まり、寿命も短くなって体格も小さくなったのだ。
 それでもこの三メートルの巨体に、メネルにはやや劣るとはいえ、高い妖精使いとしての技能を有している。
 数は少なくとも極めて質の高い、力ある魔法戦士の種族だ。

 これが創世の時代からの影響を濃くとどめている《原初の巨人》たちとなると、更に無茶苦茶だ。
 南海の大嵐の中央に住まい、暴風とともに海を歩く天衝く巨人、《嵐の巨人(ストームジャイアント)》。
 永劫の時を大火山帯の溶岩のうちに眠って過ごし、噴火とともに目覚める《溶岩の巨人(ラーヴァジャイアント)》。
 はるか東の果ての荒野、尽きぬ雷雲をその住まいとし、空を駆ける《雷雲の巨人(クラウドジャイアント)》。
 もう既にこの次元から去ったものも多いとはいえ、聞いてるだけで目眩がしてくるような感じだ。

 ――竜と巨人が同格と言われるのも、分かる。
 確かにこのレベルの存在になれば、《原初の竜》の一頭たるヴァラキアカとだって、一歩も退かずに真正面から殴り合いができるだろう。

 で、問題は、これだけ力のある隣人が、森の奥に住まっていることが判明した、という点だ。
 《獣の森》の奥に住まっていたということは、つまり彼らは魔獣たちをものともしていない。
 どころか立ち並ぶ魔獣革の天幕を見るに、魔獣を獲物としている捕食者側であり……つまり、魔獣より強いのだ。

 下手に開拓し、拡張する人類圏とぶつかったら、大騒動になる。
 具体的にはうっかり遭遇戦になって、どっちかに死人が出て後に引けなくなったりしたら、極めて洒落にならない損害が出る上に誰も得をしない。
 もちろん一応面識があって交渉ルートはあるから、賠償で解決できるかもしれないけれど、そんなものは最後の手段だ。最初から当てにするものではない。
 そこで――

「ヌシどんらの護りは、このガングと一族が預かるだぁよ」

 例の有角悪魔(ケルヌンノス)の騒ぎの際に所在の判明した、《森の双子王》、《樫の木(オーク)の王》と《ヒイラギの王》――
 この二つの巨木周辺に居住してもらえないかと、僕は彼らに打診することにした。

 森の(ぬし)たる双子王は、《獣の森》の最大の急所だ。ここを《忌み言葉》などで破壊されると、大変なことになる。
 けれど、その性質上、あまり派手に人を入れて開発するわけにもいかないから、禁域にするしかない。
 かといって守りをまったく置かないわけにもいかないし、痛し痒しだ……と思っていたところに彼らだ。

 彼らは人間と絶対にぶつかりあわない、ほぼ恒久的といえる住所が手に入る。
 双子王は力があり、対話もできる護衛が近辺に住まってくれる。
 恐らくこれで、お互いが得をする結果になるはずだ。

 ――契約締結の握手を交わす。
 ガングさんの手は、太く分厚かった。

「そういえば……『ガング殿、西方共通語、どこで?』」
「むかし、森の外れで、あー……? のら、のら……のらしご……? 『農耕をしていた』、気のいい男がおっただよ。毛皮と穀物の交換なんぞで、少し、覚えただ」
「へぇ……」
「もう、春が三百回くる、そのまた前のことだぁな。その後、部族のモンが人間と揉めてしまったでなぁ……森の奥に居を移しただぁよ」
「…………」

 本当に昔だ。
 でも、となると――

「また、『物々交換、可能』?」
「うんむ。『金物が交換できるとありがたいが、そちらは何が必要だ?』」
「こちらも、『薬草、材木、魔獣の革、骨、欲しい』です」

 そんな感じで、しばらく品目の話をして、大筋をまとめた。
 あとはもう実際に携わる人たちに細かい調整は任せよう。

「そいや……」

 話が一段落したあたりで、ガングさんが言った。
 彼の視線は、僕の背中あたりに向いている。

「おめさん、あー、『あの槍は、どうしたのだ?』」
「…………」

 僕はその問いに、つとめて笑みを作った。
 多分、苦いものが混じってしまったと思う。

「……竜との戦いで、壊れてしまいまして」

 ガングさんは、悪いことを聞いた、とバツの悪そうな顔をした。

 
 ◆

 
 《おぼろ月(ペイルムーン)》は、壊れた。
 ヴァラキアカとの戦いで、砕けて折れて、ぐちゃぐちゃになってしまった。

 いくら無数の《しるし》によって強化された槍とはいえ、《ことば》に親しき竜の一撃ばかりはどうしようもない。
 もちろん僕だって、武器を破壊されないよう注意してはいたけれど、あの状況では限度がある。
 だから、あれは仕方のないことだった。
 仕方のないこと、なのだ、けれど……

「はぁ……」

 やはり、落ち込んでしまう。
 あれから《灯火の川港(トーチ・ポート)》に戻った僕は、桟橋に腰掛けて溜息をついていた。

 ――実のところ、《おぼろ月》を直せないかは、既に確認している。
 街でいちばん腕のいいドワーフの鍛冶師さんに相談して、何とかならないかと頼みこんでみたのだ。
 ……寡黙なその鍛冶師さんには、無言で頭を振られた。
 それが全てだった。

「…………」

 けれど、その返答を受けて、僕があんまり悲しげな表情だったからだろうか。
 ドワーフの鍛冶師さんは《おぼろ月》の折れた穂先、《光のことば》が残っていた部位を磨り上げて、ちょっとした短剣(ダガー)を作ってくれた。
 《強化》や《鋭利》といった《しるし》の部分は砕けていたので、どうしようもなかった。

「未練、だなぁ……」

 腰に提げていた、その《おぼろ月》磨り上げの短剣を抜いて、陽の光にかざす。
 刃は懐かしいきらめきを返すけれど……これはもう、僕が必要とする性能の基準を、とても満たせない武器だ。
 恐らく、竜の力を得た僕が本気で振り回したら、数回、何かに叩きつけただけで壊れてしまうだろう。

 魔獣や、悪魔たちの残党、西の妖鬼たち、南の未知なる悪神の眷属たち……僕が戦うべき相手は多い。
 愛着だけで、性能に劣る武具を使い続けることはできない。

 だから、いい加減に新しいメインウェポンを探すべき頃合いなのだろう。
 ……実際、今の僕ならよりどりみどりだ。

 昔の遺跡漁りで得た武器でも、《おぼろ月》を単純に性能で上回る槍は幾つもある。
 それが不満なら、お金を積んで、古代の《しるし》の刻まれた槍を買い集めてもいい。
 ツテを使って頼めば、ドワーフ族やエルフ族の秘伝の武具だって、手に入るかもしれない。

 穂先に《火炎》や、《いかづち》の《しるし》が付与された槍。
 持ち主の精神を研ぎ澄まし抵抗力を高める槍。
 投げれば敵を追尾し、メネルのナイフのように《取り寄せ(アポート)》の《しるし》で手元に戻る槍。
 あるいは《幻影》の呪文で間合いを幻惑できる槍や、風の刃で遠距離の相手を刻めるものもある。
 単純に極めて頑丈で、極めて鋭利で、その切れ味が落ちないという、シンプルな槍もあった。

 でも、どれもしっくりこなかった。
 長いこと、《おぼろ月》を使いすぎたのだろうな、と思う。

 性能で言えば、《おぼろ月》は弱い槍だ。
 悪魔の王が対立する王を殺すため創りだした命啜る剣、《喰らい尽くすもの(オーバーイーター)》にも。
 鍛冶の神が作り上げた金色の小さな太陽、《夜明け呼ぶもの(コールドゥン)》にも及ばない。
 ただ頑丈で、長さが調節できて、照明になるだけの槍だ。

 でも。
 それでも。
 誰がなんと言ったって、《最果ての聖騎士》の主たる武器はその、ただ頑丈で、長さが調節できて、照明になるだけの槍だったのだ。
 僕のもっとも頼みとする、たったひとつの武器だったのだ。

 その愛用の武器が、こんなことになって――たぶん僕の感覚は、まだ混乱から立ち直れていない。
 レイストフさんが愛剣にこだわり抜く理由も、分かる気がした。
 ……今まであったはずの、何より信頼してきた重みがない。
 これは、予想以上にきついことだった。

「…………」

 短剣を見つめる。
 どうしようかな、と思った。

 僕はこの磨り上げた《おぼろ月》を冒険に連れていってやることはできない。
 連れて行ったところで、単なる不要な錘にするか、壊してしまうだけだ。
 かといって、屋敷の中に思い出の品として飾り続けるのも、なんだか違う気がした。

 なんだろう。
 どうすればいいのだろう。
 やることは色々とあるはずなのに、僕はつい、考えこんでしまっていた。
 ――その時だ。

「くそ、やってやるっ! やってやるぞ!」

 なかなか威勢のいい声が聞こえてきた。

 
 ◆

 
 川沿いの街路を、怒りも冷めやらぬといった様子で歩いているのは、まだ年若い少年だった。
 十三歳か、十四歳か、それくらいだろうか。
 黒髪の癖っ毛に、気の強そうなヘーゼルの瞳。
 粗雑な麻の服に外套をひっかけて、背には粗末な矢筒と弓。
 それから腰には適当に削りだしたらしい、木製の棍棒があった。
 狩人か、冒険者の見習いといったところだろうか。

「魔獣の首をあげてやる……!」
「や、やめようよ、グレン……危ないよ……!」
「うるせぇアレックス、止めるな!」

 その少年のあとを追いかけているのは、もうちょっとしっかりした木綿地の衣を着た、同い年くらいの赤毛の子だった。
 つぎはぎのある暗色のローブに、先端に黒ずんだ銀の細工のあしらわれた、なかなか古そうなトネリコの杖。
 魔法使い。だけど、学院出っぽくはない感じだ。
 どこかの呪術師(ウィッカ)魔女(ウィッチ)の系統かな。
 見ていると、少年はそのまま魔法使いの子の制止を押し切って、のしのしと街の外へと歩き出そうとするので――

「あの、もしもし」

 不吉な予感がして、慌てて声をかけた。

「ん? なんだよ、にいちゃん」

 グレンなる少年は、向こうっ気の強そうな顔で僕を見上げてくる。
 アレックスと呼ばれていた魔法使いの子は、ちょっとホッとした様子だ。
 少し膝を落として、視線を合わせた。

「そんなに怒って、どこに行くのかな、って思って」
「魔獣退治だよ、魔獣退治!」
「魔獣退治……?」
「そうだよ! なんだよ、冒険者になりたくて悪ぃかよ!」
「あ、あー……もしかして《ヒグマ亭》あたりに行った?」

 場所の関係から嫌な予感がして、一つの店の名前を上げる。

「行ったがなんだ!」
「あ、あの、ボクたち、たまたま道で行き合って、一緒にいこうって……そしたら、その……」
「あいつら、くそ!」
「あー……」

 《ヒグマ亭》は、あんまりガラのよくない冒険者がたむろする酒場だ。
 この手の冒険者志願の若い子たちとなると、一渡り……多分、かなり手ひどく、侮辱的な対応を受けたに違いない。
 それでまぁ、門前払いに近い扱いを受けて、魔獣の首でもあげて見返してやる、とかそんな感じに気炎をあげている、と見ていいだろう。 
 この子は正義感が強そうだ、自分はともかく同行者の子まで馬鹿にされてはおさまりがつかないのだろう。

「…………」

 けれど、力量は残酷だ。
 目の前の、たぶん狩人出身のグレンくんの技量くらいは、一目見れば分かる。
 一渡りは鍛えられているけれど、そこらの素人よりは一段か二段マシな程度と判断せざるを得ない。

 奥の魔法使いの子、アレックスくん……性別が不明だけど、女の子だとしたら安全のための男装だろうし、ここは追求しない……も、実戦経験はなさそうだ。
 目配りや佇まいが、いかにも素人くさい。
 いきなり現れる魔獣を相手に、冷静に《ことば》を発するのは、たぶん無理だろう。

 そしてここは《獣の森》だ。
 どれくらい危険かは、肌身で知っている。

「……このまま行けば、死ぬよ?」

 冷めた声で言うと、何を察したのか魔法使いのアレックスくんがビクリと身を竦めた。
 グレンくんも一瞬気圧された様子だけれど、すぐに闘志をむき出しにして、

「死ぬのが怖くて冒険者ができるかっ!」

 と言ってくる。
 なかなか根性があるけれど……

「じゃあ、死ぬよりもっとひどい事態は考えたことあるかな?」
「へ?」
「蛇の魔獣とか、相手を麻痺させて、生きたまま腹の中で何日もかけて溶かす。じわじわ全身が溶ける感覚とか、想像したことあるかな?」
「……ひっ」

 アレックスくんのほうが息を呑んだ。 
 あとは……とちょっと内心で不死神スタグネイトに謝りつつ、

「亡者になっちゃったりとか」
「…………」
「手足だけ失って、うっかり生き残っちゃうとか。賊にさらわれて農奴として売り飛ばされるとか」
「……う、ぐ」

 怒りに任せて、魔獣うごめく《獣の森》へ突入。
 よほどの幸運に恵まれないかぎり、死ぬか、こんな感じのオチになる。
 脅かして思い直してくれるなら、それが一番だけど――

「っ、それでも、どのみち帰る場所なんてねぇんだ! やるしかねぇんだよ」
「…………」

 どうやら二人に、退路は無いらしい。
 グレンくんは口減らしか、死別か何かで出てきたクチか。
 様子を見る限り、暗い顔のアレックスくんも同じ。

「でもグレンくん。……多分そのアレックスくん、君を見捨てられないから、その子も一緒に死ぬよ?」
「……っ」

 そう言ってみると、グレンくんも流石に勢いが落ちた。
 唇をかみしめている。
 どうしていいのか分からないのを、怒りの勢いで無理やり打破しようとしていただけで、このまま行ってもどうにもならないのは彼も分かっているのだろう。

「あ、あの……おにいさんは、冒険者さん、ですか?」
「いや、違うよ。でも、少しは分かる」
「な、ならっ、すみません! 教えて下さいっ! ……ボクたちは、どうすればいいのでしょう!」
「うん」

 グレンくんの情熱も大事だけれど、アレックスくんのそれもまた、大事な資質だ。
 不利と不明のなか、焦りが募る状況でも、まず冷静に情報を探る。
 知っていそうな人間に、あたってみる。
 それら二つを二人で持っているのなら……この子たちも、生き残る目はありそうだ。

「とりあえず《ヒグマ亭》のことは忘れて、あっちの通りの先、大きな魚みたいな看板の、《青き海神亭》へ行ってご覧? あそこの店主さんは、面倒見がいいから」

 こういう冒険者志願の初心者たちを引きあわせて、ちゃんとしたパーティにして、適切な依頼を割り振ってくれる。
 ……もちろん、そこから先を生き残れるかは、彼ら次第だ。
 頷くアレックスくんと、僕のことをまだ少し疑わしげに見ているグレンくんに、お節介とは思いつつ言葉を継ぐ。

「いいかい。……冒険者ってのは、冒険に挑む仕事だ。でもそれは、無謀でも蛮勇でもない。
 生き残るために準備を万端整えて、生きるか死ぬかの冒険に全力でぶつかっていく、ってことだ」

 そうすれば、運命の無慈悲な骰の目も、少しくらいは贔屓してくれる。

「捨て鉢にならない、話の裏を取る、装備にはお金をかける。……あとはちょっとの知恵と勇気だ。
 そうしたら、きっといつかは目指すところに辿り着ける」

 君たちに善なる神々の加護がありますように、と笑いかけ。
 ……気づいたら僕は、《おぼろ月》磨り上げの短剣を差し出していた。

「……?」
「あげるよ」
「へ、っつっても短剣って結構……」
「グ、グレンッ! グレン!? これ、《しるし》が……!?」
「シルシって……魔法の短剣!?」
「うん、《しるし》といっても、大したものじゃないけどね。君たちにあげる」

 若い冒険者たちの旅路の始まりを、祝いたいと、そう思った。
 僕はもう、《おぼろ月》と冒険の旅をすることができないけれど。
 それでもあの日、地下で見つけた《おぼろ月》が誰かと冒険の旅をし続けてくれるなら。《おぼろ月》の旅路が続くならば――
 それはきっと、素晴らしいことだと、そう思えたから。

「《光のことば》が刻まれているから、松明代わりくらいにはなるはずだよ」
「な、何が目的なんだよ」

 ……あー。確かに、いきなりこんな品を貰ったら怖いか。
 渡す利益も、目的も見えないし、僕でも不気味だと思う。

「じゃあ、ちょっとお話を聞いてもらえるかな?」
「お話?」
「うん。魔法の武器を渡すとなれば、その来歴も語るのが、いにしえよりの戦士のならわしだからね」
「……ほら話じゃねぇだろうな」
「グ、グレン!」
「ハハ、そう思ってくれてもいいよ」

 そのかわり、たっぷりと付き合ってもらおう。
 そう思いながら、僕は語り始めた。

「これはね。古代のドワーフが鍛えて、キマイラを討ち、竜の鱗を貫いた――」

 最果ての聖騎士が、何より信じた槍。
 暗雲が天を覆う夜にあってなお世を照らす、《おぼろ月》の旅路の話を――

 

○読者の皆さまへ、ご報告
 皆さまの応援のおかげをもちまして、拙作、『最果てのパラディン』はオーバーラップ文庫より書籍化が決定いたしました。
 来月、3/25に発売予定となっております。

 ほんの9ヶ月前に思いついた、廃墟の町に育つ少年は、なんだか私の手を引いて、私の想像を超えたところまで冒険に行こうとしているようです。
 よければ引き続き、電子の世界から、紙の本の世界へと冒険に出かけるウィルを応援して頂ければ幸いです。
 
◆小説家になろう 勝手にランキング◆
評価やブックマーク、感想、レビュー等、本当にありがとうございます。
作品を継続するモチベーションとなっております。
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