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4   第五世代(フィフス)たち
「コーミル大尉、こちらが第五世代(フィフス)『ヴォロス』の戦略プログラムチーフ、ライナル博士です」
 よろしく、と無精ひげですら気取ったようなキャラクターで、細面のライナル博士は手を差し伸べた。
「一応、適性検査は受けての選抜チームだが、どうなのかね」
「“生徒”達との相性もありますし、マシンの開発も完璧とは言えませんが、言ってしまうとどのアイテムとっても実戦投入無しには何とも」
 軽く言ってのけた博士の態度が、無骨タイプのコーミルには受けなかったらしい。
 振り向いてすぐ後ろにいた男に愚痴る。
「我々は戦闘のアイテムだそうだ。名称を変えるかねクライン大尉?」
 コーミルとは正反対に見える、控えめに佇んでいたクラインと呼ばれた男は、苦笑した。
「仕組みを考察しますと、指揮権は半減しそうですね。ですがコーミル大尉も実戦で鍛えられた方でもありますし、経験重視の点を踏まえると正論です」
「………と言うわけだ。私に友軍はいないらしい。おとなしく博士の講義を受けるとしよう」
 カツカツと足音よろしく、コーミルは大股にライナルの前を掠めた。
「まだ貴方たちもテスト段階なのですけどねぇ。どうぞ研究室へ」
 はて、と頭を掻いてクライン以下残された数名を案内した。
 向かう研究室の途中で、研究員とは異なる面持ちの、そしてこの場に似つかわしくない若者とすれ違う。
「彼らが生徒たちですよ」とライナルはいかにも学校の教師のようだった。
「今回の卒業生(テストパイロット)は十一人、チーム編成は三人から四人で一チームを予定しています。それについてのコマンダーは適性検査の後、然るべきチームと組むことになってますが……生で研修されるからには、コマンダーの精度を是非とも上げなくてはなりませんね。 ――で、ウォクトワイスは本気で彼らを第一線投入を?クライン大尉」
「ウォクトワイスはそのように指示してます」
「しかし性急すぎやしませんか。 あそこは中立地帯の協定を結んでいてもその実、水面下の激戦地なのは、いくらなんでもご存知のはず。ましてハーレイ・クラファ――」
「政治屋がすることは私の範疇ではありません。 命令があり、敵がいるので勝利を努力するしか、我々の生きる道は無いのだと心得ているつもりですが」
 淡々とした答えは自らに言い聞かせているにも見えた。
 一行は研究室の入り口へ立つ。
「………他の世代は、まあまあ順調ですしね。無駄死になさらないよう、サポートしましょう。クライン――」
 改めて挨拶するようにライナルは手を差と伸べ、クラインもその手を握り返した。
「クライン・カノーヤーです。足手まといにならなければ良いですが」
 名乗った名前に、(おや)とライナルの顔によぎる。
「カノーヤー…?ご子息ですか?」
「――似た名前はいくらでもありますよ」
 クラインはダークブラウンの髪を掻き揚げて微笑した。
 入った研究室は広い間取りで、こぎれいに整理されていた。
 数人の研究員らしきスタッフ、いくつかのモニターをはじめとするハード機器、不可解なヘッドセット云々……。
「お席にどうぞ。こちらのヘッドセットを装着していただき、生徒たちのパターンと組み合わせて最良の結果が出たら、チームコマンダーを決定する手順となってます。あくまでデータ上のお話ですので、私に決定権はありませんが」
「専門家の判断が決定権を持つのが当たり前だ。謙遜する必要は無い。 ライナル博士、生徒たちは何処なのかね」
 コーミルの質問に、研究員が指示を出すと“壁”に見えていた部分が一面透明なガラスに変わった。
 その外には、見下ろすように作られた別室に“生徒たち”が集められている。
 彼らは既に奇妙な装置を頭に着けていた。
「向こうからは見えていません。が、コマンダーが来ることは彼らにも言っています。 確定的データが得られた場合は、機関を通して軍とすり合わせの上、生徒と指揮官を然るべき処に配属になるそうですが、現時点で生徒と指揮官の顔合わせはありません。 また、シミュレーションで相性が良かったとしても、そのまま現場に反映されるかは不明です」
 ライナルが指を鳴らす。
 窓が閉鎖され室内が減光された。
「これから戦闘シミュレーションを彼らと行います。スタートしてから暫くの後に、プログラム内では自動的にコマンダーとパイロットの四人編成に分けられる仕組みになっています。具合が悪くなった方は挙手を」
 クラインは、コーミルの左手がモゾモゾと動くのを視界の隅に感じた。
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