京都駅構内にあるワッフル屋はいつも人気だった。
帰りのお土産や、下校時に食べるために並んでいる人も多い。
でも、その大半が女性で、男の僕は近づきにくかった。
もともと甘いものが好きで、高校に入ってからでもそれは変わらない。
友達といる時は我慢するけど、一人の時はパフェでも食べれる。
帰り道に何度か店の前を通るけど勇気がでなくていつも素通りしてしまう。
一度でいいからあのワッフルを食べてみたいと思った。
電車の中はいつも満員で、誰かの汗のツンとした匂いが鼻についた。
ドアのすぐ近くに立っていた僕に、隣りで談笑している女子高生の話が聞こえた。
「そんなにおいしいの?あそこのワッフル?」
「そういえばいつも行列だよね」
「この前も、ダイエット中なのに三個食べちゃった」
「あはは、ダメじゃん」
無関心を装っていたが、唾液線が刺激される。
絶対に食べてみたい。人がいなければだけど……
案の定、小さな列ができていて結構混んでいる。
ダメか…
渋々、通り過ぎようとすると誰かに肩を叩かれた。
「山内くん…だよね?」
振り向くとそこには、同じクラスの国生さんがいた。
小柄でぽっちゃりとした国生さんは、いつもおとなしくて、自分から声をかけるタイプとは思えなかった。
それに、2、3度ぐらい話をしたぐらいであまり接点もなかった。
「国生さんってこっち方面だっけ?」
「う、うん。」
照れたように頷く。
「……ワッフル…食べる?」
遠慮がちに国生さんが言う。
じっとワッフル屋を見ていたのを見透かされたみたいで顔が真っ赤になった。
ワッフルは食べたい。けど、素直に言えない気がした。
なんと答えたらいいか分からずに吃っていると…。
「甘いもの好きなんでしょ?山内くん…」
なぜ、家族と一部の人間しかしらない事実を知っているのだろう。
冷や汗でワッフルどころじゃなかった。
「この前、私が抹茶パフェを食べに行ったときに、これ以上の至福はないって顔で山内くんがチョコパフェを頬張ってたから…好きなのかなって…」
「いぇ…そんなことは…。はい。甘いものはまぁまぁ好きっていうか…かなり好きです…」
言ってしまった。顔が熱い。今すぐ電車に乗って旅に出たい衝動にかられた。
「……ワッフル食べる?」
「あっ…はい。」
そういう訳で今、僕は念願のワッフルを国生さんと一緒に食べている。
国生さんはメープルが好きらしいが、僕はチョコが一押しだと思っている。
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